僕の開発した、リライトの方法論だ。参考にされたい。
まず、元の原稿を全ページ印刷する。
赤、緑、黄色のペンか色鉛筆を用意し、該当箇所を塗っていく。
赤:
「これが起こってしまったからには、
決して元に戻れない」箇所を赤に塗る。
赤はあまり長くならない。
一行の台詞や芝居や起こることなどが赤だ。
赤だけを取りだして並べると、
それは全体のプロットになり、骨格となる。
大きなターニングポイント、小さなターニングポイントなどは大抵赤だ。
重要な事実がわかったり、決定的なことを言ったり、
死んだりするのも赤だ。
物語とは、決して元に戻れないことになってしまったとき、
人が何をして、新しい秩序へと世界の平衡を変えるか、
ということでもある。
主人公だけでなく、脇役の行動や台詞、
自然災害(大震災や吹雪など)でも赤のポイントがあるだろう。
緑:
「客観的に見てよく書けているところ」
を緑に塗る。他人の映画だとしても、いいと思うところ。
台詞、展開、ト書きなど、色々な分量がある。
ワンシーンまるまるよく書けていれば、
全部を緑に塗ってもよい。
緑と赤が同時に塗られるところがあってもよい。
黄色:
緑とは対照的に、
「自分のこだわりで残したいところ」
に塗る。
黄色単体の箇所は、自分だけの拘りだ。
黄色と緑が同居すれば、こだわりで残したくて、しかもよく書けているところだ。
黄色と赤が同居すれば、こだわりで残したい、ストーリーが進むポイントである。
三色が同居する箇所は、殆どないが、あってもよい。
さて、ここまで塗り終えたら、
ハサミやカッターで、その箇所を切り抜きたまえ。
残りの白い部分は、捨ててしまう。
「貼ってはがせるのり」を文房具屋で買ってくる。
以後、白紙に貼ったりはがしたりするためだ。
白紙に、赤を順に貼る。
間に、緑を挟む。
これで得られるのは、物語の骨格に、
客観的によい部分がぶら下がっている表だ。
白紙を二段組にする。
二段目には、黄色単体のものを貼り、こだわり箇所を残しておく。
これを頭からラストまでつくり、
一覧表をつくって、壁に貼り出して、
一目で全体が見えるようにする。
たいてい、二時間映画でA4で10枚前後になるだろう。
これがあなたの書いた映画の、残すべき全てである。
捨てた白い部分は、いかようにでもその時に応じて書き直せばよい。
(先の記事のリライト方法は、このやり方の簡略化だ。
白い部分は、脳内でアドリブで書く箇所だ)
もし、骨格から変えるのであれば、
その一覧表を一度コピーして、元の原稿の一覧を残しておく。
新しい骨格を作り直したら、
赤を新しい骨格に貼りなおす。
新しい赤や、捨てる赤も出るだろう。
赤と緑、赤と黄色が同居する赤は、残すべきで、
赤単色をいじると、作業が効率的だ。
赤単色でない赤に手を入れるときは、かなりの大手術である。
これらは、全て壁の前でやり、
常に個々と全体のバランスを見ながらやることが望ましい。
机の上でやれればよいのだが、ごく小さな文字になってしまい、
結構イライラする。
この方法の利点は、「○○が△△に××する」などの、
抽象的なプロットの言葉を使わずに、
ダイレクトに脚本内の言葉で構造を組み直すことにある。
もしこれより抽象度の高い構造直しがあるのなら、
プロットの段階でやったうえ、ここに戻るとよい。
(おそらく、デジタルでこれをやることも出来るだろうが、
直接触って動かしたり、壁の前で文字を見るために歩くことや、
全体を見るためにバックすることなどの、身体操作が、アイデアを血肉に変える役割をする)
赤の変更に応じて、緑の箇所も、移動したり捨てる可能性がある。
ゴミ箱用の白紙をつくっておき、いったんそこへ捨てて、
あとで再利用する可能性に備えておく。
黄色単色は、いかように配置してもよい。
最悪全捨ての可能性もある。
実際執筆すると、形を変えてまた復活したりするから、
安心して黄色のことは考えなくてもよい。
新しい骨格に、使えそうな黄色を再配置するとよい。
これで頭から通してストーリーを想像して、
問題点がなくなっていて、より面白くなっているなら、
リライトに取りかかる。
白紙に書き出す一番しんどい書き直しになるかどうかは、
書き直しの分量が2割以上、という基準だ。
つまり、この三色ラベリングメソッドは、
2割以上の大手術用のやり方である。
110枚では大変な労力だが、
30枚以内の短編ならば、あれこれやってみるのは楽な筈だ。
コツは、前の一覧表を必ず保存しておくことと、
今の直しの最中には、前の一覧表を見ないことだ。
新しいことをするときは、前のものを見てはならない。
大体出来たときに、前の一覧表を見て、
以前はこう考えていたが、今はこう考えてみた、
という「考え方」の進化や更新を確認すると、客観的な議論がしやすいだろう。
僕は、この方法と、ブレイク・シュナイダーのボードを併用してリライトを行う。
慣れてくると、そろばんの有段者が頭のなかにそろばんが出てくるように、
頭のなかにこれらの一覧表やボードが浮かぶようになる。
それで出来る範囲ならそうしてしまうが、
腰を据えた作業では、きちんとこれを使うと、
丁寧でなおかつ見落としのないリライトが可能になる筈だ。
(なんであの時に思いつかなかったんだ!
ということは、あとあとになってよくある。
それを防ぐのは、全体を一覧できる客観性だ)
さらに慣れてくると、
映画を観たら、三色ラベリングの一覧を頭のなかに想像することが出来る。
詳細ではなく大体だけど。
それを頭のなかで操作し、よりよいリライト版をつくってみるのも一興だ。
2014年03月29日
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