名調子と言われるセリフは、リズムがいい。
五七調や七五調、対句や倒置や比喩法、
頭韻や脚韻などの音韻法など、
文法的な方法はあなたもご存じだろう。
これらは、書かれた言葉を分析する方法であり、
書くための発想法ではない。
名調子は、どこから生まれるか。
歩きながら喋ってみるとよい。
歩くことが一定のリズムになることで、
ラップで言うトラックのリズムが出来る。
ゆっくり歩けばゆったりした言葉が、
速く歩けばマシンガンが出てくる。
体を動かしながら喋るのがコツだ。
小説などの書き言葉と違い、
映画の言葉は、最終的には音として体から発生させる。
その最初の楽器に、あなたの肉体を使うだけである。
肉声は、書き言葉と違い、
音の響きや間を持っている。
それをシミュレーションするためである。
言いながら考えることは、音声の台詞にとって、
最も自然だ。
書き言葉だと、つい魑魅魍魎などの難しい言葉を使いたがるが、
言う言葉では、そのような言葉遣いを避けることが出来る。
(思想家の吉本隆明の著書は難解だが、
講演会では平易な言葉を使っていたという。
吉本の思想を理解するには、書き言葉より、音が分かりやすいらしい)
難しい言葉は、大抵漢語(熟語)である。
和ことばを多用するとよい。
相撲取りの四十八手は、すべて明治以前の和ことばで出来ている。
ラジオで中継を聞いても、決まり手の絵がなんとなく想像できる。
(押し出し、はたきこみ、寄り切りなどなど)
漢語は、輸入された書き言葉として発達した。
それより以前からあるネイティブワードは、
音と概念が一致している。
(若者言葉は、あたらしいネイティブワードになる可能性がある。
それは、書き言葉ではなく言う言葉だから。
ネットスラングはまた別の書き言葉になりつつある)
注意すべき点は、歩きながらぶつぶつ言う怪しいおじさん(またはおばさん)になる
危険性だ。
ノートを持ち歩き、時々メモを取れば、怪しまれないかも知れない。
(デジタル系の道具は余計怪しまれやすい)
歩くリズムが体のリズムであり、
言葉のリズムであり、
会話のリズムであり、
物語のリズムになる。
目的のシーンの、理想のリズムを想定し、
そのリズムで歩いてみよう。
違ったら、別のリズムを試してみよう。
名調子は、体から生まれる。頭からは生まれない。
関西弁は、既にリズムを持っている言葉だ。
いまだに忘れられないのは、
バラエティーの取材の中で、
大阪のおっさんが自衛隊の予算使いすぎ、と怒っている場面だ。
以下は大阪弁で再生されたい。
「一体いくらつこたら気がすむねん。
イーグル、ファントム、トムキャット、
いくらつこたら気がすむねん」(つこたら=使えば)
おっさんのリズム感は天才かと思った。
関西弁は、標準語より、体で考える言語だと思う。
そういえば囃子言葉は、農作業や漁業や祭りの、
体を動かしながら喋る言葉から来ている。
座ってキーを叩くのは、整理するときだけでよい。
名調子は、体で言うものだ。
そして名調子を聞いたら、体が勝手に動くものだ。
2014年03月11日
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