2014年04月02日

テーマとはなにか

単純な例を考えよう。道徳話や教訓話だ。
主人公は物語が終わったとき何かを学ぶ。
「金より友情」「親は大切」などだ。

その学んだなにかこそ、テーマなのである。


複雑で長い話にせよ、
簡単で短い話にせよ、
リスクを賭けて冒険しおわったとき、
主人公は、それまで欠けていた何かを学ぶ。
ああそうか、と気づいてもよいし、
それを体現する人に成長してもよい。
欠けていた学んだことの内容が、物語のテーマである。

それは誰かの台詞や解説でもよいし(分かりやすいが二流)、
一言もその言葉が出ていないのに、
内容からその通りだと思われる(一流)でもよい。
(一番分かりやすいのは、ナレーションで解説してしまうこと。
言葉による繊細さが必要なら、「アニー・ホール」のような手もある。
この映画の素晴らしさは本編そのものより、このナレーションだ)


物語を終えたとき、
主人公が何一つ学んでいないなら、
それはテーマが欠けている証拠だ。
こういう物語こそ、何が言いたかったのか、と言われる典型になる。

テーマを持たない物語がある。
そういうものをエンタメ作品と称して誤魔化してることについては、
既に書いた。

テーマがよく見えない、何が言いたかったのか不明、
という物語は、
ただ大変な事態を解決した、
ただ大変なシチュエーションから脱出した、
とか、不幸が幸福になった、
とか、うまいこと偶然が重なった、
とか、ただ殺人犯を捕まえた、
とかである。
あった出来事が、順番に並べられているだけなのだ。
それがいかにパズルを巧妙に組まれていようと、
いかにビジュアル的に豊かに(爆発とかアクションとか)
描かれようと、
テーマなき物語は、
ただの報告だ。

日常しゃべっている、誰が何をした、
というおしゃべりと本質的に変わらず、
我々の人生を変えうるレベルの、心に深く刻まれる物語ではない。


心に深く刻まれる物語は、
必ずテーマをもち、そのテーマに深い感情移入をする。

そしてそのテーマとは、
主人公が冒険を通じて学ぶことだ。


学ぶからには、最初の主人公は、
テーマのことに関して、不足や欠如や欠陥がある。
それ自体が主人公の自覚的悩みになってもよいし、
主人公の悩みの中にないのだが、客観的に不足しているものでも構わない。
それが、その不足ゆえに困難を生じる。
そこで、主人公は、それを学ぶリスクを犯し、
結果的に体得するのである。
そのため主人公にもたらされた変化が成長だ。

「金より友情」「親が大切」「戦争反対」「差別反対」
なんてよくある絶対的真実が、
映画のテーマになりえないのは、
この構造があるからだ。
そんなもん分かってるわ、というスタート地点になるからだ。

本気でこのよくある道徳的テーマを描くには、
本気でこの欠如を描き、
本気でこの欠如のある主人公に感情移入させ、
本気でこの欠如による冒険を描き、
本気でこれを学ぶリスクを犯させ、
本気でこれを学んで良かった、と思わせなければならない。
それは、かなり逆に難しい。

まだ、ここまで絶対的な真実ではない、
ひょっとしたら真実かも、と思わせること
(たとえば風魔の「人の心に暖かい風を吹かせる新しい形の忍びになること」)
の方が計算の範囲内だろう。


テーマを選ぶことは、
あなたの世の中への主張を決める事ではない。
あなたが書けそうなテーマを見つけることだ。
あなたが不足を描け、
あなたが学びを描けるようなことを、見つけることだ。

それは絶対的真実でなくともよい。
よくあるような、「人は見かけじゃなくて中身」とか、
「金よりやさしさ」とか「浮気はひどい」とかで構わない。
それが上手く描けていれば、
上手く学べたラストが描けていれば、
それはテーマを持った上手い物語になるのだ。


勿論、新しいもっともらしいテーマで書く、
という挑戦は大歓迎だ。

反社会的テーマが何故不快なのか、これで分かるだろう。
「人は殺せ」「犯罪万歳」「薬物乱用」などを学ぶ過程は、
なにも面白くない。
そのような欲望は、既に我々の中にあるからだ。
暗い欲望のない主人公が暗い欲望を学び、それが大事だと思われても、
それ知ってるし、となるからだ。

出来るなら、全く知らない、新しいテーマで書くとよい。

主人公は何を学ぶのか。
あなたの人生経験から、
誰も知らない新しい知恵を導き出せば、
それがテーマになりえる。
マイナーなことだが、これを広めるべきだ、
というのも新鮮なテーマになりえる。
(この意味で、「自分より強い奴を倒せ」というペプシ桃太郎は、
なんら新鮮味がない。ドラゴンボールやジャンプ漫画で死ぬほど見てる)

それがもっともらしく、面白く、共感できるように書ければ、
新しい名作が誕生する。
posted by おおおかとしひこ at 12:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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