2014年03月08日

ナプキンライティングメソッド

と、オリジナルの名前をつけてみた。
作品の本質に迫るとき、有効な方法だ。
用意するものは、ボールペンといきつけの飯屋である。

飯屋にたいていある紙ナプキンを一枚失敬し、
そこにボールペンで書く。ただこれだけだ。

何を書くかというと、
「何故この話は面白いのか」である。


飯屋で書くには、理由がある。
飯を食う前の待ち時間、または食後のいい案配のとき、
脳はいい状態にある。
いつもの仕事場ではない、別の場所というのもいい。
飯屋は、簡単な外の社会だ。
一人で考えるのではなく、こういう人達にむけて書いている、
という想像がしやすい。
映画は、暗闇に目暗滅法うつことではない。
どんな人が興味を持ってくれるのか、
どんな人が共鳴してくれるのか、
想像していない創作などない。

仮に、今ここで立ち上がり、おいしい飯を食ってるみなさんに、
今書いている作品の面白さを言う、と想像するのだ。
無視されるのか、興味を持ってくれるのか、
面白そうだから是非作品を読ませてくれ(その映画を見せてくれ)、
なのか、それはあなたの言い方次第である。

実際に立って演説できないから、
小さな紙に書いてみるのである。

小さい紙、というのもポイントで、
小さい紙に書くには、本質をとらえて短く書かねばならない。
短く書くための枠なのである。


自分の作品は、何が面白いのか。
それをシンプルに、本質をとらえて書くのである。

ここで、笑えるから面白い、とか泣けるから面白い、
とか、抽象的な解説をしてはならない。
コツは、○○という面白さ、と、具体で書くことだ。

「ロッキー」で言えば、
「引退寸前のダメなボクサーが、世界戦という千載一遇のチャンスをえて、
頑張る面白さ」
などと書くとよい。
「何故面白いか」という解説ではなく、
「こういうことで面白い話」と書くとよい。

容易に想像できる通り、これはログラインを書くことに近い。
(ログラインには明確な定義がないため、
これをログラインとしてもよい可能性もある)

そのような面白さだ、と言われて、
そんなに面白そうに思えないんだけど、
なのか、
なかなか面白そうだ、苦しゅうない、続きを頼む、
なのか、
その小さな紙の言葉が決めるのだ。

これは、予告編を考えることにも近い。
面白さの本質を芯を食ってとらえないと、
面白そう、にならない。
(余談だが、最近の予告編は、これが下手な気がする)


面白さの内容は、
ありがちだったり、難解でさっぱり分からないものはダメだろう。
シンプルで、分かりやすい、新しく、
なおかつキャラの立った面白さがよいだろう。

キャラの立った、という表現は、
ひょっとすると日本語独特かも知れない。
元々「漫画とはキャラ立ちである」という漫画業界の用語が、
いまやバラエティーにも欠かせない考え方になっている。

キャラが強いこと、親しみやすいこと、
間口が広いこと、(狭く親しみにくいキャラもある)、
他にない独特であること、
シンプルであること、
そのキャラが他と被らないこと、
などがキャラ立ちの条件であろう。

面白さのキャラ立ち、とは、
面白さがそのようなことを言う。

強い面白さ、親しみやすい面白さ、
他にない独特の面白さ、
シンプルな面白さ、
他と被らない面白さ、
そのような面白さである、
と、あなたの作品を言えるだろうか。

それを試行錯誤するのが、
ナプキンライティングメソッドである。

一回でできなくてもいい。
何日かかってもいい。
執筆中にやるのもいいし、
書き終わったあとにやるのもいい。
なにより、書くチャンスは、飯の回数だけある。


この説明が上手く出来るようになると、
書かれるものが、
それに従うべきだ、というリライトが出来るようになる。
その面白さに寄与していない部分は削り、
その面白さに寄与している部分は増幅し、
その面白さを裏から支えるものは裏方にし、
つまり、作品がその面白さに従うようになるのである。
コンセプトを定める、という言い方を広告業界ではする。

映画にはあまりないようだから、
面白さを決める、などと言うことにする。
ジャンルを決めるとか、ターゲットを決めるとか、
似た映画を決めるとかあるけど、
それは外堀を埋めることに過ぎない。
ど真ん中の、キャラの立った面白さを考えるには、
細かなものを煎じつめて、シンプルな煮込みにしていく過程が不可欠である。
似ている何かを探し、それと違う点を探すのは、
批評であって創作ではない。

こういう面白さ、という一点にしぼりこむのは、
本質に向き合わないと出来ない。

ナプキンライティングは、それを考えるのに適した方法だ。



面白さを決める以外にも、
脚本の構成を考えたり、人物造形を練ったり、
ナプキンライティングは、何にでも使える。
短く書かねばならない制限、
外の環境で観客の顔が見えやすいこと、
何回でもあるチャンス、
うまいもの食うご機嫌、
これを生かして、色々なことを煮詰めていくとよい。

こればかりやると、家や仕事場がナプキンだらけになるので、
時々ノートにうつしておこう。
posted by おおおかとしひこ at 15:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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