ハリウッドの編集用語だが、
どこの編集でもやっている。
時間の盗み方として、覚えておくとよい。
映画とはカットの集まりである。
ヒキまたはヨリがある。
左右の向きは致命的で、ヨリの左右の切り返しが、
会話やアクションを成立させる。
このとき、何気ない手元のアップ、時計などの壁掛けやテーブルの小物、
窓から見えた景色、外なら空、
などを同時に撮っておくことがある。
ストーリーの進行の意図にカットを繋いでいくときに、
どうしても繋がらない絵があるとき、
(どちらも左を向いていて会話が繋がらない、
ヒキから同じ方向のヨリしか繋ぎがない、など)
上のような「何か」を間に挟み、そこに音声を乗っけることで、
ストーリーの進行は妨げず絵の不自然な繋ぎを回避するテクニックがある。
これをカットアウェイという。
日本語では、実景を挟むとか、ヨリのインサートとか言う。
ヨリのインサートには、手元や小道具や部屋の小物、
あるいは台詞のない役者のリアクションなどが候補だ。
勿論、撮っていない絵は繋げないから、
撮影現場では、万が一困ったときのインサートショットを、
バックアップやエキストラショットとして狙うことがある。
(ハリウッドでは、カバレージショットという。
カバレージは、ブツ撮りの場合もあるし、
役者の別芝居や別アングルなども含む、比較的広い言葉だ)
エキストラショットとは、使うつもりがないが、
保険的に、という意味だ。
保険の大きさは、監督の度量だ。
沢山保険を取る監督もいるし、保険なしの監督もいる。
(僕は保険を撮らない。計算が立った上でしか撮らない。
逆に、計算通りに撮る。計算を事前に綿密にするタイプだ)
カットアウェイは、ヨリであることや、
左右の関係(イマジナリーライン)と無関係なものが最適だ。
特に、左右の関係を忘れさせるショットを、
ピボットショットという。
(日本語にはそれを指す単語がないから、
その役割をするカットは邦画ではあまり見られない。
ヨリのインサートでとりあえずなんとかなる)
ピボットは、バスケの選手が片足を固定したまま、
もう一方の足で回転するイメージだ。
これによって、イマジナリーラインを変更するのである。
実際に、役者が振り向いたりすることで、
ワンカット内でピボットの機能を果たすことも出来る。
(優秀な監督は、そのような導線をつくってイマジナリーラインをコントロールする)
芝居の振り付け内でそれをやらなくとも、
カットアウェイでピボットの代わりを果たすことも可能だ。
左を向いているヨリ→何かのヨリ→同一人物の右を向いているヨリ
に繋ぐ場合、間に挟まれたヨリのインサートが、
ピボット用のカットアウェイである。
以上は編集の専門用語だが、
これは同様にシナリオでも機能する。
大局的な流れと、別の大局的な流れが直結出来ないなら、
何か別の小さなインサートを挟めばよいのだ。
カットアウェイである。
そのシーン内の別のこと(酒場なら、隣で喧嘩が起こる)でもよいし、
別の場所の何かでもよい。
つまり、注意をそらすのである。
それが焦点を変える役割を果たすなら、ピボットになり得る。
つまりは小気味よいターニングポイントになる。
編集(モンタージュ含む)とは、時間軸をコントロールする魔術である。
脚本の構成も同様だ。
編集を研究することは、時間軸の扱いの研究でもある。
日本にあまり編集の勉強を専門に教えている所はないと思う。
(編集マシンを扱えるようにはなるが、編集とは何かは教えてくれない)
僕は編集能力が高いと、個人的にも思う。
(2004年ACC編集賞を個人でもらっている)
編集とは、構成だ。
それは、そもそも脚本の構成のことなのだ。
(そしてそれは、前項のようなカードの並び替えで鍛えられる)
2014年02月08日
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