(脚本論かどうか微妙だけど、とりあえず脚本論カテゴリに入れときます)
オススメの勉強法は、
既にある映画やドラマのDVDを一時停止しながら、
コンテ化することだ。
30分ものなら、慣れていたとしても、
丸一日かけて10分や15分ぶんぐらいが精一杯だから、
2、3日ぶっ通しは覚悟せよ。
慣れないなら、一週間でも出来ないかもだ。
映画一本コンテ化するのは、最初はやめたほうがいい。
ちなみに、僕の場合だと、
CMコンテ45秒ぶんはまる二日、
風魔二話40分ぶんをまる三日、
映画「いけちゃんとぼく」では110分1000カットを三週間のペースである。
途中で挫折は禁止。
最後までかくことで、全体の構成がようやく見えてくるからだ。
(慣れるまで、短いものでやったほうがいいかもね)
絵柄は漫画のようにかきこまなくてよい。
ラフ絵で構わない。ていうかラフ絵じゃないと死ぬ。
死なないように、しかも分かるようにかくことが必要。
その中で、コンテとは何をかけば必要十分かわかってくる。
まずは、シーン単位にしよう。
シーンとは場所のことだ。
撮影は、ある場所にいき、そこの分が終わったら次の場所へ移動することの繰り返しだ。
(だから移動しなくてよい、ワンシチュエーションものは予算に優しい)
順撮りできるスケジュールは、現実にはない。
今日はシーン16、2、4、7を撮る、などのようにバラバラに撮る。
コンテは、シーン単位でかく。
場所(外か中か)、時間帯、特別なもの(季節とか天気とか)を書き込むのは
脚本と同じである。
シーン単位に分解したら、カットに行く前に、
登場人物の導線を確認しよう。
導線は、日本映画ではダンドリと呼ばれる。
各人物のたち位置はここで、歩いたり座ったりの動作や、
台詞をどこで言うか、どう動くかという「振り付け」のことだ。
細かい表情やニュアンスは本番にとっておくため、
コールドリハーサル(感情を100%入れないという意味のコールド。
日本ではドライのほうが多いかも)というドラマの現場もある。
身ぶりを大きくするかどうかや、目線の方向や、
座ってから台詞か、台詞言ってから座るか、とか、
歩く場所はここからここまで、とかなどの、まさに段取りを決めるのだ。
スタッフは、これを元に照明を打ったり(歩く場所が一定の明るさになるようにするとか)、
背景のモノを動かしたり(背景にいい感じにものが配置されてるように調整)、
マイクの影が絵に入らないようにマイク位置のリハーサルをしたり、
レールをどこからどこまでひくかを確認してから、
仕事にかかる。
その間役者はメイクしたり服を整えたりして、
準備が出来たら本番だ。
ダンドリは、ハリウッドではステージングという。
ステージをどう役者が使うか、というダイナミックな語感がある。
(配置演出、と訳している訳書もあるが、導線と訳すべきだ)
ハリウッドの撮影は、ヨーイスタートからカットまで、
シーンまるまるを演じ、5台から7台のカメラで同時撮影、
編集段階でスイッチングする方式(マルチキャメラ)だ。
だから、ステージングを何通りも変えて撮影することも可能だ。
窓まで行って台詞、椅子に座って台詞など、テイクによって
ステージングが違っても構わない。
(その豊富さが役者の優秀さに関係するため、何パターンも出来るぜ、
はハリウッドの役者のアピールポイントである。
日本では、ひとつの芝居に収斂する役者が好まれる)
一方、日本映画では伝統的に一台のカメラで撮る。(シングルキャメラ)
ひとつのステージングを、複数のカットをバラバラに撮って編集で繋ぐ。
(この繋ぐ、という言葉が、既にエディットという自由な創意工夫のニュアンスではなく、
スムーズに一本にするというニュアンスを含んでいる)
だからヨーイスタートからカットまでは、
ひとつのダンドリの、部分を演じることになる。
日本の芝居が下手なのは、
ワンシーン通しで演じるハリウッド役者と、
部分しか演じない、ダンドリの違いのせいでもある。
間をとっているのがNHKの朝ドラで、
ロケをせずスタジオセットだけに限定し、
マルチキャメラで芝居を撮る。
ただしダンドリはひとつだけで、ハリウッドほど何通りも撮らない。
ヨーイスタートからカットまでは一連の芝居だが、
ダンドリはひとつだ。
しかも朝ドラのスゴイのは、マルチキャメラからコントロール室に
集約された映像を、リアルタイムでスイッチングして、
現場編集しながら収録する。
(編集室に入ってじっくりやる、いわゆる編集作業はないらしい)
生ドラマの頃からの、放送技術である。
ダンドリを考えるには、
現場の簡単な地図をかき、
人物の最初のたち位置を決める。
あとはシーンの文脈に応じて、各人物の台詞や導線をつくっていけばよい。
振り向いて台詞なのか、振り向かず台詞なのか、
目線をそらすのか、合わせるのか、なども考える。
カットを割るのは、それからである。
シーンは、カット単位で構成されている。
このへんは、その辺の入門書に沢山あるから割愛する。
いわゆる、アップとかロングとか、モンタージュやイマジナリラインの話だ。
僕のオススメは、カメラのレンズのミリ数を考えておくこと。
同じアップでも、100ミリの絵と18ミリのアップでは意味が違う。
また、地図を見て、カメラの入る位置を想像することも重要だ。
部屋の中で、100ミリのアップは撮れない。
そのときにワイドレンズにするか、人物をあるかせてアップにするかは、
監督が決めるのだ。
監督は、モンタージュと導線を、同時にコントロールする。
ついでに、リズムや光線や音楽もである。
それらがコンテに表現されることが望ましい。
CMの場合、それらに秒数も入る。
15秒30秒の世界では、テンポの気持ちよさが重要な要素になる。
(秒数に入るか入らないかの判断もある)
僕の最高傑作のひとつ、クレラップシリーズ(2011年まで)では、
5フレーム単位(5/30秒)で指定してあった。
コンテや脚本を、楽譜によく僕がたとえるのはこのためだ。
アニメの場合はまた異なると思うので、門外漢のぼくは語らない。
実写のコンテの場合である。
見本のいくつかは、風魔カテゴリをごらんください。
コンテは何をかけばいいか。
導線である。芝居のニュアンスである。
レンズのミリ数であり、カメラの位置である。
そして、編集のテンポとモンタージュである。
場合によっては、SEや音楽の指定だ。
つまりこれが、映画の心臓部なのだ。
好きな映画やドラマを、何本かコンテにかけたら、
コンテから上がりを想像する。
そして本物を見てみる。
その往復を何度もすると、
コンテがどういうことかわかってくる。
あとは、自分の作品で実戦で学んでいけばよい。
2013年11月23日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック