物語という「動き」を、図式化するという試み。
桃太郎、浦島太郎というトイプロブレムで、まずは記号化してみよう。
まずは、桃太郎から。桃太郎の図式化:桃太郎の図式化.pdf
いくつか、記号を定義する。
太字は初出(登場)、バツ印は退場。
場所、人物、小道具を、それぞれ、□、○、六角で囲む。
移動は矢印で示す。
動機(理由)、動作などは人物近くに文字で書く。
設定の変更、追加は、変化した部分を太字でかく。
次に、浦島太郎の図式化:浦島太郎の図式化.pdf
もうひとつ記号を足そう。
モヤモヤ記号:謎や伏線。解消が期待される前振り。
太字のところが、「今、物語の語られている現在」ということになる。
人物の登場、退場はひとつの動きだ。その変化も(内面も)動きである。
人物の導線は移動で示される。
人物同士の関係が変化するならそれも動きだ。
人物の動機の変化も動きである。
解釈の変化も動きだ。浦島太郎では、海岸が、数百年後の世界に変わってしまう。
なぜどんでん返しが面白いか、分るだろう。
どんでん返しは、物語の部分ないし全体の解釈が、一気に変わってしまうことだ。
大きく動くのである。
デカイどんでん返しは、一度に、出来るだけ多くの要素がひっくり返る、ということが分る。
でかさはこの図の中のでかさ、ということになる。
面白いどんでん返しは、謎を撒いておき、それが分った瞬間に全ての解釈が一気に変わるものだ。
なるほど、そういうことだったのか、うまいことだまされた、となるのが面白い。
今自分の書いている物語が、どのように図式化できるか考えてみよう。
リライトする際に、ある変更をしたら何が変わるか、も視覚化できると思われる。
次回では、「風魔の小次郎」第一話についてこれを図式化してみる。
目標は、異物論で書いたプロット表(人物の動詞の表)と重ね合わせることだ。
人物の動詞と、物語の動きが一致する(人物が、物語を動かす)ところが面白いのだ、
という仮説を検証してみたい。
さて、桃太郎の「名場面」を抽出してみた。桃太郎の名場面.pdf
動きの大きなところ:B川から大きな桃が、という登場シーン、D桃から赤ん坊が、のシーン、
Hきびだんごで家来にするシーン、Iアクションシーン、J帰還シーンなどが代表的ではないだろうか。
物語の記憶は、写真的である。
逆に、それ以外のシーンは不要なのか、というとそうではない。
@は空間と初期人物のセットアップ、
AはBへの導入の動き、CはDへの導入の動き、
Eは時間経過(Fへの導入の動き)、Fは新たな状況セットアップ、
などのように、名場面それぞれへの動きとなっている。
Gは実は大きな動きのシーンなのだが、主人公桃太郎の動機の動きが描かれていないので、
劇的シーンにはなりえていない(従って名場面というほどでもない)。
きびだんごの設定シーン程度の役割しか与えられていない。
ここが桃太郎の物語としての弱さだ。
動機がいまいち不明だから「他民族へ侵略し、虐殺し、強奪する物語」と揶揄されるのである。
正義を強調する為、宝物は元々村のものであり、桃太郎はそれを取り戻しに行く、という
パターンが追加されることが多いのは、桃太郎にもっともな動機を与えるためだ。
(それが効果的かどうかは、微妙であるが)
たとえばじいさんばあさんが鬼に殺され、大事なものを奪われ、それを奪還する物語、
となるなら、Gは名場面にふさわしくなったかも知れない。
2013年08月05日
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