2013年07月23日

異物論(仮)4: 中盤論

異物論、つづき。
前回「いろいろある」としたACT 2。その詳細。

ACT 2を上手く書くコツは、
「第一ターニングポイントと第二ターニングポイントの間に、
なにがあると(どんな話があると)面白いか」を考えることだ。
(「何を書きたいか」で考えると、迷路にはまる。)
クイズのように自分に問うのだ。「第一と第二の間にあると面白いもの」。

例1では、「二人は、軍に協力を申し出る」と「宇宙人の弱点が分る」間で考える:
・軍隊の事情や政府の事情を、もう少し知りたいだろう。
・宇宙人の弱点は、最初つきとめていたことと、全く違う展開が面白いだろう。
・宇宙人を、どれくらい前から知っていたのか、その歴史的なこともあると補足になる。
・かばんの行方についても考えたい。一見重要じゃなかったことが、すごく大事になると面白い。
・AやBの個人的な背景についてももう少し深く知りたいところ。

これらは、「異物とAとB」に関わるメインプロット(縦軸)のことだ。
次に、どんな人達が関わるか、面白いか、ということ(横軸)を考える:

・軍隊の長C、異星人研究博士D、政府の役人F、
 異星人G、政府の異星人サイドのスパイH、逆に異星人からの亡命者I、
 異星人Jと恋愛する人間K、などなど。
・これらの「個人的な」話を考える。どうやってこの件に関わるのか、目的(したいこと)、
 他の人物との関係性。AとBと、個人的な事情でどう関わったり対立するか、
 それをどうやって解決するか。どういう小さな、大きな事件が起きるのか。
・それらが、メインプロットの時間軸で、どう進んでいくのか。
・その最小限のセットはどれか。余計な話はカットしたり、統合したりする。

この二つ目の軸、横軸(世界の広がり、という意味で横というイメージ。
メイン時間の進行、という意味で縦軸というイメージ)のことを、「サブプロット」と言う。
たいてい、そのなかのメイン人物名で呼ばれる。「軍人Cのサブプロット」と言えば、
彼の軍隊での立場や、家族や、異星人との関係、AとBに協力を申し出、責任を負うなどになるだろう。

サブプロットの本数は、物語によって異なる。映画では通常1〜3本程度と言われる。
敵の話や事情もサブプロットだ。元々AとBのメイン話があるので、多くても複雑になるだろう。
(これをいくつ配置するかが、経験と勘が必要なところ)


ACT 2に「いろいろある」こととは、
これらの、縦軸(メインの進行)と横軸(サブプロット)がどう絡み合うか、ということに他ならない。

ACT 2は、作品の長さでのびちぢみする(120分映画では、60分が標準)。
5分の短篇では、問題と解決を描くだけで、間のACT 2は0になるだろう。
逆に、大河ドラマなどの大長編では、ACT 1が1、2話あたり、ACT 3が最終話あたりとすれば、
その間の大部分の話数がACT 2になる。

ACT 2は、いくらでもサブプロットで膨らませる事が可能である。
連載漫画でも、新キャラが出てくれば、○○篇のはじまりだったりする。
その新キャラとメインキャラの絡みが、新しいサブプロットになるからだ。
サブプロットは、登場人物の数に比例する。
人物同士の組み合わせを考えると、組み合わせ爆発的に増える。
長い物語は登場人物の数が多く(極端に、水滸伝では108人)、短いものは少ない。
映画では、ぼくの「十三うどん理論」によれば、「5、6人がベスト」である。

コツをひとつ。「ACT 2では、新キャラを出し、そのサブプロットをはじめるとよい」
第一ターニングポイントを迎えると、メインプロットが一段落し、
どこから取り掛かってよいか分らなくなることがある。
ACT 1では準備してなかった要素をここで投入すると、話が進行しやすい。
(例1では、軍人Cや博士Dなどが、宇宙人の説明をしつつも、個人的事情が語られていくだろう)


物語全体やACT 2の構成を考えるときに、便利なツールを紹介しよう。
「大岡式プロット表」とでも名付ける。
サンプルに、「風魔の小次郎第一話」をあげる。風魔の小次郎プロット表.pdf

表の見方:
登場人物の軌跡をたどる。主人公小次郎(が属する白凰・風魔サイドが右半分)と、
ライバル飛鳥武蔵(が属する誠士館・夜叉サイドが左半分)の軸がメインである。
小次郎については、蘭子と姫子の軸が絡み合う。武蔵は、壬生、夜叉姫が絡む。
ふたつの軸は、クライマックスで対決して絡み、その後、個別に展開する。

それぞれの軸は、すべて「動詞」で書かれていることに注意されたい。
自動詞、他動詞、能動、受動関係なく、動詞で各ポイントを書く(他動詞、能動多めが理想)。
なぜなら、物語とは、「動き」のことだからだ。


ちなみに、風魔の小次郎第一話を異物論的に説明する。
主人公は忍者の小次郎であるが、我々にとって異能の「忍び」は受け入れにくい。
そこで、一般人の側からの異物としてまず小次郎を描く。
(ヒーローものではよくあるオープニング)
蘭子が小次郎という異物に出会う。異物である小次郎に出会う為に、蘭子は来たのだ。
そもそもこれは、「白凰学院が、ライバル校誠士館に悪質な嫌がらせを受けた」
という異物からはじまっている。

あとは主人公小次郎がこの世界を冒険していく。
小次郎が最初に出会う異物は、ヒロイン姫子への片思いである。
この出会いにより、主人公小次郎は、「仕事」としての白凰学院のサポート以上に、
個人的にハッスルすることになってゆく。
この「校門前の大暴れ」によって、敵の夜叉も、姫子側も動いてゆくのだ。
(第一ターニングポイント)


次回は異物論最終回、「物語とは、動きである」について書くとしよう。
posted by おおおかとしひこ at 14:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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