2014年03月29日

マクレディの間(ま)

昔からある、芝居の台詞の言い方だ。
難しくもなんともない。
重要なことばを言う前に、一拍おいてから言う、
その間のことをマクレディの間という。


重要なこと、は、
この場合単語でもいいし、
一行でもよい。

分かりやすい例は、プロポーズに「はい」と返事する前に、
即答ではなく、ひと間とってから言う芝居だ。
「……はい」という、…の部分がマクレディの間である。
(当たり前過ぎるから、即答して、即答かよ!とギャグにふることもある)

このマクレディの間は、
台詞を書くときも使える(ていうか、自然にそうする)が、
また、シーンの中でも使える。
直結して展開せず、
重要な展開の前にひと間あけるのだ。


そういえば、犬の吠えるのが止まらなかった、
とか、不気味な黒雲が広がっていた、
とか、あのときアレが気になったんだけど何だったんだろう、
などの、あとで考えると不思議な間は、
マクレディの間が、台詞ではなくシーンに加えられた例だ。
主人公が登場せず、待ってました!のタイミングまで出てこないのも、
マクレディの間だ。
勿体ぶらせ、と考えることも出来る。
勿体ぶらせるには、今重要な緊急事態が、
上手く描けていることが前提だ。
すぐ次を見たいときに、マクレディの間があると、
やきもきする。あるいは、身構える。


この何とも言えない駆け引きは、脚本家だけがなし得る芸術だ。
緊張と弛緩は、脚本だけに描かれることを許された、
目に見えない観客との駆け引きである。
そのようなものが上手い脚本家もいるし、
全く考えていない脚本に監督が足す場合もある。

いずれにせよ、初心者の脚本にはこれはない。
最初は自分の考えることを書くことで、一杯一杯だからだ。
慣れてきたら、マクレディの間について、考えてみること、
他の表現からこれを見つけること、などについてやってみるとよいだろう。
ストーリーテリングとは、
同じストーリーでも、語り方によって印象操作をすることが出来る、
ということでもある。
posted by おおおかとしひこ at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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