2014年03月11日

アクションの規模

アクションは、動きを尊ぶムービーの基本だ。
そしてコンフリクトとは、人と人の間のことだ。
つまり、映画とは、「人と人の間のアクション」で表現される。
(アクションとは、殴る蹴るやカーチェイスのような派手なものだけでなく、
動詞で表せる全てを含む)

それには、規模がある。

あらゆる表情は、アクションだ。
あらゆる仕草は、アクションだ。
あらゆる言葉は、アクションだ。
あらゆるボディーランゲージは、アクションだ。
あらゆる直接接触行為は、アクションだ。
(肩を叩く、握手やキスなどから殴る蹴る、関節技をかけるまで)
あらゆる物を介した間接的接触は、アクションだ。
(乾杯、煙草に火をつける、何かを渡す、ナイフで刺す、電話も含む)
あらゆる飛び道具による接触は、アクションだ。

あらゆる身体拡張によるアクションは、アクションである。
自転車、馬、馬車、バイク、車、バス、トレーラー、
戦車、列車、ロボット、ヘリ、飛行機、旅客機、戦艦、潜水艦、
軍隊、宇宙船などがよく使われる。


これらは、規模がある。
占める空間の大きさを、段々と大きくしてみた。

絵面上の大きさが、
大きいほどダイナミックに見える。
車とヘリのチェイスなどは、アメリカ映画ではしょっちゅうだ。

そうでなくとも、
人と人の間のアクションは、
絵面がダイナミックであればあるほど人目を惹く。
それには、ある程度の大きさが必要である。

それを、スケールが大きいという。

スケールの大きさは、問題の物理的な大きさではなく、
アクションのダイナミックさによるのだ。


一方、スケールは小さいが、
深い人間的ドラマでは、
アクションは小さくとも、
それが深い意味を持つだろう。

二人の乾杯が深い意味を持てば、
アクションのスケールは小さくとも、
ダイナミックなアクションに負けないスケールを持つことになる。

我々日本人のつくる映画は、
ダイナミックなアクションを目指すことは予算的に難しい。
であるなら、深さにおいて、アメリカ映画を凌駕しなければならない。

深さ×ダイナミックさ=スケールになるとしたら、
深さにおいて、スケールを大きくしない限り、
ハリウッドアクションには太刀打ち出来ない筈である。
(幸い、多くのハリウッドアクションは浅い)


あなたの書く物語は、
その小さなアクションが、
車とヘリのチェイスぐらいスケールの大きなことを、
深さにおいて表現しているだろうか。

していないなら、それはスケールの小さな、
ちんけな物語だ。


時々僕が絶賛する小さな芝居に、
「君が僕を見つけた日」のラストシーン、
「夫の服を丁寧に畳む」がある。
アクションの空間じたいは、
手元の四方1メートルもない空間のアクションだ。
物語を見ればわかるが、その意味するところは、
車とヘリのチェイスよりスケールが大きいと思う。


こんなことを書いたのも、
今日見た若人のCM企画が、
化粧を整えるという、小さな一人芝居がキモになっていたからだ。
アクションは20センチ四方の狭い空間だ。
それで象徴される意味が、恋人との待ち合わせという、
あまりにも平凡過ぎるネタでびっくりした。
ちいせえ。
そんなものが、車とヘリのチェイスのスケールに、
勝てる訳がない。

短いから出来ないって?
「夏草や兵どもが夢のあと」と17文字で物凄いスケールを描ける人もいるぜ?


アクションは、映像で物語ることの、
致命的な(見たまんまの)スケール感である。
(空撮の絵などは、問答無用でスケールがデカイ)

文脈や意味が、
見た目は小さなスケールのアクションを、
物凄く大きくすることが出来る。

その小ささと大きさの差分が、物語の力である。


「キックアス2」では、
マシュマロ入りのマグカップを供えるという、
たった10センチ四方のアクションで、
僕は不意に泣いてしまった。
ハリウッドの小道具の使い方の、凄いところだと思った。

「ゴースト/ニューヨークの幻」の第二ターニングポイント、
扉にくっつけたコインを動かすことで、
彼女に幽霊の存在を証明するシーンがある。
芝居のスケールは、それこそ5センチだ。
しかし、ここで皆号泣するのだ。
コインが動くだけだぜ?車とヘリのチェイスのスケールと見比べろよ。
否。それ以上の深さが、物語によって加えられているのだ。

小道具とは、このように使う。
アクションの規模が、スケールの規模に必ずしも一致しないようにするのだ。


化粧直しが彼氏との待ち合わせの象徴?
スケールが小さすぎてへどが出るぜ。
posted by おおおかとしひこ at 02:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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