2014年02月13日

ワイルドカードをうまく使おう

アンサンブル論でもあり、編集論でもある。
二項対立だけで話はシンプルで強くなる場合もあるが、
単純で詰まらなくなる場合もある。
そのときに、ワイルドカードを使うと面白い。

ワイルドカードの意味は、
これは絶対使うのだが、どう使うか決めていない要素のことだ。
人物でもネタでも小道具でもなんでもいい。
何かを自分の中で仕込んでおき、
ここぞというときに切り札で使うのだ。

ワイルドカードはジョーカーともいう。
何にでも化ける(どのような使い道でもいい)、
ただし絶対使われることは決まっている、の意味だ。

これは書き手の中での切り札だから、
観客にとってワイルドカードであるかどうかは関係ない。
人物がワイルドカードとなるとき、
たいていトリックスターの役割を与えられる。
が、何もトリックスターでなくてもよい。
昔よくあった、「Mr.X」という人物を思いだそう。
正体は分からないが、その場には必ずいる。
そして、どこかでその正体が明かされることが決まっている人物。
適切な文脈でそのジョーカーを切ると、話が面白くなる。
(たとえば、ドラマ版スケバン刑事の闇の指令は、
ずっと「?」というキャストだった。正体が最終回あたりで明かされるが、
ストーリーに衝撃を与えるでもなく、正体が長門博之というビッグゲストだと分かっても、
ストーリーに対して影響は与えなかった。
トリックスターに必要な、物語を進行させる役割を果たしていないので、
単なるハッタリ的なワイルドカードだ。だがその謎感は、物語に一種のスパイスを与える)

風魔の小次郎で言えば、
僕にとってのワイルドカードは、「忍びとは、刃の下に心と書く」というネタだった。
いつ使ってもいいネタだし、原作には出ていない言葉だけど、
忍びものの定番だからだ。
忍耐とかの文脈で、竜魔や霧風が小次郎に忍びとは、と使うのかなあ、
と何となくイメージしていたが、
霧風が「霧で本心を隠す」とほぼ同じ意味の名言を話してしまったので、
使う場面を密かに狙っていた。
まさか姫子があんな場面で言うとは、実は決めていなかった。
彼らは単なる刃物じゃない、なんて言うとは書いてる自分でも予測していなかった。
すらすらと、使う場面が自分の中で出てきただけだ。


ワイルドカードは、切る機会があれば、このようにいつでも使ってよい。

あるだけで安心なもの。どのような文脈でも使えるもの。
最初から仕込んでもいいし、テーマに沿って持ってきてもよい。

単純な二項対立は、第三勢力というワイルドカードを使うと、
話が複雑になり面白くなったりする。
(風魔で言えば壬生や陽炎だ。壬生はワイルドカードであり、
陽炎は裏のトリックスターだ)

アンサンブルを組むとき、
明確なトリックスターがいない場合でも、
ワイルドカードを仕込んでおくとよい。
一種の遊撃部隊と思うとよい。
(遊撃部隊という言葉は、どうしてこんなに中二心を刺激するのだろう)
いぶし銀の活躍でも、ちょっとした小ネタでも、
ヘンテコな小道具でも、蘊蓄でも豆知識でもよい。
(ウイスキーの醸造のときの「天使の分け前」の話は、
誰もが使ってみたいネタのひとつだろう)
それは最初のプロットになくてもよい。
ないほうがいいかも知れない、ディテールレベルのことかも知れない。

編集的に言うと、
カットアウェイやピボットに当たるショットや、
どこに挿入してもよい使い勝手のよい短いシーンは、
ワイルドカードになりえる。
最も万能なワイルドカードは、空のカットだ。
どこに挟んでも、天候や季節が違わない限り機能する。
昼間の青空、アンニュイな空、何気ない夕焼け、涼やかな朝、
街を構図に入れ込んだ実景ショットなど、
映画には何気ない描写がある。
実はこれは編集上のワイルドカードであることが殆どだ。

ワイルドカードは、単純になりがちな要素に、
外からの視点を持ち込むための方法論かも知れない。
空気が悪くなって煮詰まった部屋の、
窓を開けるようなものかも知れない。
あなたの書く話が行き詰まったら、
遊撃部隊ジョーカーの出番かも知れない。
そのために、あらかじめ何かを仕込んでおこう。

あ、使わないのなら、リライトでその伏線は刈っておくこと。
別の作品用にネタ帳に保存しよう。
僕のネタ帳は、ワイルドカード的なもので一杯だ。
posted by おおおかとしひこ at 13:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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