ちょっと想像すればわかることを、
「やってみないと分からない」と言う人は、
たいていやってみても分からない。
という格言をネットで見て笑った。
想像力とは、理解力のことではないかと思う。
何故飛行機が空を飛ぶのか。
理解力、想像力のない人は、
「あんな鉄の塊が空を飛べる訳がない」と思考停止する。
ベルヌーイの定理を知らない人でも、
扇風機を例にとると理解出来る。
「扇風機が物凄く早く回ったら、後ろにぶっ飛ぶと思わないかい?」
「うむ」
「それを縦にしたのがヘリだ」
「なるほど。しかし飛行機はヘリではない」
「飛行機の羽が、空気を切る。扇風機は回転するが、飛行機は水平に」
「物凄いスピードで、継続的にやらんとだめだろ」
「飛行機は物凄い速い。F1より遥かに」
「まじか!」
「そのスピードを得るためのジェットエンジンだ」
「ジェットエンジンついた車がすげえスピード出してるアメリカのやつ見たことある」
「うむ。原理はこうだ。羽は下が平らで上は盛り上がってる。
F1より速い風が、下と上を通り抜ける。
下のほうが通りやすく、上が通りにくい。下の空気のほうが量が多くなる。
多いほうが押す。だから上向きに力が発生する」
「そんなの微々たるもんだろ」
「台風に向かって手を広げてみろ。F1より速い風の力を想像しろ。
電車から顔出したら風で持ってかれかねんだろ」
「たしかに、すごそうな気がする」
「しかも飛行機は乗員スペースより、遥かに羽の面積が広い」
「そんな広いのにグシャッてならないの?」
「だから鉄で出来てるんだよ。正確には鉄より強いジェラルミンだけど」
「飛行機すげえ!」
「ちなみに羽を上下逆につけたのがF1のウィング」
「なんのためにつけてんの?」
「速すぎて浮いちゃうから。ちなみに新幹線もトップスピードだと浮いちゃうらしいよ
(車輪の空転という)」
「でもさ、鳥は違う原理だよね?
滑空とかは同じだけど動力違うじゃん。
なんで鳥は羽ばたくと飛べるの?」
「上に羽をあげるときは畳んで上げる、下に羽を下ろすときは広げる。
この差で上むきの力を得る」
「羽すげえ! この原理をなんで飛行機で使わないの?」
「ライト兄弟の時代にはそういう試作品もあったよ。羽ばたくタイプ。
でも関節のある部品は壊れやすくてメンテがしんどい。
鳥は軽いけど人間は重い。鳥は一人乗りだけど旅客機は100人乗せたりするし」
「たしかに」
「鳥でなっとくするかも知れないけど、虫は?」
「?」
「虫の羽は羽ばたき方向には曲げられないだろ」
「たしかに! トンボやチョウは一枚羽じゃん。
上下に動かしたって同じ力を上下に出すから飛べないよ。
なんであいつら飛べんの?」
「虫の羽は、上に羽をあげるときは、根元の関節をひねる」
「?」
「極端にいうと、羽を90度回転してから上にあげる。上下方向に対して面積極小にする」
「上から見ると、前後方向に向いている羽があがってきて、
頂点で90度回転していわゆる羽の形にして、
下におろし、下に来た羽は回転してまた前後方向に向いて、以下繰り返し?」
「そのとおり」
「虫すげえ!」
「羽ばたきをスロー映像で見ると、そこまで極端じゃないけど、
空気抵抗の最小化と最大化をうまくやってるのがわかるよ。
ちなみに一番速いハチドリは、1分間に数万回羽ばたく」
「虫すげえ! 俺なら何回かに一回タイミング間違う!」
「昔さ、チョウのCGつくったときに、
羽をただ上下させて飛ぶのを作ってきた奴がいたんですよ」
「なーにー? やっちまったなー」
「虫がどうやって飛ぶか知らないんだよねえ」
「ちなみにハリウッドは?」
「ちゃんと回転する羽を再現してるのもある」
「さすが」
「でも日本は、ラピュタの虫の羽で羽ばたく飛行挺みたいに、
斜線でごまかしたり、2コマアニメ。金ないし」
「ぎゃふん」
飛ぶ原理、という話だけで、
想像力と理解力があれば、
話はいくらでも発展させられる。
たとえ文系だとしても、このように上手く説明してくれる人がいれば、
理系的なことを理解し、想像することが可能な筈だ。
分からないのは想像力が足りなく、理解力が足りないだけだ。
逆に理系でも、文系的なことを理解出来るだろう。
僕はいまだに、何故会社や国家が成長しなければいけないかが、
よく分からない。だれか経済学を理解してるひと、
うまく説明してくれ。
自然と拡大するのは構わないが、会社や経済の目標になって、
成長出来なければペナルティ、の意味が分からないのだ。
かつてビートたけしが淀川長治と対談したとき、
目の前のコーヒーカップからはじまる映画のストーリーを、
即興で10個くらいつくってみせたそうだ。
たけしは凄い、という話だったが、
数行のプロットでよいなら、
俺にだってつくれるわ、と思ったものだ。
逆にいえば、
殆どの人は、目の前のコーヒーカップから、
想像力をはばたせることが出来ないのだろうか。
ラブストーリー、別れ話、会社の話、ギャング、SF、
ミステリーの殺人小道具、これが揺れたら外には巨大怪獣、
陶芸家がはじめてつくったカップに巡りあった、
もう一個コーヒーカップが間違って運ばれてくる、
ジャングル戦でも英国式の朝食をとっていたイギリス人、
もう10個できた。
コーヒーカップに対して理解力があるわけではない。
物語や、小道具に対して理解力があれば、
コーヒーカップから話をつくるのはわけない。
即興、という条件だから、過去の名作に匹敵しなくてもよい。
想像力は、理解力だ。
あることを理解したら、類推して同じものを探して理解したり、
似たようなものだが違うものを考えたり、
自分の経験と照らせあわせたりする力だ。
想像力のない人は、馬鹿か、経験の足りない人でもある。
2014年03月18日
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