ACT 2の執筆の難しさは、構成がへたっていくことだ。
ミッドポイントを真ん中に置くことで、
何もないよりは方向性を決めて書くことが出来る。
ハリウッドの脚本理論でも、ミッドポイントをどう定義するかは、見解の分かれるところだ。
ない映画だってある。
シド・フィールドは、ACT 2を二分割し、前半の文脈と後半の文脈が、
このターニングポイント前後で異なるもの、というやや分かりにくい説明をする。
ブレイク・シュナイダーの、
かりそめの勝利または敗北、という見方は単純ながら分かりやすい。
つまり、ACT 2の前半戦後半戦を、
勝利→敗北、または敗北→勝利として30分ずつ考えるとよいのだ。
勝利→敗北のパターンだと、
お楽しみポイントは、主人公たちの快進撃となる。
ミッドポイントで大勝利で終わるが、
実は真の勝利ではなかった、ということが分かり、
大敗北、転落への道が待っている。
どん底で逆転への活路を見出し、最後のひと勝負に打って出る(第二ターニングポイント)、
という黄金パターンだ。
「デンジャラスビューティー」は、
「男まさりの女捜査官が、爆破予告のあるミスコンに潜入捜査する」というコメディだが、
そのお楽しみポイントは、がさつな女が凄腕のエステティシャンに奇麗にしてもらい、
ミスコン予選で女らしくなくて失敗するのかと思いきや、キャラで目立ちまくる、
という快進撃のくだりである。
ミッドポイントでは、会場にいる怪しい男を犯人と思い込んで、
会場からダイブして捕まえる、という一見大成功が描かれるが、
真犯人は別にいる、というその後の展開で、
捜査官の担当を外される、というどん底の敗北へと話が展開する。
ミッドポイントを敗北に持ってくるパターンもある。
「愛しのローズマリー」がそのパターンで、
「催眠術で美女に見えているローズマリーとの面白おかしいデート」
のお楽しみポイント(快進撃)後、
「催眠術が解け、彼女の真の姿を見てしまう(背中だけど)」
という転換点がミッドポイントになる。
これは一見敗北である。
ACT 2の後半部では、真実を知り、完全に決裂する二人と、
どうやって彼女との恋を復活させるかが描かれ、
さいごのひと勝負、留学前の彼女の出るパーティーへ急ぐ、
第二ターニングポイントで終わる。
「嘘をついて何かを成功させるが、それがばれて、
嘘ではない真実のために行動する」という類型の物語はすべてこれだろう。
「トッツィー」「マイフェアレディ」などの変身するタイプの話が、たいがいこれだ。
「風魔の小次郎」もこのパターンだ。
前半戦のお楽しみポイント、風魔たちの快進撃を描いたあと、
ミッドポイントは壬生の裏切りと柳生屋敷襲撃である。
ここで小次郎たちは竜魔を寝込ませ、一見の敗北をする。
後半戦は敗北続きだ。陽炎に翻弄され、武蔵に押され、麗羅を失う。
敗北を勝利に転ずるキーポイントは、風林火山へと集約されてゆく。
敗北→勝利パターンだと、
ACT 2の直前の第一ターニングポイントは、地獄への転落となる。
逃亡生活や、どん底での苦労などがお楽しみポイントとなるはずだ。
たとえば「ヘレンケラー」「逃亡者」のような、苦労を楽しむタイプの物語。
「バックトゥザフューチャー」ではコメディだが、両親をくっつける苦労話だ。
異世界へ旅する異世界ものでは、たいてい異文化に苦労する敗北と、
局地的な信頼を勝ち取るまでが描かれる。
が、村全体には理解されないという大きな敗北の文脈の中にいることが多い。
ミッドポイントで勝利または敗北をし、
これがきっかけとなり、物語は反転し、よい方向へと向かってゆく。
「ヘレンケラー」で言えば、有名な「water」の場面がミッドポイントで、
これ以後二人の理解がすすんでゆく、勝利・快進撃の後半戦である。
勝利→勝利、敗北→敗北のパターンも論理的にはありえるが、
同じ調子になるため、前半戦と後半戦でガラリと色を変えるのが落差を生みやすいだろう。
(同じ調子だと、多分だが、飽きることが予測される)
細かく勝利と敗北を使い分けてゆけば、それを防げるかも知れないが、
それにせよ、大局的な30分で見れば、勝利→敗北のパターンに無意識になっていたりする。
ブレイク・シュナイダーの説で前半後半を勝利/敗北のパラダイムで見ると、
話は分かりやすくなるが、欠点は、これ以外の文脈はないのか、ということだろう。
僕はありえると思うが、具体例が思いつかない。
たぶん、非ハリウッド型の物語になると思う。
複雑なサブプロッットがあったり、構成自体が三幕でないものだろうと予想。
逆にいえば、典型的なハリウッドスタイルとは、
目的と動機と行動がきちんとあって、敵と障害に必ずぶちあたり、うまく突破することが目的で、
目的への勝利または敗北が、話の焦点となるもの、ということが出来るだろう。
物語のオリジナリティはACT 1と3に出る、とは僕の説だが、
話を面白おかしくするためには、このようなハリウッド的なACT 2の構成論法を使う手も、
選択肢の中に持っておくとよいだろう。
このACT 2を採用するには、目的と動機が、第一ターニングポイントではっきりと示され、
それに第一段階の感情移入、すなわち「興味」または「共感」が醸成されていなくてはならない。
その目的への距離が、勝利/敗北の軸になり、見続ける理由は感情移入となるからだ。
2013年12月01日
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