2013年11月18日

説明ではなく、芝居で見せる

設定を組んでいると、面白い、独自の設定をおもいつく。
話の主設定となったり、小さな設定だったりする。

殆どの「設定」は、芝居でカバー出来る。
理想の脚本は、説明台詞のないホンだ。
説明台詞を減らすには、芝居を使う。

簡単な例を。

「誰もがAを欲しがっている」という設定を説明するには、
「出てくる人物が全員、Aを欲しい」という動機なり場面を作ればいい。
Aがあればいいのに、という夢想や、Aさえあればこんなことにならなかったという後悔、
A故の悲劇、Aを手に入れたあとの具体的計画のことを動機とする、
など、個々の人物によって描きかたは変わるだろうが、
本筋で関わる全員にこのような場面を用意するのは常套だ。

もうひとつは、一般人でも欲しがる、という場面をつくる。
Aが金なら簡単だ。一般人の前でちゃりんちゃりん小銭を落とす。
周りの反応を描くことでそれらを表現する。
拾おうとした子供を張り倒してまで奪う大人を描けば、
どれだけの欲しさか分かるだろう。
美術館に飾られているものなら、警備員が盗もうとする、
などでその欲しがられさを表現したりする。

あるもののなかに、あるものを投入すると、
反応が起きる。その反応こそ、その人が他人には見せない本心である。
その本心があらわになるような、文脈を用意する。

いずれにせよ、「誰もがAを欲しがるのだ」と誰かが誰かに説明したり、
ナレーションで説明する必要はない。


説明台詞のよくないところは、それを「理解」する間は、
感情が動かないことである。

芝居は感情であり、物語は感情で見るものだ。
にも関わらず、設定を説明しないと物語は語れない。

設定を芝居で語ることをまず考えよう。
感情移入の場面になるようにしよう。


逆に、物語の主骨格だけはナレーションや説明台詞にした方がよい時もある。
むしろ、ここだけ説明台詞にするのがコツかも知れない。
スターウォーズでは、「帝国軍が支配し、人民は虐げられている」だけは
さっさと冒頭字幕だけで説明してしまう。
フォースのことは、追々物語内で出てくる。

どれが主骨格か見極めることが肝心だ。
スターウォーズは、「フォースという、鍛えれば超能力となる力がある」
ことを冒頭字幕で出し、帝国軍は芝居で説明することもできる。

何も知らない人に、何を一個だけ説明すればいいかを見極めよう。
それさえ説明すれば、あとは芝居で組めるものを見極めよう。

ハリウッドは、大抵世界を二項対立で描くから、
そこを設定してくる。
あなたの物語の主骨格設定はどこか。
それを見極めることは意外に難しい。
ログラインやコンセプトを何度も書き直そう。
つくっている最中、何度もぶれるのは当然だ。
デッサンのように、何度もやろう。
しっくり来たら、説明と芝居を使い分けることを考えよう。


既によく出来上がったものの、説明や芝居を云々するのは簡単だ。
つくっている最中は、出来ていないから、ここを確定するのが難しい。
説明を上手く出来るようになるのは、
全体が、あなたから距離が離れて見えた時だ。

序盤が最も書き直しが多いのは、そういうことだ。
posted by おおおかとしひこ at 12:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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