とくに、30分ものぐらいの小さな話を書くときのコツをひとつ。
プロットや人物を煮詰めて、我々の感情が増幅するような話を考えて、
小道具やアクションなど、映画的な要素でうまく何かを象徴し、
そのあたりの構造がおおむね決まってきたら、
「タイトルを考える」とよい。
ドラマの一話なら、サブタイトルを。
ショートフィルムなら、タイトルを。
その話のコンセプトやテーマやイコンをうまく表し、
なおかつネタバレしすぎず、一体どんな話だろうと、興味を引く強いもの。
出来るなら、見終わったあとの読後感や印象が、そのタイトルに一致するもの。
そしてその話がタイトルと共に記憶されるもの。
タイトルをうまくつける才能は、ある種の才能だ。
CMだと、キャッチコピーの才能がそれに近い。
キャッチーで、それでいて本質をうまく表し、
それが新しい価値を生むことば。
そんなタイトルをつけてみよう。
仮に、いくつか候補を出そう。
どれかに決めてしまったら、内容が改変される可能性があるほどの、
全然違う方向のタイトルを考えるとよい。
どれに決めても内容が変更されないのは、タイトルを考える意味はあまりない。
タイトルがキャッチーであるということは、
話もキャッチーであるということだ。
テーマが興味を引き、構造が新鮮で、会話劇も面白いことが予測される。
タイトルをそのように決めたら、
プロットを一から書き出してみよう。
何も見ずに、白紙にただ書いていくのがおすすめだ。
文章形式より、シーンごとのイベントや行動みたいな表形式のほうが書きだしやすい。
すると、タイトルに影響を受けて、よい改変がなされることがあるのだ。
タイトルに出てくる要素が重要なキーアイテムや伏線になっていて、
それで話がまとまるように、書きなおされることが多い。
タイトルというのは、それほど大事なものだ。
お話の全ての要素の方向性を、砂鉄に磁石を入れたら方向がそろうように、
一つの方向に定める役割をするのである。
風魔の例でいえば、5話「贋作」6話「霧の中」はそのような回である。
5話では、兄のコピーだと悩む弟、兄をコピーした敵、美術の贋作事件、
モノマネされた兄の白羽陣、それを倒すオリジナル、
全ての要素が「贋作」というキーワードで貫かれる。
6話では、感情を出すなという霧風、顔で笑って心で泣いてという絵理奈、
「霧は全てを隠す、ときに真実すらも」という闘い方の行方、
墓の前の問答、全てが「霧の中」というキーワードで貫かれる。
どちらも神回と言われるゆえんである。
逆に、9話「誠士館は投了するか?」では、プロットは巧みだが、
氷川と西脇の確執、それを監視する下忍、陽炎の出奔、下忍を身代わり、
などの重要要素は、「誠士館は投了するか?」というキーワードで貫かれていない。
これがひとつの方向性になっていて、麗羅デビュー戦の戦い方に重なっていれば、
神回となったと思う。
タイトルを決めよう。
これは映画でも小説でも同じだ。
最初から決める人、最後に決める人もいる。
僕は執筆中に決めて、それが全てをまとめあげてくれるようなスタイルを、推奨したい。
2013年11月08日
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