2014年04月10日

主人公とテーマとクライマックス

前記事「桃太郎続論」のことを、抽象化してまとめておく。
人間には表と裏がある。
裏にひた隠しにしてきたことが、
今回の事件に関係する。
その解決が、主人公のテーマだ。
誰もがはじめて対峙するときのような、初々しさが必要だ。
クライマックスは、そのテーマと関係する。


主人公のテーマに関することは、
とくにACT 1の前ふりと、
ACT 3の帰結で決まる。
勿論、途中でもそれに関する展開は必要だ。


テーマを欠損させたものが、
初期状態だ。
「自分より強い奴を倒せ」がテーマだとすれば、
自分より強い奴に会ったことがない(だから恐怖する)、
自分より弱い奴を倒すのに喜びを感じている、
あたりしか、論理的に考えられない。

自分の欠点、欠損に自覚的であろうとなかろうと、
この問題点を克服する旅に出る、
と第一ターニングポイントで本人が決める必要がある。
問題点を克服するのには、
リスクを乗り越えなけらばならない。
その危険を犯す理由が、主人公の動機だ。

僕のつくった例では、
今まで自分より強い者に会ったことがない、
と桃太郎を設定している(村一番の怪力)。
動機は村のとりつぶしを救うこと、だが、
その前後に自分より強い鬼と出会っている。
恐怖、生まれて初めての恐怖である。
それでもなお、村のために鬼退治へでかける。
個人的復讐を入れるかどうかはスパイスだ。

桃太郎は旅の過程で、
「協力すれば、自分より強い奴を倒すことができる」、
というテーマを学ぶ筈だ。

つまり、「自分より強い奴を倒せ」という命令形を、
可能形にする条件を描いている。
僕はテーマとは、「証明可能な命題」の形、
テーゼのようなもので書くべきだとかつて書いた。
それに従えば、「自分より強い奴を倒せ」を、倒せる、
という形に変形する必要がある。
「自分より強い奴は、倒せる」ではあんまりなので、
その条件をつけてみたのだ。

強い弱いを、個人の基準ではなく、
群れの力と考えられるようになるのが、
桃太郎の人としての学び、成長として、描くことが可能だ。


このように、
主人公の欠損と、テーマと、クライマックスは、
論理的関係にある。
ひとつが決まれば、
あとはこれしかあり得ないのである。
(それをうまく表現する、面白い面白くないといった、
ドラマの優劣はある)
そのように、自然になるように、
テーマ、主人公、クライマックスを決めるべきだ。

今回の例では、
テーマが先に決められている
(しかも物語に利用しにくい形で)のが痛い。

主人公のキャラクターは、
テーマに沿うべきで、テーマでないものは不必要だ。
(多少の遊びはあってもいい)
「ドシロウト」さんの賞金稼ぎワル桃太郎というキャラ設定は、
いわゆる正義の味方の逆からの発想で、
それ自体は面白いが、
ワルと正義の軸を持ってしまったことが、
テーマの軸と一致していないところが欠点だ。
だから僕は、直感的に、性格は変化しない、
正義にも目覚めないパターンを三番目に提示している。
この軸でやるべきだろう。

つまり、テーマと関連しない、遊びの性格設定の部分しか、
まだ出来ていないことになる。
これは極端に言えば、執筆直前に考えればいいレベルの工程、
つまり表面的な部分である。



ラノベやゲームの、
キャラ設定というのが僕は嫌いだ。
設定をつくれば出来た気分になっているのが嫌いだ。
性格や過去の設定は、
プロットに必要かどうかで逆算で決めるものであり、
アイドルグループの編成を考えることではない。
まずプロットだ。
背骨になる、主人公、テーマ、クライマックス、
その他のサブプロットだ。動機と行動の連鎖である。
そこまで矛盾なくできて、
はじめて性格や過去をつくっていけばよい。
キャラ設定は肉付けにすぎず、骨ではない。

人間を描くのは、どうであるか(be)、
ではなく、どうするか(do)、である。
それには、する前とした後がある。
何故それをするかがある。
したあとどうなったかがある。
その一連が面白いのが、背骨がしっかりした面白さである。


勿論、僕の解は一意解ではなく、
別解がない証明はない。
前記事でも書いたように、正義に目覚めるドラマが、
いつしか自分より強い奴を倒せに窯変するドラマを、
書けるかも知れない。
創作は数学ではないから、
ないと思ったところに鉱脈があることもある。
posted by おおおかとしひこ at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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