2013年10月27日

アイデアは、最低3つ必要である

脚本を書くのに、アイデアはいくつ必要だろう。
アイデアは、数えられる名詞かどうか微妙なところだが、
これは行ける、というピンポイントな小さなものから、
系列を持つ大きなかたまりまで、
それを大きくひとつととらえると、
オリジナリティーのあるアイデアは、
最低3つ必要だ、と経験的に思う。

それは、主人公側、コンフリクト側、解決の瞬間である。

言われればコロンブスの卵的な当たり前のことかも知れないが、
書き手から見て、
全てに「オリジナリティー溢れる」アイデアを用意するのは、
並大抵なことではないと思う。

主人公にオリジナリティーが必要なのは当然だろう。
物語のきっかけ(異物)は、大抵オリジナルな導入だろう。
最初に思いつくのもたいていここだ。
主人公の事情や動機、特に内的宇宙は、
作者独自のものである。
空疎な主人公が少年漫画では生まれがちなことを、
風魔メモでも論じたが、
異物との出会いをベースにすれば、主人公は動機を持つため、
行動という動きを持つことが出来る。
目的と行動が揃えば、それは立派な焦点だ。
ここに、独自のアイデアや表現がなければ、
まず平凡だろう。
最初の関門だ。

並みのものでは詰まらない。
(例: 平凡で特徴のない俺が、ある日アイドルと暮らせと言われる)
特異で、独特で、人目をひき、導入だけでおっと思わせ、
物語がオリジナリティー溢れる予感がするものが必要だ。
名作の導入部、主人公にどうやって興味を持つか研究してみよう。
あなたの物語は、その名作と比較される可能性がある。


次に考えるのは、コンフリクトだろうが、
おそらく、ラストを先に考えたほうがよい。
解決の瞬間を、決める。
まだ独特のアイデアは必要ない。
よくある解決を予定して構わない。
独自のアイデアが閃くこともあるので、それをメモしておくべきだ。

ゴールが決まったら、そのコンフリクトを考える。
誰が主人公と一番矛盾するのか。
最大の障害となるのか。その理由は。
その「何故」に、二番目のオリジナリティーが必要である。
敵だから、ライバルだから、恋の相手だから、
などが一般的なものだが、これが一般的では、
物足りない。
ここに独自のオリジナリティーが必要だ。
敵の事情が通りいっぺんでないこと。
ライバルの事情が特殊なこと。
恋の相手の事情が、面白いこと。
王道か、変化球かは物語の性質による。
王道でも新しい王道なら面白いし、変化球でも王道と思わせてからだと面白い。
ダメなのは、ここが平凡なことだ。
ただ力のある強大な敵、ただ強いライバル、ただ可愛い女の子、
それではいくら主人公が独特でも、
平凡な話になる。
癖のある特殊な事情(変化球)や、こういう人がこのポジションに(新しい王道)、
などの新しさが独特のアイデアを持てば、
そのコンフリクトは独自の光を放てるだろう。

スターウォーズが名作なのは、ダースベイダーという悪役のお陰である。
恋愛ものは、二人の事情の面白さが勝負だ。
コンフリクトと主人公は、陰陽の関係である。
物語の両輪だ。どちらも平凡でないことが重要だ。

そのコンフリクトは、
短編なら一回の対峙で対決するだろうし、
長編なら何ラウンドかやるかも知れない。
その邂逅に、それぞれ独自のアイデアがあると、
さらによくなる。
中でも最もアイデアが必要なのは、
クライマックスと解決だ。
ここに独自のアイデアがないと、
これまた平凡になるだろう。
敵を倒す話では、単に剣で切って終わりや、逮捕して終わりでなく、
独自のバトルや盛り上げが必要。
ライバルと闘う話でも、それを越える瞬間に独自のアイデアが必要。
恋の話なら、最後の告白やキスが、よくあるパターンなら興ざめだ。

洒落た解決、王道だが新しい解決、哀しみを忍ばせた解決、
独特のカタルシスのある解決、どのような読後感でもよい。
独自のアイデアがあり、新しく見えれば、それはオリジナルだ。


独自のアイデアは、展開部分に沢山あっても構わない。
なるほどこう来たか、と思うところが多いに越したことはない。
ただマストではない。あればラッキー、ぐらいでいい。

外してはならないのは、
主人公(事情、目的、動機など)のオリジナルなアイデア、
コンフリクトの相手のオリジナルなアイデア、
解決の瞬間のオリジナルなアイデア、
このみっつである。

これら全てが噛み合って、なおかつ太いテーマになるものが、
基本的に求められているものだ。
ちょっと面白いアイデアは、プロやそれを目指す者なら出せるだろう。
だがそれと太いテーマとの組み合わせが、難しい。
これらのオモシロディテールが、そのテーマの為に必要か、
という検討を経ると、どれかが色褪せ、
その場しのぎの小さなアイデアに見えてしまうからだ。
その検討を経ても尚面白い、独自のアイデアが、
物語には必要なのだ。

みっつのアイデアを思いつければ、それは平凡でない物語になる。
それがどんなテーマであり、そのみっつがそのテーマに不可欠な要素のとき、
その物語は、オリジナリティーを持つと言えるだろう。
どこかが欠けていれば、それを必死で考えてみよう。

これが出来れば、あとは流れでなんとかなる。
posted by おおおかとしひこ at 13:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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