2013年11月08日

話をまとめるテクニック

とくに、30分ものぐらいの小さな話を書くときのコツをひとつ。

プロットや人物を煮詰めて、我々の感情が増幅するような話を考えて、
小道具やアクションなど、映画的な要素でうまく何かを象徴し、
そのあたりの構造がおおむね決まってきたら、
「タイトルを考える」とよい。

ドラマの一話なら、サブタイトルを。
ショートフィルムなら、タイトルを。

その話のコンセプトやテーマやイコンをうまく表し、
なおかつネタバレしすぎず、一体どんな話だろうと、興味を引く強いもの。
出来るなら、見終わったあとの読後感や印象が、そのタイトルに一致するもの。
そしてその話がタイトルと共に記憶されるもの。

タイトルをうまくつける才能は、ある種の才能だ。
CMだと、キャッチコピーの才能がそれに近い。
キャッチーで、それでいて本質をうまく表し、
それが新しい価値を生むことば。

そんなタイトルをつけてみよう。


仮に、いくつか候補を出そう。
どれかに決めてしまったら、内容が改変される可能性があるほどの、
全然違う方向のタイトルを考えるとよい。
どれに決めても内容が変更されないのは、タイトルを考える意味はあまりない。

タイトルがキャッチーであるということは、
話もキャッチーであるということだ。
テーマが興味を引き、構造が新鮮で、会話劇も面白いことが予測される。


タイトルをそのように決めたら、
プロットを一から書き出してみよう。
何も見ずに、白紙にただ書いていくのがおすすめだ。
文章形式より、シーンごとのイベントや行動みたいな表形式のほうが書きだしやすい。

すると、タイトルに影響を受けて、よい改変がなされることがあるのだ。
タイトルに出てくる要素が重要なキーアイテムや伏線になっていて、
それで話がまとまるように、書きなおされることが多い。

タイトルというのは、それほど大事なものだ。
お話の全ての要素の方向性を、砂鉄に磁石を入れたら方向がそろうように、
一つの方向に定める役割をするのである。


風魔の例でいえば、5話「贋作」6話「霧の中」はそのような回である。
5話では、兄のコピーだと悩む弟、兄をコピーした敵、美術の贋作事件、
モノマネされた兄の白羽陣、それを倒すオリジナル、
全ての要素が「贋作」というキーワードで貫かれる。
6話では、感情を出すなという霧風、顔で笑って心で泣いてという絵理奈、
「霧は全てを隠す、ときに真実すらも」という闘い方の行方、
墓の前の問答、全てが「霧の中」というキーワードで貫かれる。
どちらも神回と言われるゆえんである。

逆に、9話「誠士館は投了するか?」では、プロットは巧みだが、
氷川と西脇の確執、それを監視する下忍、陽炎の出奔、下忍を身代わり、
などの重要要素は、「誠士館は投了するか?」というキーワードで貫かれていない。
これがひとつの方向性になっていて、麗羅デビュー戦の戦い方に重なっていれば、
神回となったと思う。


タイトルを決めよう。
これは映画でも小説でも同じだ。

最初から決める人、最後に決める人もいる。
僕は執筆中に決めて、それが全てをまとめあげてくれるようなスタイルを、推奨したい。
posted by おおおかとしひこ at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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