2014年04月08日

「いい」には2つある

繰り返しになるが、
時間軸をもたない「いい」と、
時間軸をもつ「いい」である。


時間軸をもたない「いい」には、
見た目のよさ、デザイン、配色、
見た目の美しさ、恐ろしさ、
見ただけで魂を奪われる感じ、
造型、ファッション、音楽などがある。

これらは、
劇中曲(つくる音楽か既存を使うかで、
つくる部署と契約部署に別れるが、音楽部の仕事)、
ロケーション(ロケーションコーディネーターの仕事、
ロケーションにつくりこみを施す美術部の仕事もある)、
光や天気(照明部、撮影部、天気とスケジュールを調整する助監督の仕事)、
美術セット(美術部の仕事)、
衣装(衣装部の仕事)、
小道具(美術部の仕事)、
CG(CG部の仕事、及びデザイナーの仕事)
俳優の美しさ(俳優部とメイク部の仕事。ときにシワ消しなどのCG部の仕事も含む)、
などの要素で表現される。

これらのデザインなどを単純に世界観ということも多い。
監督はその総合を担当するので、
この世界観を持って監督の才能と誤解する人もいる。
(独特の絵面で人気を博す人も、いることはいる。
CM出身者に多い。岩井俊二、中嶋哲也などはそのトップだ。
僕はいっときクレラップで受けたけど、
あれ以外の仕事のほうが多い。風魔をクレラップ風でやったら怒られるし。笑)
監督のセンス、といった場合、
既に出来上がったこれらのスタッフィングを含むこともあるが、
別のスタッフで組み合わせるのもスタッフィングの醍醐味だ。
(既に出来上がったスタッフに、監督だけ放り込まれることもある。
「いけちゃん」のときはそうだった。
主題歌以外の音楽部とCG部と蒼井優のキャスティングのみ、
僕の希望が通った)

絵の中の「いい」が、
本当は誰の仕事なのかを見極めることは難しい。
ある映画のトーンが凄く好きで、
その監督を追っかけてもばらつきがあって、
実はカメラマンの仕事だったということもある。
衣装が凄く可愛いからそのスタイリストを追ったが、
実は監督のセンス、ということもある。

いずれにせよ、
これらの「いい」は、時間軸をもたない。
写真的要素とか、静止画的要素、と僕が呼ぶ所以だ。


時間軸をもつ「いい」は、
話の面白さ、展開の意外さ、引き込まれて夢中になる感じ、
笑いや感動などの心が動くこと、
オチやテーマのよさ、
台詞のよさ、演技のよさ、所作の美しさ、
などがある。

脚本部と監督と編集部と俳優部と撮影部の仕事だ。
美的センスも重要だが、それより頭を使う部署だ。

これをうまく表現する言葉が貧弱なことは既に書いた。
多分、名詞や形容詞という言葉自体が、
変化や流れを示すより、静止的なことを示すことが得意だからだ。


我々は脚本の面白さや良さについて、
沢山知らなければならない。
それには、アカデミー脚本賞や脚色賞作品を見るだけでなく、
これらの良さを、分離して見る目を養う必要がある。

相変わらず桃太郎記事のアクセスが伸びている。
かのCMがいいという人と、僕は友達になれない。
あれだけ見た目の「いい」しかないのは、
一種の美術工芸品だと思えばよいか。
それがパクリまくりではねえ。
元ネタを知らない人を騙すには、丁度いいのかも知れないが。
日本が海外に追いついたから凄いという人もいる。
いやいやいや、オリジナルを生み出すほうが凄いだろ。
金がかかって凄いというのなら分かるけど。


例えば人を好きになるには、ふたつのルートがある。
見た目を好きになるのと、
中身を好きになるのとだ。
ものすごくざっくりいうと、
写真ベースとテキストベースということか。
今の時代、前者が偏重されすぎていることに、
自覚的でない人が、多いと思う。
posted by おおおかとしひこ at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック