「ドラマとは葛藤である」は、脚本の教科書ではまず最初に教えられることのひとつだ。
コンフリクトconflictを辞書通り葛藤と訳したのだろう。
これは誤訳である。
「ドラマとはコンフリクトである」のコンフリクトは、
対立、衝突(アメリカ的)、確執、因縁(日本的)と
文脈に応じて訳し分けるのが正しい。conflictにはそのような意味が内臓されている。
一方、日本語の葛藤には、
「心の中で二者または三者以上のことで悩むこと」のニュアンスが強い。
コンフリクトを葛藤と教えられると、「そうか、悩むことかがドラマなんだ」と思って、
主人公が悩む場面ばかり書いてしまう。
これは誤りである。詰まらない日本映画は主人公が一人で悩んでばかりだ。
コンフリクトは、一人の中ではなく、
一人と他の一人、即ち「他者」との間で描かれるべきだ。
何故なら、映画とは、三人称文学だからである。
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