2014年03月11日

リズムのある言葉の生み方

名調子と言われるセリフは、リズムがいい。
五七調や七五調、対句や倒置や比喩法、
頭韻や脚韻などの音韻法など、
文法的な方法はあなたもご存じだろう。
これらは、書かれた言葉を分析する方法であり、
書くための発想法ではない。

名調子は、どこから生まれるか。


歩きながら喋ってみるとよい。

歩くことが一定のリズムになることで、
ラップで言うトラックのリズムが出来る。
ゆっくり歩けばゆったりした言葉が、
速く歩けばマシンガンが出てくる。

体を動かしながら喋るのがコツだ。
小説などの書き言葉と違い、
映画の言葉は、最終的には音として体から発生させる。
その最初の楽器に、あなたの肉体を使うだけである。
肉声は、書き言葉と違い、
音の響きや間を持っている。
それをシミュレーションするためである。

言いながら考えることは、音声の台詞にとって、
最も自然だ。
書き言葉だと、つい魑魅魍魎などの難しい言葉を使いたがるが、
言う言葉では、そのような言葉遣いを避けることが出来る。
(思想家の吉本隆明の著書は難解だが、
講演会では平易な言葉を使っていたという。
吉本の思想を理解するには、書き言葉より、音が分かりやすいらしい)

難しい言葉は、大抵漢語(熟語)である。
和ことばを多用するとよい。

相撲取りの四十八手は、すべて明治以前の和ことばで出来ている。
ラジオで中継を聞いても、決まり手の絵がなんとなく想像できる。
(押し出し、はたきこみ、寄り切りなどなど)
漢語は、輸入された書き言葉として発達した。
それより以前からあるネイティブワードは、
音と概念が一致している。
(若者言葉は、あたらしいネイティブワードになる可能性がある。
それは、書き言葉ではなく言う言葉だから。
ネットスラングはまた別の書き言葉になりつつある)


注意すべき点は、歩きながらぶつぶつ言う怪しいおじさん(またはおばさん)になる
危険性だ。
ノートを持ち歩き、時々メモを取れば、怪しまれないかも知れない。
(デジタル系の道具は余計怪しまれやすい)

歩くリズムが体のリズムであり、
言葉のリズムであり、
会話のリズムであり、
物語のリズムになる。


目的のシーンの、理想のリズムを想定し、
そのリズムで歩いてみよう。
違ったら、別のリズムを試してみよう。

名調子は、体から生まれる。頭からは生まれない。



関西弁は、既にリズムを持っている言葉だ。
いまだに忘れられないのは、
バラエティーの取材の中で、
大阪のおっさんが自衛隊の予算使いすぎ、と怒っている場面だ。
以下は大阪弁で再生されたい。
「一体いくらつこたら気がすむねん。
イーグル、ファントム、トムキャット、
いくらつこたら気がすむねん」(つこたら=使えば)
おっさんのリズム感は天才かと思った。
関西弁は、標準語より、体で考える言語だと思う。
そういえば囃子言葉は、農作業や漁業や祭りの、
体を動かしながら喋る言葉から来ている。

座ってキーを叩くのは、整理するときだけでよい。


名調子は、体で言うものだ。
そして名調子を聞いたら、体が勝手に動くものだ。
posted by おおおかとしひこ at 15:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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