経験則。
脚本を書くとき、色々なことをやりたくて、
ぶっ飛んだオープニングを書きたくなるのは人の摂理である。
実際、はじまりの5分、ページにして2枚半(文庫本だと1ページと少しぐらいの文字数)
までは、何をやってもよい。
が、その先に何もないと、面白い話だとは思ってくれない。
その5分で、その後にどうつなぐかを、考えて書けるだろうか。
脚本は冒頭から書くべきではない、
というのが僕の経験則だ。
書きたい衝動や、頭から離れないイメージを、
まず文字にしたいのはわかる。
その初期衝動は、芸術にとって一番大事なもののひとつだ。
が、オープニングが「終わってから」、何が起こるか、
最後まで考えてから書きはじめないとダメだ。
ガッチャマンのうんこ脚本を思いだそう。
オープニングバトルは、初期衝動で書かれている。
ヒーローの登場と最初の活躍は、
これこそ実写化という意欲と衝動に満ちていた。
問題は、ここがピークだったことだ。
映画版電人ザボーガーも、この手合いだ。
あのオープニングムービーの素晴らしさに僕は鳥肌が立った。
タイトルが出た瞬間、拍手をしてしまった。
問題はそのあとだ。本編の立ち上がりが遅く、
レディボーグの下ネタまで、なかなか立ち上がらなかった。
(ガッチャマンは、二度と立ち上がらなかった)
オープニングで何をやってもよいが、
その後のことがここに仕込まれていないとこうなる。
ヒーローの登場シーンはとにかくカッコイイつかみになる。
が、その後の種がここの中にないのなら、
別になくてもいいと冷静に考えるべきだ。
ミッションインポッシブル2はスマートで、
「すげえクライミングのイーサンの日常」に指令が来る、
というオープニングで、イーサンのヒーロー像を寸止めにしていた。
ピークをここにつくらず、その後の指令を静かに聞かせるための、
ある種のハッタリとしてオープニングを使っていた。
本編は指令からである。
恐らくだが、このオープニングは、指令からの本編を書いたあとに、
「スゴイオープニング」を足したのではないか。
本編にクライミングのテクニックを使った場面があったかどうかは忘れたが、
それぐらい、このオープニングは、本編と独立している。
度肝を抜いて集中させる、以外にこのオープニングは意味がない。
オープニングの理想は、実はこれだ。
今からあなたの目はあなたの体を離れて、スクリーンの中に入りますよ、
という趣向になっているべきだ。
オープニングから書き始めることを、やめてみよ。
続く本編を先に考えてから、
魅力的な導入を創作しても遅くない。
むしろ、自然な誘導はこのやり方しか不可能だろう。
今書いている話は、ずっと昔に書いた幻想的なオープニングからはじめている。
しかし、本編との齟齬で悩んでいた。
別のオープニングから始めるのを試している。
オープニングに意味はない。なんでも面白ければいい。
問題はその後の本編だからだ。
理想は、そのオープニングに、本編への伏線が含まれていることだ。
主人公からはじめないタイプのオープニングでは、
これがやりやすい。
刺激的な殺人事件で度肝を抜き、
タイトルあけに、刑事である主人公がそのニュースを聞くパターンだ。
あるいは主人公が、次の犠牲者の特徴を持っているでもよい。
どちらにせよ、オープニングでつかみ、
本編の伏線を含ませてある(この要素を直後から使う)、
という優秀なパターンだ。
アニメ版ガッチャマン第一話のオープニングは、
雨の東京湾に、タートルキングが現れる、
怪獣映画のようなオープニングだった。このパターンと同じだ。
多分、実写ガッチャマンのうんこ脚本家は、
このオープニングの意味を分かっていない。
同期の監督がやった映画「鈍獣」では、
オープニング5分は最高だった。
センスのよいCMディレクターにしか出来ない、
キレのあるオープニングに舌を巻いた。
が、そこからの失速がひどかった。
残念ながら、その後の本編を、考えて書かれたものではないと思う。
主人公から始めるタイプのオープニングでは、
主人公の日常が描かれる。
ここで度肝を抜く必要はない。
次に出会う異物が、日常を離れる異界への入り口となる。
このようにしていつの間にか、話は始まっている。
ナレーションで主人公の思いをつづり、
すぐさま異物との出会いへつなぐパターンもある。
オープニングでのつかみを、
どのようにするかを考えよう。
ハートを鷲掴みにするのが理想だが、
人は息切れする(書き手も、観客も)、ということを常に覚えておこう。
鷲掴みにせずとも、ほほう、と心を浮き足立たせる感じが
丁度いいのではないか。
あなたの書くオープニングは、
どのように本編への導入となっているだろう。
どのような伏線を、直後かあとか、どこで使うつもりで仕込んであるだろう。
それらを決めてからでないと、オープニングは書けない。
「書きながら考える」スタイルは、あまりオススメしない。
二時間をそのようには、まず書けない。
初期衝動は、二時間ぶん持たない。
2013年12月05日
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