2013年11月07日

リアルな台詞の書き方(お喋り女子高生のエクササイズ)

試しに、「女子高生のお喋り15分」を書いてみたまえ。
(もしあなたが女性なら、男子高生同士にせよ)
シチュエーションが必要なら、
喫茶店に来たところからはじめて、席を決め、注文をし、注文したものがきて、
どちらかがトイレにいくまでのお喋り、
としてみよう。
現実の15分はあっという間だが、そのたった15分を、あなたはリアルに
(いかにもありそうに、嘘臭くなく)書けるか。

仮にこれを、「お喋り女子高生のエクササイズ」とでも命名しよう。

女子高生、としたのは、書き手から一番遠そうな、という意味合いだ。
あなたが高校教師だったり、妹が女子高生でしょっちゅう友達との
お喋りを聞いていたら意味がない。
自分から遠いジャンルであれば、
新潟県の漁師同士のお喋りや、小学生同士のお喋り、
隣同士の焼き鳥屋と寿司屋の店長、風俗嬢同士、
関西人同士、などの設定でもよい。

15分は現実では一瞬だが、
脚本形式では15ページだ。それは莫大な量である。
面白くなくてもよい。リアルな会話、という観点だけで書け。


このエクササイズを実際にすると、
いかに自分がリアルを知らないかが痛感される。
自分の書いた女子高生の台詞を、
リアル女子高生が見たら如何に嘘臭いか、
見せてみれば分かるだろう。
たいてい、「こんなこと言わない」と言われる。

台詞は、リアリティーが最も出やすい。
それほど言葉は人間に密着している。

あなたは何を知らないかを知るために、
脚本家を目指すのならやっておくべきエクササイズだ。
その痛みがないと、成長する勇気も出ないだろう。



リアルな台詞を書くためには、
その人達なりの言葉や専門用語や職業柄や
独特の発想だけでなく、
関心事、心配事、興味、周囲で起こっていること、
その人の住む社会のこと、常識や慣習、
個性、思考の癖、過去、
ありとあらゆることがリアルでないと書けないだろう。
つまり、何度か言っている、点でなく線だ。

いずれ気がつく。
二人の会話だからといって、それが同じ人格な訳がない。
個性もあれば過去や事情や関心事も違う。
そんな二人のお喋りは、対比があるとしまってくるぞと。
二人だけでなく、三人や四人五人と増やしてもよい。
三人以上のお喋りは、格段に難しくなる。
議論の司会の行司がいかに上手いかを痛感できる。
話題は何にすべきか。
その話題に誰が食いつき誰が食いつかないか。
いつどうやって話題が変わったり蒸し返しがあるか。
そこまでやろうとすれば、それはほぼ登場人物に血肉を与える行為と同じになってくる。

得意なジャンルでこのエクササイズをやってみよう。
職場やクラスのお喋り、家庭のお喋りなどだ。
ある程度のリアリティーを確保しながら、個性を使い分けて行ける筈だ。
そこに、遠い世界の人物(例えば女子高生)を放り込んでみよう。
ワープしてきた設定でもいいし、理由があってもいい。

違うルールの世界の出会いが、何を生むか、
それをリアルに書ければ、それは殆どドラマである。
あとは動機と事件とプロットとオチとテーマがあれば、
一本書ける。
問題はリアリティーだ。


リアルな台詞を書くには、取材しかない。
その人の住む世界にひたり、
その世界のリアルを学ぶしかない。
ユーミンがファミレスで歌詞を書き、
後ろに座った女子高生の話を参考にした話は有名だ。
(ガセ説あり)

リアルな台詞は、言葉尻ではない。
発想や考え方である。
それを自分に埋め込むことだ。
頭で書いた台詞はリアルにならない。空気で書かねばならない。
その空気をまとえるまで、取材するしかない。

リアリティーはひとつではない。
そこかしこに、大きく小さく存在する。
それを観察して自分のものにする。
作家とはそういう生き物だ。


有名なエクササイズに、
「リアルなお喋りを録音し、それを文字おこしする」
というのがある。
いかに現実の会話に無駄が多く、支離滅裂か、
自分の書いた原稿と比較して驚くとよい。
そのギャップは何かを詰めていくことが、
あなたの中のリアリティーを育てるだろう。

リアルな台詞は、実は一生ものの課題である。
すぐ解決する問題ではない。
才能やセンスもあるが、数を書かないと身につかないことだけは、
経験的に言える。
台詞が得意な僕ですら、
「その世界ではリアルで、時々現実以上のリアルになる」
の領域にたまにいけるぐらいが精一杯だ。
(女子高生の台詞は書けないが、姫子の台詞なら書ける、みたいなこと。
ちなみに風魔の脚本は、僕担当の回は殆ど僕が全面的に書き直しています)
posted by おおおかとしひこ at 14:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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