2014年02月07日

脚本的考え方のトレーニング

初心者の人と話をしていると、
出来上がったものから、脚本を分離できない、
ということがよく分かる。
これでは、いつまで経っても脚本的考え方が出来ないし、
ここの脚本論を読んでも意味がない。
なので、脚本的考え方のトレーニング方法を書いておく。

まず、いいストーリーの映画を見る。
流行っているものではなく、自分のオールタイムベストがよい。
心から感動し、感情を動かされる名作で、
自分が目標とする素晴らしい映画がよい。
観客として、心から楽しもう。

脚本家として、
時計を分解して中の構造を理解して、
組み立てる方法が以下である。


二回目を見る。
そのとき、その脚本を、
頭のなかで書きながら見る。
シーン(柱)、ト書きを、頭のなかで書いてみる。
一時停止をしてはならない。
リアルタイムでやること。
台詞も、音ではなく文字として頭のなかに浮かばせる。
4割程度は頭のなかに文字で浮かばせることが出来ないと、
脚本的見方をしていないといえる。(ただ見てるだけ)
まず、通しで脚本全体像を眺める。

三回目は、一時停止や巻き戻しをしてよい。
全文、文字おこしをすること。
この映画を見ていない人に、その「ストーリー」が脚本状態で分かることが大事だ。
台詞の字幕を書き写すのはトレーニングにならない。
音から文字を起こすトレーニングを積め。

ワープロは禁止で、手書きでやるのがオススメだ。
手に脚本を覚えさせるのが目的だ。
初心者は、手と頭の連動が出来ていない。
手をトレーニングすると、
上級者は、そろばんが頭のなかに浮かぶように、
バーチャルな原稿用紙とペンが浮かぶようになる。
その為のトレーニングと考える。
肉体的にキツイが、走り込みと同じと思って黙々とやれ。

当たり前だが、あなたが脚本家としてやっていくには、
この何倍も何倍も原稿を書く一生を送るということだ。
それに慣れる意味もある。
字を書くのが苦手な人は、作家にはなれない。
作家は、例外なく手書きがはやい。
ワープロは、もっとはやい。
あなたは今トレーニング中なので、必ず手書きでやろう。
そのなかで、いい筆記用具やいい紙を模索し、
あなたに最適な筆記用具も同時に探そう。
(僕は大学生の頃から、コピー用紙にゲルインクの青ポールペンというスタイルだ)


四回目は、
出来上がった脚本を、黙読すること。
イメージや記憶から、元の映画を頭のなかで再構築する。
自分のト書きでそのイメージが描写出来ているのか、
それともストーリーだけを書いて細かい部分は監督に任せるのか、
それは脚本次第である。
いずれにせよ、全く空間がイメージ出来ないのは、
読み物としてアウトだから、
書き直すなら今だ。

五回目は、
その脚本を音読すること。
文字から音に再変換する。
なるべく迫真の演技で二時間を再現してみよう。
ラジオドラマのように、効果音や音楽を自分で重ねてもよい。
ワンマンショーをやるのだ。
脚本は、ストーリーを記すものだが、
演技を記すものでもある。
その演技は、文字に書いていない。
文脈から、その演技を構築する、ということを理解する。


これを、マイオールタイムベスト作品で、
少なくとも3本、出来れば5本以上やってみることをオススメする。
自分の肉体を通じて、出来上がりと脚本を往復する経験だ。

これをやると、そろばんが頭のなかに浮かぶように、
映画を見ると脚本が浮かぶようになる。
(浮かばないなら、更に5本10本やってもよい)
浮かぶようになったら、次の段階。


映画を見ながら、
三幕構成(第一ターニングポイントと第二ターニングポイント)を、
常にリストアップ出来るようにする。
これがちゃんと出来るようになるには、かなりかかる。

メインコンフリクトはなにかを、抽出出来るようにする。

テーマを書いてみる。これは相当難しい。
名詞どめではなく、「○○は△△だ」のような、テーゼ形式で書くこと。

そして、ログラインを書けるようになること。


映画を一本観たら、これらを自動的にしているのが、
我々プロである。(だから疲れる。一日二本は無理だ)
それを無理してやるのではなく、
無意識にやる。
ここまで出来るようになって、
はじめて脚本とは何か、という話に意味が出てくる。

脚本そのものと、映画を分離して考えられるようになる。



殆どの人は、脚本そのものと、出来上がりを区別分離して、
独立して考えられない。
見た目の話しはいくらでも出来ても、内容や動きやストーリーやテーマについて
語れる人は希である。
プロのプロデューサーでも出来ない人が時々いるから厄介だ。
なんやあんた分かってなくて色々発言してたんかい、
とあとになって分かることもあるものだ。

あなたがそれを分かっていないなんてあり得ない。
映画を一本観て、上記のことが無意識に出来ていないのなら、
もっと職業的トレーニングを積んでおくべきだ。


脚本は映画の設計図、とよく言われる。
建築家は、図面と実物の関係を把握して設計図を書く。
音楽家は、譜面と演奏の差を把握して五線譜を書く。
劇作家は、台本と上演の差を把握して脚本を書く。
漫才師は、ネタと上演の差を把握して台本を書く。
脚本は映画そのものではないし、映画そのものである、
という関係を、自分の中で分離したり融合したり出来るようにしておくことだ。
posted by おおおかとしひこ at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック