2014年04月09日

桃太郎続論

ドシロウト様、コメントありがとうございます。
(この記事は桃太郎の記事のコメントに答えています)
今時のちょいワルヒーローパターンですね。
あると思いますよ。
「正義に目覚める」という変化が、
話のポイントになりそうですね。



ただ、
「流浪の賞金稼ぎがどうやって正義に目覚めるか」
について、具体的な面白いドラマが必要です。
元々悪人が正義に目覚めるのか、
正義を信じられなくなった桃太郎が再び正義に目覚めるのか、
それによって話の骨格は変わりそうです。

また、正義に目覚めなくても、
鬼を倒すことは可能です。
悪党なんだけど憎めないパターンの役ですね。
(小栗旬では役不足かもなあ…。伊勢谷とかのほうが面白そうだ)
その場合、桃太郎の変化や成長がなんらかの面白いドラマになっていないと、
しんどいとは思います。
(その直感が、「正義に目覚める」を追加しているのでしょう)

いずれにせよ、
一番大事だとした桃太郎の最初の動機が、
単なる金稼ぎではちょっと弱いなあ。
冒頭15分ぐらいまではもつけど、
第一ターニングポイントで、
仲間集めの旅に出る、本格的な個人的理由が必要な気がします。
(「七人の侍」では、食い詰め者たち、という設定が斬新だったけど、
このパターンはもう使えない。となると、桃太郎個人のドラマが必要)



さて、この話は、
「自分より強い奴を倒せ」というテーマを表現出来るでしょうか。

残念ながら否かと。

「正義と遠い者が正義に目覚める話」、
というログラインは書けそうですが、
正義に目覚めることと、自分より強い奴を倒せ、は、
関係ないものです。
「正義を示すには、強い奴を倒すこと」ということは、
一般的な常識ではありません。
強い奴を倒さなくとも、正義は示せます。
(勿論、より強いほうが燃えるけど)

自分より強い奴(鬼)を倒そうとするのは、
最初は賞金、次は正義のため。
自分の命を正義のために差し出す勇気は、
どこから発生しているかを考える必要が出てきます。
そこが納得のいく、ありがちでない話がつくれれば、
この話はオリジナルになりそうです。
(そしてこれはよくあるパターンのため、結構な難題かと)
その勇気が、
「何故自分より強い奴を倒そうとするのか」に
答える形になっていないと、
感情移入およびテーマの、一本の線がつながらず、
とっちらかったものになってしまうでしょう。


実は、「自分より強い奴を倒せ」は、
映画のテーマとしては、非常に難しい題材です。

経験のある大人ほど、
負ける可能性がある戦いは挑みません。
命がかかるなら尚更です。
無謀だろそれ、という突っ込みをかわす、
命を落としても構わないだけの、
強い理由が必要なのです。(それが彼の動機)

強いヒーローが自分より弱い奴を倒すのは、
それは単なる仕事であり、限界値を越えることではないです。
限界値を越えて何かをしなければならない理由。
死の恐怖をこえる理由。
それこそが動機であり、感情移入の素なのです。


ちなみに、僕の書いたパターンでは、
放っておけば鬼以外の理由で村ごとなくなってしまう、
という締め切りが桃太郎の動機です。
嫁か親友は、多分殺されて個人的復讐の動機となるでしょう。
(※ 正義は関係ないです。個人、村人としての動機です)
クライマックスで、鬼側も桃太郎に協力しはじめる、
という構造を加味することで、
仲間を集めて巨大な敵を倒す、という話を成立させています。
テーマを示す三幕で、はじめてそのパーツが揃うように工夫してあります。


正義に目覚める、という話を創作してみてください。
何故桃太郎は、どうやって正義に目覚めるのか?
単なる復讐は正義といえない。
人助け?
何故今まで人助けをしなかった桃太郎が、
今回に限って人助けという正義に目覚める?
鬼の理不尽さに出会う?
何故今まで流浪の賞金稼ぎが出会ってきた理不尽では、
そうではなかった桃太郎が、
今回に限って理不尽さに怒る?

どんなパターンでもよいから、
どういう事件で、
今まで正義を否定(無視)していた桃太郎が、
正義に目覚め、俺が鬼退治をする、と言うかを考えてみてください。
そこのドラマが面白ければ、このパターンの物語はありえます。

(しかも、正義と、自分より強い奴を倒すことの、
二重のテーマをひとつに統合しなければならない。
例えば自分が戦いで命を落とす可能性について、
あなたの桃太郎はなんと答えるでしょう?
僕はプロの勘で、その難しい課題の答えを出せそうにないので、
その線はない、と考えてしまいます。
あくまで僕の経験値からの判断なので、
それを越える凄いのを期待します。
ちなみに、ビジュアルやテーマを変えるのは禁止です。
ガワだけつくって中味をつくらないことが、
いかに無責任かを実感してみてください)
posted by おおおかとしひこ at 22:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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