2013年12月19日

アンサンブルのつくりかた

ある要素を組み合わせて並べると、
それぞれ単独ではなかった、意味や流れが生ずることがある。
これをモンタージュとかアンサンブルとか呼ぶ。
モンタージュは時間軸の編集技法だが、
アンサンブルは空間方向や意味のことでも使える広い言葉だ。

群像劇の組み合わせ方、バラバラのカットを並べて一連にする、
名も無き役者の個性をバラバラにしながらも、
ひとつのまとまり感をつくる集団のオーディション
(風魔の19人、ダスキン50周年CMの12ダンサー、クレラップの家族など、
僕はわりと得意)、
サブプロット(サブテーマ)の組み合わせ、合わせなどに使う考え方だ。




アンサンブルを組むときは、
まず主旋律を決める。

テーマ、主な主張、主役、テーゼ、コンセプト、最も目立つこと、
それが何であるかが確定しないと、
アンサンブルは組めない。
また、テーマはひとつでなければならない。
「○○と△△の奇妙な組み合わせ」はテーマではない。
○○または△△のどちらかをテーマにするか、
全く別の「一概念」をテーマとする。
これを決めないとアンサンブルが出来ないのは、あとを見ればわかる。


次に、アンチテーゼを決める。
主旋律に対して、逆、表裏一体、ペア、敵、矛盾になるものだ。
主旋律とアンチテーゼの組み合わせが、
世界の陰陽となり、父と母になり、右翼と左翼になり、
テーゼとアンチテーゼになり、位相と反位相になるようにする。

まずこれは、世界を対比的に表現することである。
「世の中には二種類の人間がいる。AとBだ」という言い方は、
ざっくり世界を対比的に表現することである。

単純な例を出すと、
主役が左を向いていれば、敵は右を向いて、空間的に敵対するようにする。
主役が下手なら敵は上手に配置する。(左右のアンサンブル)
身長を高いのと低いのにする。(高さのアンサンブル。かぼちゃワインとか)
アップのあとはヒキへつなぐ。(サイズのアンサンブル)
寒色と暖色を対比させる。(色のアンサンブル)
カラフルとモノクロを対比させる。(彩度のアンサンブル)
単純と複雑を対比させる。
熱血とクールを対比させる。
高音と低音を対比させる。(音程のアンサンブル)
などである。


これに、第三要素を入れる。
僕はオカズという。トリックスターという役割論として認識されている。
「人が認識出来るのは2.5要素まで」で議論した、第三者である。
主旋律とアンチテーゼは、必ず敵対し、緊張関係を保たせるから、
第三者の介入により、その拮抗バランスが崩れるようにする。

主旋律と第三者、第三者とアンチテーゼが、
主旋律とアンチテーゼだけの関係よりも、
違う関係になるようにする。

すると、この2.5角形で、動きが生じる。
第三者は、第一者にも第二者にも属さない者で、
どちらにも属するようにする。

主役、敵役、脇役の人間関係、
赤、青、白の配色(トリコロール)、
ギター、ドラム、バイオリンやピアノ、
などの関係性をイメージするとよい。


第三要素は、複数あってよい。
出落ちやネタや一発芸でもよい。
主旋律とアンチテーゼの対比を茶化したり、
まぜっかえしたり、相対化するようなものがよい。
例えば赤と青の対立に、
無彩色の白とグレーと黒、
光る金、まだら色、緑、オレンジなどを第三要素として、
ちょいちょい入れてもよい。
(全体の規模で、この要素の多さは決まる)
第三要素が増えてきたら、この中にも第三要素内での、
主旋律、アンチテーゼ、第三要素を配置する。

入れ子構造だけでなく、
全体をある面で切ったときに主旋律、アンチテーゼ、第三要素があるようにする。

例えば、敵組織内、味方組織内でのそのようなアンサンブル、
女子キャストでのアンサンブル(美人、カワイイ、個性的の2.5角形など。
下手くそな男子創作家は、女子キャストを全部好みで選ぶから、
同じタイプばかりになることが多い)、
夜シーンでのアンサンブル、屋外と屋内シーンでのアンサンブル、
ロケ地と光線と音楽で考えたアンサンブル、などだ。

この「ある面で切った」面のことを、
アンサンブルのコンセプトという。
平たく言えば、こういう見方で、この群がある秩序を持つように配置した、
ということだ。

部屋の中のモノの配置などをイメージしてもよい。
ホームポジションを主旋律、ベッドをアンチテーゼとして、
本棚、テレビ、パソコンという大物のアンサンブルがある。
本棚内の本のアンサンブルは、小説が主旋律、啓発本がアンチテーゼ、オシャレ本が第三要素、
となると部屋の主の像が見えてくる。
趣味というコンセプトで切ると、
小説、パソコンの自作小説、オシャレコートがアンサンブルになったり。
光というコンセプトで切ると、
窓からの直射日光、天井の電灯、パソコンの画面やライトスタンドが
アンサンブルになったり、などである。

立体的な考え方でも述べたが、
これらが凸凹で、均一化されず、にも関わらずある統一性があると面白い。


五人の戦隊、ゴレンジャーはアンサンブルの見本だ。
赤と青が主旋律とアンチテーゼの関係だ。
二人の性格は対照的である。
これに性格的な切り口での第三要素黄がいる。(ぎすぎすした関係を癒す)
性別的な切り口でのアンチテーゼ桃がいる。
ベテランと新人の切り口で、アンチテーゼ緑がいる。

ガッチャマンの五人は更にアンサンブルが良く出来ていて、
ゴレンジャーと基本的に同じ関係だが、
桃と緑にあたる、ジュンとジンペイが実の姉妹という、
孤児という切り口でのアンチテーゼになり、
戦闘員と非戦闘員という切り口で、黄にあたるミミズクの竜がアンチテーゼとなっている。
健とジョーは、赤と青以上に時に対立し、矛盾する。
ジョーは仲良しの4人に対して一匹狼というアンチテーゼだ。
ジンペイの子供という身体、竜のデブという身体も、オカズという凸凹をなしている。
健のバードスーツは、トリコロールのアンサンブルだ。
5人のバードスーツは、白と黒という主旋律、アンチテーゼの基本軸があり、
ピンク、黄色、ダークグリーンが第三要素のオカズになっている。
(当然だが、実写版ガッチャマンは、このアンサンブルとしての5人を、
全く理解せずに転写していた。だから非難されている)


10人の人間の組みをつくる。
配置する。
部屋の中を創作する。
音楽のセット。
映画の中では、様々なアンサンブルがあり、
それを組むのは、各スタッフと監督の共同作業だ。
そして、意味やストーリーや場面のアンサンブルが、
脚本家の提供するアンサンブルである。


時間軸のアンサンブルが、モンタージュだと思うと、
編集とは何かということが判ってくる。
対比、反復、主題とアンチテーゼ(カットバック)とオカズ、
順と逆順など、時間に関する編集は奥深い。

アンサンブルを組むのは、
部分と全体の、両方に目端が利くことが大事だ。

僕はよく、料理の味付けに例える。
メインの味、対立して渾然一体となるソース、箸休めやスープなどに、
それぞれを例えられる。


アンサンブルのコツは、人数などの、数をきめることである。
3、5、7の奇数は、不安定だ。
(だからドラマに向く。仲間割れや裏切りがやりやすい)
2、4、8の偶数は、安定だ。
(だから強固な敵の表現に向く。逆に安定を崩せないから、ドラマは産まれにくい)
目的に応じて使い分けよう。
上手く行ってないアンサンブルなら、奇数と偶数を入れ換えてみよう。
posted by おおおかとしひこ at 09:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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