初心者の人と話をしていると、
出来上がったものから、脚本を分離できない、
ということがよく分かる。
これでは、いつまで経っても脚本的考え方が出来ないし、
ここの脚本論を読んでも意味がない。
なので、脚本的考え方のトレーニング方法を書いておく。
まず、いいストーリーの映画を見る。
流行っているものではなく、自分のオールタイムベストがよい。
心から感動し、感情を動かされる名作で、
自分が目標とする素晴らしい映画がよい。
観客として、心から楽しもう。
脚本家として、
時計を分解して中の構造を理解して、
組み立てる方法が以下である。
二回目を見る。
そのとき、その脚本を、
頭のなかで書きながら見る。
シーン(柱)、ト書きを、頭のなかで書いてみる。
一時停止をしてはならない。
リアルタイムでやること。
台詞も、音ではなく文字として頭のなかに浮かばせる。
4割程度は頭のなかに文字で浮かばせることが出来ないと、
脚本的見方をしていないといえる。(ただ見てるだけ)
まず、通しで脚本全体像を眺める。
三回目は、一時停止や巻き戻しをしてよい。
全文、文字おこしをすること。
この映画を見ていない人に、その「ストーリー」が脚本状態で分かることが大事だ。
台詞の字幕を書き写すのはトレーニングにならない。
音から文字を起こすトレーニングを積め。
ワープロは禁止で、手書きでやるのがオススメだ。
手に脚本を覚えさせるのが目的だ。
初心者は、手と頭の連動が出来ていない。
手をトレーニングすると、
上級者は、そろばんが頭のなかに浮かぶように、
バーチャルな原稿用紙とペンが浮かぶようになる。
その為のトレーニングと考える。
肉体的にキツイが、走り込みと同じと思って黙々とやれ。
当たり前だが、あなたが脚本家としてやっていくには、
この何倍も何倍も原稿を書く一生を送るということだ。
それに慣れる意味もある。
字を書くのが苦手な人は、作家にはなれない。
作家は、例外なく手書きがはやい。
ワープロは、もっとはやい。
あなたは今トレーニング中なので、必ず手書きでやろう。
そのなかで、いい筆記用具やいい紙を模索し、
あなたに最適な筆記用具も同時に探そう。
(僕は大学生の頃から、コピー用紙にゲルインクの青ポールペンというスタイルだ)
四回目は、
出来上がった脚本を、黙読すること。
イメージや記憶から、元の映画を頭のなかで再構築する。
自分のト書きでそのイメージが描写出来ているのか、
それともストーリーだけを書いて細かい部分は監督に任せるのか、
それは脚本次第である。
いずれにせよ、全く空間がイメージ出来ないのは、
読み物としてアウトだから、
書き直すなら今だ。
五回目は、
その脚本を音読すること。
文字から音に再変換する。
なるべく迫真の演技で二時間を再現してみよう。
ラジオドラマのように、効果音や音楽を自分で重ねてもよい。
ワンマンショーをやるのだ。
脚本は、ストーリーを記すものだが、
演技を記すものでもある。
その演技は、文字に書いていない。
文脈から、その演技を構築する、ということを理解する。
これを、マイオールタイムベスト作品で、
少なくとも3本、出来れば5本以上やってみることをオススメする。
自分の肉体を通じて、出来上がりと脚本を往復する経験だ。
これをやると、そろばんが頭のなかに浮かぶように、
映画を見ると脚本が浮かぶようになる。
(浮かばないなら、更に5本10本やってもよい)
浮かぶようになったら、次の段階。
映画を見ながら、
三幕構成(第一ターニングポイントと第二ターニングポイント)を、
常にリストアップ出来るようにする。
これがちゃんと出来るようになるには、かなりかかる。
メインコンフリクトはなにかを、抽出出来るようにする。
テーマを書いてみる。これは相当難しい。
名詞どめではなく、「○○は△△だ」のような、テーゼ形式で書くこと。
そして、ログラインを書けるようになること。
映画を一本観たら、これらを自動的にしているのが、
我々プロである。(だから疲れる。一日二本は無理だ)
それを無理してやるのではなく、
無意識にやる。
ここまで出来るようになって、
はじめて脚本とは何か、という話に意味が出てくる。
脚本そのものと、映画を分離して考えられるようになる。
殆どの人は、脚本そのものと、出来上がりを区別分離して、
独立して考えられない。
見た目の話しはいくらでも出来ても、内容や動きやストーリーやテーマについて
語れる人は希である。
プロのプロデューサーでも出来ない人が時々いるから厄介だ。
なんやあんた分かってなくて色々発言してたんかい、
とあとになって分かることもあるものだ。
あなたがそれを分かっていないなんてあり得ない。
映画を一本観て、上記のことが無意識に出来ていないのなら、
もっと職業的トレーニングを積んでおくべきだ。
脚本は映画の設計図、とよく言われる。
建築家は、図面と実物の関係を把握して設計図を書く。
音楽家は、譜面と演奏の差を把握して五線譜を書く。
劇作家は、台本と上演の差を把握して脚本を書く。
漫才師は、ネタと上演の差を把握して台本を書く。
脚本は映画そのものではないし、映画そのものである、
という関係を、自分の中で分離したり融合したり出来るようにしておくことだ。
2014年02月07日
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