お話の冒頭は、ツカミと呼ばれる。
我々の日常世界を忘れて、お話の世界に入ってもらうには、
何か心引かれるものがある必要がある。
それが気になって、一体どういうことだと身を乗り出させるのが、
ツカミの役割である。
その瞬間、心が日常から離れ、お話の世界に足を踏み入れたことになる。
ツカミには、さまざまな温度がある。
失敗したツカミ:
Level -2: 退屈
Level -1: なんかいまいち
成功したツカミ:
Level 1: あるある
Level 2: わかるわかる
Level 3: ふむふむ
Level 4: ほほう
Level 5: おっ
Level 6: 何これ
Level 7: やるねえ!
Level 8: やっべえ!
Level 9: どうなっちゃうのコレ!
Level 10: 魂奪われた…
とりあえず表にしてみた。
失敗したのは論外だ。それはお話を語る才能がない。
ツカミは、話の中でも一番楽しいところだ。
そこでつまづくのなら、ストーリーテラーにはむいていない。
とりあえずあとのことに責任を持たなくていいのなら、
いくらでも面白げな冒頭部を考えることは可能だろう。
それがじゃんじゃん湧いてこないのなら、ストーリーテラーはやめたほうがいい。
僕のノートは、使えもしない、そんな冒頭のツカミのシーンのジャンクが沢山ある。
さて、面白げなツカミだとしても、
その温度感には様々なグラデーションがある。
どのレベルをめざすべきか。
正解は真ん中あたりである。
「おっ」とか「何これ」と思わせて、
日常世界へ精神が戻るのを止められるだけで良い。
マックスつかむのが理想かと一瞬思うのだが、
それは、その後がすべて冒頭より面白いものに限る。
一端テンションがマックスになってしまったら、あとは下がるしかない。
うんこ映画実写ガッチャマンのオープニング明けを思い出そう。
何があったか覚えてる? 仮面舞踏会の潜入ミッションだぜ?
おれはここでもう眠くなったよ。
その後がそれ以上に面白くならないのなら、
ツカミのテンションは、それ以下にしておくべきだ。
徐々に温度を上げていけばそれで構わない。
最初はふーんと思っていても、その後夢中になる筈である。
おっ、と思うぐらいでいいんだ、と思うことは、
ツカミへのプレッシャーを除く効果もある。
最初からボカーンといかなきゃ、というのは理想だが、
現実ではない。
それに負けて全体が詰まらなくなるぐらいなら、
中々の滑り出しから、どんどん面白くなっていく方が断然いい。
それだけ面白ければ、ツカミがどうとかいう権利は誰にもない。
ツカミの温度を、熱すぎず、ぬるくもなく、
おっ、と思わせる、ちょっと尻の浮く温度にすること。
ツカミの次の展開がそれを受けてはじまれば、
あとはどんどん盛り上がっていくだけである。
ツカミというのは、全体に対してそれほどの役割しかない。
ツカミをどうこういうのは、要するに本編が面白くないからだ。
本編を考えてから、ツカミを考えるぐらいの余裕がほしい所だ。
2014年03月31日
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