2014年02月12日

映画のプロットとは何か2: 風魔2(構想中)の例

プロットとは何かを探るために、
構想中の「風魔2」を例にとろう。
(風魔コーナーをご参考に。
ちなみに、「風魔主題歌録音」の情報がありますが、
今現在僕に風魔2のオファーは来ていません)

まずは主人公小次郎の、初期状態と最初の焦点を決める。

初期状態は、前作のつづき、夜叉殲滅後である。
原作のように風魔の里へ帰る途中に紫苑と遭遇するのか、
風魔の里で総帥のあんちゃんに報告するのか、
はたまた風魔の里で暮らしている状態なのかは、
まだ決まっていない。
それはあとで決めることだ。
重要なことは、風林火山の使い手になったこと、
姫子に惚れていることだ。

忍びの宿命という、彼には制約がある。
戸籍を持たないこと、忍びとして一生生きてゆくことだ。
(この大枠を示すため、総帥のあんちゃんからはじまることが、
ベストではと考えている。竜魔と霧風あたりからはじめてもよい。
紫苑との邂逅は、小次郎と劉鵬が見回りに出た、その後かも知れない)
これと、姫子への思いが彼の中で矛盾している様を描くのが初期状態だ。

これを破り、異物が現れる。

これには候補があって、
・風林火山を追う銀の男(カオスの紫苑)
・(濡れ衣の)風魔に恨みをもつ、飛騨一族の竜王院クルスが喧嘩を仕掛けてくる
・姫子からの手紙(間もなく卒業して、総長になる便り)
などがある。
恐らくだが、姫子からの手紙を受け取り、
一通り妄想したところを、竜魔などにたしなめられ、
「忍びは人間とは交われない」という枷をはめるのがよい。
姫子への思いがつのる中、事件が起こるのだ。

第一話でどのように方向性をつくるかによるが、
聖剣を追う謎の銀の一族がいること、
各地で忍びたちを襲う連中がいて、風魔のせいにされていること、
などは必要なセットアップだ。
前作のレギュラーのその後も見たい。
兄と稽古した林で、小龍と飛騨一族を交戦させることもありえる。

そして、寺(教会か)に身を寄せる、
黄金剣の男、武蔵のもとにも銀の男がやってくる。

「風魔にかけられた容疑を張らすこと」が、
第一の外的動機になるだろう。
このため、竜王院とともに、
九龍一族、雑賀衆、鬼面党に会いにいく必要がある。

これらのことは、物語が本格的にはじまる二幕への準備だ。

そして、カオスに関するセットアップもしておく。
例えば、姫子から「風魔の里へ行くから、二人きりで会いたい」と
手紙が来たとする。小次郎は一見ひゃっほうと出てゆく。
呼び出された先には、銀の一族の男、ラシャアが待っている。
第三の聖剣、雷光剣を携えて。
小次郎はその作戦に引っ掛かったふりをしただけだ。
俺は姫子に「白凰に迎えにいく」と約束したからだ、とニクイことを言う。
万が一に備え、小次郎は風林火山を準備していた。
風林火山と雷光剣の、緒戦が行われる。

おそらくこの前後で、総帥が暗殺される。
姿を見せぬサイキック集団、
忍び103流には所属しない、銀の瞳と銀の髪の一族、
カオスの仕業だ。


第一ターニングポイントを決めることは、
センタークエスチョンを決めることでもある。

今回の全体が聖剣戦争を含む場合、
コスモとカオスの宿命が全体となるから、
伊達総司の紅蓮剣登場が第一ターニングポイントになるだろう。
そこで小次郎は、風林火山に選ばれたのは宿命だと知るのである。

今回の全体が、聖剣戦争をしない(3またはザムービーで聖剣戦争)
のならば、
第一ターニングポイントは、
「小次郎が姫子を迎えに行き、さらうこと」になる。
小次郎は忍びを抜ける。
姫子も総長をあきらめ、小次郎についていくことを決める。
家の宿命を若い二人が捨てて逃げる。
二人を守るのは、風林火山だけだ。
(その風林火山すら、追ってくるカオスに、渡すかも知れない)
つまりこの場合の「全体」は、小次郎が風魔の次期総帥となることだ。
(現時点では、総帥となれば姓を与えられることをまだ知らない)

第一ターニングポイントを決めたら、
第二ターニングポイントも自動的に決まる。

前者なら聖地への移動(クライマックスは聖剣戦争)、
後者なら風魔の里への帰還だ
(クライマックスは風魔と対峙するか、
各一族と風魔の因縁を解くか、
ラシャアをはじめとする聖剣を持つカオスとの戦いか)。

センタークエスチョンとクライマックスを決めれば、
あとは二幕で何が起こるかを決めてゆく。

紫煌剣、幻夢氷翔剣、十字剣との対決をどこに置くか、
白朧山へはいついくか、南極の氷にはいついくか、
このあたりのイベントをどこに配置するかを、
第一ターニングポイントと第二ターニングポイントの間に並べるとよい。
恐らく、毎回のヤマにバトルがあるはずだから、
そのバトルを決めることが、二幕を決定してゆくことになる。

原作の大筋を生かしつつ、
第一ターニングポイントまでに設定した火種が、
二幕でのサブプロットになるだろう。
単純でスピード感溢れる原作のプロットが、
ドラマ的なプロットになってゆく筈だ。
(その厚みをつくるため、各一族の話を創作し、
小次郎の抜け忍で縦軸をつくる)

さて、この話を貫くアイデアは、
小次郎の初期状態だ。
「風林火山の所有者」「忍のままでは姫子と結ばれない」の
二つである。
これらが小次郎の動機となり、
二幕で起こる聖剣争奪戦への関わり方を決める。
カオス、聖剣戦争、コスモ、各一族、忍びという枷は、
小次郎にとっては、障害である。
これを、どのように乗り越えて行くかが、二幕の冒険だ。
その動機は既に、初期状態で設定されているのである。

初期状態(内的動機、周囲の状況)、
異物との出会いによる最初の焦点のふたつが決まれば、
プロットは書き始められる。

あとは、全体の構造が、
第一ターニングポイント、第二ターニングポイント、
センタークエスチョンを決める。

これが決まれば、あとは障害を超えてゆくさま、
立ちはだかる障害、脇の人物のサブプロットを描き、
メインのプロットと絡めてゆけばよい。
(伊達総司のオリジナルプロット、武蔵とクルスの因縁など)

テーマやラストシーンも、この段階で決められる。

聖剣戦争なら宿命、
抜け忍なら責任、のようなものがテーマになってくるだろう。
ラストシーンは、前者なら風魔の里への帰還、白凰へ姫子を迎えに行くこと、
後者なら、総帥を継ぎ、姫子を待たせたまま聖剣戦争へ出てゆく場面となる筈だ。

4000年を越えるコスモとカオスの壮大な宿命と、
風魔の忍びという人間レベルの宿命の二重構造が、
小次郎のテーマになる。
彼の人間のとしての決断こそが、ドラマのテーマだ。


これらの行動計画が、プロットだ。
プロットは、計画といえども、冷たい計画書ではない。
どのような感情を観客が抱くのか、
それはプロットで示されていなければならない。

上にあげたのは、まだプロット未満の状態だが、
それでもカオスが絡んでくるワクワク感、
姫子との逃避行のせつなさ、
最終決戦へのゾクゾク感、
ラストシーンにわき起こる感情、
どれも出来上がりには不可欠な感情が、既に現れている。

細かい部分はあとで決めるとして
(例えば竜魔と蘭子の恋の行方、武蔵の聖剣戦争後の行き先)、
主たる感情を、プロットではわき起こさなければならない。

「プロットは、たとえ少しも視覚的効果の助けがなくとも、
出来事の展開を聞いている者が恐怖で身震いし、
起こっていることに同情を感じるように組み立てられなければならない」
(アリストテレス「詩学」)と、ギリシャ時代から言われている、
基本原則である。



プロットは因果関係である。
プロットは行動リストだ。
焦点と行動と結果と次の焦点のリストだ。
メインプロットとサブプロットの絡みの計画だ。
それにまつわる動機だ。
そして、そこから起こる、我々の感情のことだ。

それが、映画の基本骨格なのだ。
主人公、物語、行動、わき起こる感情。
これこそが、執筆前に決めておくことである。


これらを決めていないと、確実にあなたは脚本の森で迷い、
ゴールまでたどり着けない。
一部の天才作家はプロットなしでも書けるらしい。
一度も迷わず名作を書き続けられるなら、プロットは書かなくてもよい。
プロットは、我々凡才に与えられた、名作を書くための技術である。
(僕の書いたプロットの例は、既に作品置き場にあります。
「風魔2(構想中)」「ガッチャマン」、リライト版「マトリックス2、3」など。
プロットの書き方の参考にどうぞ)
posted by おおおかとしひこ at 01:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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