2014年03月01日

コメントに答えて、メイキングの話、つづき。

「幼くとも客」さまのコメントを読んで思いました。
なるほど、外からの視点ではそう見えているのだなと。

業界で平均的かどうかは分かりませんが、
僕の関わった仕事では、メイキングの予算は、ないのが殆どです。
タダでは作れない(撮影費、人件費、編集費、拘束期間など)から、
どうするかといえば、本編の予算から削るのです。
本編のクオリティが下がるのは当然です。
(ちなみに風魔は良心的で予算が別でした。ハリウッドのメイキングもそうです)

金を出す側(製作委員会など)は、メイキングをサービス扱いします。
つまりタダ(同然)でつくるのが前提だと。
追加予算は出ません。
そうやってサービスを膨らませた結果、
本編のクオリティが下がるケースが多いことに、僕は耐えられないのです。

ただでさえカツカツでぎりぎりに撮っている現場に、
邪魔が入るわ金も取っていくわの、今のメイキングのあり方に、
警鐘を鳴らしたいのです。
時間と金を、本編班とメイキング班が取り合っている。
こんな不幸な現場はない。
現場とは、もっと創造に満ちた場であるべきです。

メイキングにお金を払えますか?どれくらい払えますか?
タダでつくれるものなんて、プロの世界にはありません。
そして、おおむねお金とクオリティは比例します。
タダなのにクオリティが高いのは、
誰か(メイキング監督、カメラマン、録音部、編集部)が
無償で命と才能を削っているのです。
そこにもきちんとお金を発生させて、報われるようにするべきです。
それにはメイキングがいくら金を取れるのか?ということなのです。
(DVDでは、メイキング映像の監督には、二次著作権料は入りません。
つまり、そのレベルの扱いなのです)


それとは別に、件の舞台のメイキングの話。
どの舞台のことか分かりませんが、
舞台裏の苦労を見せることは、どんな世界でも二流だと思います。

舞台裏のほうがときに舞台よりドラマチックである、
ことを扱った映画に、「コーラスライン」があります。
メイキングをやるなら、ここまで一流にするべきです。
(内幕ものでは、「サンセット大通り」「ラジオの時間」も傑作です)
「ポンヌフの恋人」のメイキング(一時間ぐらいあるやつ)も
特筆ものです(最近のレンタルDVD版に収録されてます)。
未見ならオススメです。
posted by おおおかとしひこ at 03:32| Comment(1) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
がっかりされるかもしれませんが、「メイキングでお金が取れるか?」の質問には、いわゆる若手人気俳優の作品に限って言うならYESです。
 本編も良作なメイキングであれば純粋に嬉しいし、本編がしょぼい時は“メイキングで元を取る”のがファン心理かと思います。
低予算作品でアイドルや若手俳優頼みの作品なら、メイキングに労力を割くのはビジネスとしてペイさせるには正しいのかもしれません。
メイキングでもお金はとれるので、予算も撮影時間も別にすべきだし、メイキングにも著作権があっていいと感じますが。
メイキングも金になると、業界に伝える術はないのでしょうか?(なんならメイキングは別売りすればいいのに。本編がイマイチの時はメイキングで釣る場合も多いのか?)

アイドルやイケメン俳優ファンは“キャストオタ(ク)”と蔑視され、内容なんかそっちのけで、彼女・彼らさえ見れれば良いバカな客だと思われてるように感じるのですが、妄信的なファンは別として、たいていは、好きな俳優に
「本当は良い作品に出て欲しい」
と願っています。
 何年かファンをしてると、そんな贅沢の言える世界でない事がよくわかってくるので、
しょぼい作品だろうと、
あからさまに客寄せパンダで呼ばれた作品だろうと、
「どうせ中身なんか見てないんだろ。ほらよ、お前らの好きなアイドルにあんなことやこんなことさせてやったぜ喜べ」みたいに、客に媚びつつも客をバカにしてる作品でも、
「好きな俳優が真剣がんばってる姿を応援しに」観に行くし映像も買います。
 とにかく仕事をつないでこの世界で生き延びてほしいから。いつか良い作品に出られるよう生き残っててほしいから。
 だから、彼らが良い作品にめぐりあった時は、観る方も嬉しいし、やっと作品として楽しめます。
 大御所舞台や高尚な作品が必ずしも良作とは限らないので、それ以上は好みの問題になりますが、そういう作品にも出られるくらいに育ってほしい、若くなくなったら使い捨てされる存在に終わってほしくないと願って、数多ある駄作も見守っています。
本当は良い作品に出て欲しいと願って、「我慢」してます。

俳優ありきなんて馬鹿で幼い客だと言われればそれまでですが、そういう観客は多いのではないでしょうか?
(その俳優のファンになるきっかけは、良い作品に出ていたからです。やはり本編が良い作品は役者も魅力的に見えますから。風魔もそうです。高尚な作品ではないけどとても魅力的でした。)

あと、「舞台裏の苦労を見せることは、どんな世界でも二流」というのは、製作者(芸術派)のロマンじゃないでしょうか?
一観客としては、本編作品が見ごたえがあって充分評価されたものなら、
裏を見せても「ずるく」も「二流」でもないと感じます。
 本編がしょぼい場合は、その舞台裏苦労映像が免罪符になるのかもしれないけど。

「コーラスライン」は大好きです。他のお勧めは拝見したことがないので機会があれば観たいと思います。
 

 

Posted by 幼くとも観客 at 2014年03月05日 01:21
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