あなたのアイデアは、
どんなにオリジナリティーがあると思えても、
人類で最初に思いついたものとは限らない。
誰かが既に過去に思いついた(が捨てたもの)や、
誰かが三日後に似たようなものを思いつくかも知れない。
(電球や電話は、エジソンやベル以外にも同時期に発明されていた。
エジソンやベルが発明者とされるのは、特許登録の問題だ)
仮にアイデアは似たようなものでも、
ベストの具体的物語があれば、
そのアイデアの中で一番になれる。
そもそも映画史の勉強が足りなくて、
自分が無知なだけで過去の名作に使われてた、
なんてことはしょっちゅうある。
(70年代の「アルジャーノンに花束を」を見ると、
当時のアバンギャルド演出を見ることが出来る。
オプチカルを多用したものだが、
実際これはAfter Effectsの基本機能である。
しかし、今After Effectsで出来ることは、もう何十年も前に、
誰かがやっていたのだ)
人間の想像力はどこから来るのか。
脳の構造がかなりの割合を占めると思う。
精神病を詳しく調べると、あらゆる芸術や哲学のアイデアは、
既に殆どあるような気になってくる。
統合失調症(分裂病)、解離(多重人格)の具体的症例を見ると、
SFや怖い話で見たアイデアで満ちていて、
驚くことがある。
アダルトチルドレンや境界などの比較的新しい症状では、
最近のドラマの元ネタはこれではないかと思うものも沢山ある。
(調べもので、沢山精神病を調べた)
精神病は、脳機能の異常である。
熱平衡や内臓機能が狂うかわりに、認識や判断が狂う。
脳の異常は、脳がどのような構造があるかを見せてくれる。
(漫画家の古谷実は、おそらく統合失調症である。
芸術的妄想とは、殆ど紙一重だ)
経験的な心理学、精神医学の存在自体、
我々が似たような構造を持っていることは明白だ。
環境もあると思う。
必要は発明の母だから、
似たような環境で生きなければいけないのなら、
誰かが同じ発明をどこかでする可能性は高い。
発明史や科学史や歴史を見ているとそう思う。
それに気づいていたアップルの創始者たちは、
自分達のコンピューターの設計図を公開し、
オープンにプログラミングを出来るようにした。
パソコンの初期は、そのように発展した。
今でも、役に立つという理由で、無償でネットでプログラミングしている人達がいる。
そうやってソースコードが溜め込まれていく。
そこに共通するのは、
誰かが思いつく、という、我々は群れであるという考え方である。
(アイデアの共産主義というべきか)
宇宙人のテクノロジーは、宇宙に等方性がある限り、
電磁気、強い力、弱い力、重力を使うだろう。
あなたはあるアイデアを思いつく。
独創的で、今まで聞いたこともなく、
今のところ過去に似たようなものはない。
だが、知らない所で、似たようなアイデアは出ていると思ったほうがよい。
映画は数年スパンでつくるから、
その数年で、何百人何千人(何万人?)といる
脚本家や監督やプロデューサーや小説家や漫画家が、
似たアイデアを思いつく確率は、かなりあると思う。
猿が芋を洗い出したら、他の島でも洗い出すように。
(この現象はガセらしいが、妙な説得力があるのは、
なんとなく我々の直感に近いからだと思う)
だから、あなたのアイデアは、
他に全く似たものがない保証はない。
映画が世に出る数年後に、誰かに先んじられる可能性もある。
だから、そのアイデアを複数人が思いついたと仮定し、
その中で一番面白いものに、具体を詰めるべきだ。
たとえば、あなたが「伏線」という発明を人類ではじめてしたとしよう。
「前に出てきたことが、後になって効いてくるんだぜ!
こりゃビックリするぞ!」
と、思いついたとしよう。
だとすれば、
世界で一番面白い伏線を、あなたが考えなければならない。
伏線という仕組み自体は発明かも知れないが、
同じ仕組みを使って、あなた以上の面白い
「前使われたことが後で効く」を書かれたら、
あなた伏線の発明者にはなれるかも知れないが、
具体的な例としてあなたの伏線が、のちに参考にされることはない。
なぜなら、映画とは面白さを競うものだからだ。
どんなに抽象的な概念や仕組みや構造が面白くても、
具体的な物語、コンフリクト、台詞や行動や場面が、
面白くなくては、何の意味もない。
逆に、具体的に面白ければ、その奥にあるアイデアは、
制作者以外興味がないものだ。
例えば「ループもの」という話を誰が最初に発明したかは分からない。
(輪廻までたち戻る?)
しかし、ループものにはいくつかのバリエーションがあり、
その仕組み自体が評価されることではなく、
全体のディテールが評価対象だ。
どれだけ夢中になったか、
どれだけ驚いたか、
どれだけ感情移入できたか、
のほうが、アイデアを受けとることより、
遥かに重要である。
だから、あなたは、独創的なアイデアを思いついたら、
仮にみんなも思いついていると仮定し、
そのアイデアを思いついた中でも、
一番面白いものを書く必要がある。
そのジャンル内で出し抜くことではなく
(同じ条件下で、これには気づかなかった、を攻めることではない)、
王道で一番面白い、具体的な話だ。
今書いている話は、
「心の闇」をひとつのアイデアにしている。
発想は10年ぐらい前にしたものだ。
サカキバラ以来今ではポピュラーになったこのネタでも、
一番面白い具体的な話を創作出来たと思っている。
「医者を主人公にし、手術を受ける人達のドラマを描く」
という医療もののアイデアは、
ブラックジャックが初めてであり、
具体的ドラマも、既に最高峰であった。
アイデアの発明とは、こうありたいものだ。
2014年03月13日
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