シーンが始まったとき、最初からその場にいることを
板付き(舞台の板に張り付いているの意味)という。
人物の登場を、板付きにするか、途中登場にするかは、
ひとつのテクニックになる。
主人公の行動に焦点があたり、主人公とともに話が進行しているとする。
次の場所へ行ったとき、
主人公の持つ情報=観客の持つ情報だが、
それが、次の場所にいる人が知っているとは限らない。
シーンが変わったとき、
全員板付きからはじめて、既に知った前提で始めるのが、
最もテンポよく省略されたやり方だが、
それが流れ上不自然な場合、
主人公を途中登場にして、その場の人を板付きから始める方法もある。
聞きましたか例の件、にわかには信じられないが、
やつが来るからには本当なのでしょう、
とワンクッション置くことが出来る。
主人公が到着後、あらためて用件を話せば、今後の焦点をはっきりと宣言できる。
また、板付きの人達が、主人公の知らないことを握っていることも、
ここでは描ける。何かの作戦を言い、のちに来る主人公を嵌めるかどうかを、
観客はハラハラして見ていられる。
また、その場に先に主人公が到着していて、あとから他の人達を途中登場させるパターンもある。
主人公と観客しか知らない情報を、前ふりすることが可能だ。
細かいテクニックだが、
情報のやり取りや、観客が知っているが○○は知らない、
などのコントロールが出来るのだ。
同じく、シーンの尻まで板付きにする場合と、
途中退場させる場合でもこれができる。
先に帰った人の悪口を言い合うのは、人の常である。
忘れ物をしたので戻ってきたら、なんていうパターンも可能だ。
いつシーンに出入りするか、板付きか、
で話をコントロール出来る。
特に舞台演劇では、ひとつの場しかないため、
頻繁にこのテクニックを使う。
登場と退場と板付きは、台詞と芝居以上に物語を語る道具でもある。
映画では、シーンを変えることのほうが多いが、
原理は同じだ。
上手く話が流れないとき、変則的にこのテクニックを使ってみると、
上手くいくことがある。
わざと登場を遅らせる、退場をはやめる、これだけを考えてもよい。
2013年12月09日
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