2014年03月31日

点、線、落ち2

物語は点ではじまり、それが線になり、落ちがつくこと、
と以前に議論したが、
そのうちの線について、さらに深く。

線とは、最初のおもしろげな状況(点)が、
変化することである。


最初の点が、
一体どういうことなのか、
そのディテールを描いている段階は、
まだ線ではない。
その点が、新しい状況に変化したとき、
点から線へ伸びたことになる。
新しい要素が足されたり、
最初思われていた状況と全く意味が変わったりすることが、
点が変化することだ。

最初殺人事件ではじまる話にたとえれば、
その周辺状況を探ることはまだ点を描いているだけだ。
(セットアップ)
一通り状況がわかったところで、
新事実がわかる。
新たな容疑者があらわれたり、アリバイが崩れたり、
実は殺人ではなく自殺だったとわかったり、などだ。
これによって当初の図式が大きく変化する。
これがターニングポイントであり、線への発展であり、
展開だ。
新しい状況により、焦点が変化し、
当初の焦点ではない、新しい焦点を追うことになる。


序破急理論においても、
同じことを言っている。
序でやったことを、
破で壊すのだ。
壊す、の意味は、序と違うことをやるとか、
あえて序と似たような別のことをやることだ。
これによって、序パートと破パートには、
違いが生まれる。
その差異が展開であり、変化である。


「運命じゃない人」は、特殊な映画で、
序が一時間、破が一時間という構成をもつ。
序があんまり面白くないのが欠点だが、
破に入ってからのどんでん返り方が凄まじい。
序で語ったことごとくが、裏返っていく。
点が一時間は明らかに長くて、
それ故名作傑作の棚には入らないが、
点と線の関係について考えるにはよい、秀作の教材だ。

点は、たいてい7、8分しかもたない。
だからハリウッド映画では、
開始8分に事件を起こせ、という鉄則がある。
新しい要素が増えて、点(日常)が破壊され、
線へと発展する。
登場人物は、これにリアクションすることで、
話が展開してゆく。

あとは、焦点とターニングポイントの関係、
メインプロットとサブプロットの関係、
内的動機と外的動機の関係、
コンフリクト、
などが線を引き継ぎ、複雑化していくのみである。


一端設定したことが、
変化することが線である。

僕がペプシの桃太郎を否定するのは、
「カッコイイ桃太郎と犬と猿と雉が鬼と闘う」
という点の設定から、展開していないからだ。

この点の絵を現代的に書きかえただけで、
線を生んでいないからだ。
この「闘う構図」が変化しないかぎり、展開とは言わない。
鬼が味方になる(ジャンプ的でつまらないけど)、
犬と猿が離反する、新たな仲間が加わる、
などになって、はじめて線になる。

それには何故かという動機が必要で、
次にどうなるかという線も必要で、
最後に落ちがきたとき、なるほどそういう話だったのか、
という納得が必要だ。
特にCMの場合は結論は商品にならなければならない。
テーマも決まっている。「自分より強い奴を倒せ」だ。
点からはじまり、線になり、落ちがきたとき、
この落ちで納得するような点と線を描かなくてはならない。
僕が非難しているところは、それを一切手抜きしているところだ。
点、線、落ちの三拍子のうち、点しかないところである。
(エピソード0という0カロリーと引っ掛けたコピーで、
物語になる以前を描くというロジックで逃げを打っている老獪さも腹立つ)

一点豪華主義で物語の構造やあるべき姿を知らない人にハッタリをかましていて、
映画化とかほざいている、詐欺の感じ、
しかも潤沢な予算が、認めがたい部分である。



点が線になるためには、
最初の状況が変化しなければならない。

物語の初心者は、これを新しく変化させることをせず、
全く別の点を持ってきてしまう傾向にある。
点の次に別の点を語っても、
点の連続に過ぎない。
(この例に、詰まらないにもほどがある、「survive style5+」
を挙げておこう)
点が繋がって線になればおおっ、となるが、
点の連続は、線ではない。
(サイバラは、浦沢直樹の漫画を「いつまでたっても混ざらない交響楽」と揶揄した。
点ばかり描いて、線に集約できない浦沢漫画をうまくディスっている)


点を変化させよ。
たとえば隕石が落ちた状況は面白い。
人が集まってくる。
その隕石があいて、中から宇宙人が出てくるのが、
点が変化して線になることだ。
posted by おおおかとしひこ at 11:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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