第一ターニングポイント、
第二ターニングポイント、
クライマックスにおいて。
第一ターニングポイントで言い出しっぺになることについては、
既に書いた。
主人公には、意識するしないに関わらず、
内的動機が横たわっている。
そこに異物と出会うことがきっかけで、
日常が非日常状態になる。
この平衡の回復が主たる目的になるのだが、
主人公は、それを解決することが、
内的動機を実現するチャンスでもあることに気づいている。
(無自覚でもよい)
だから、リスクを犯してでも冒険の旅を選択する。
(第一ターニングポイント)
最初の選択は、
このまま初期状態のままでいることを良しとするか、
変えるチャンスを選ぶか、
という選択だ。
「マトリックス」が分かりやすい。
赤と青の薬を、文字通り選択する。
現実は夢ではないか?と違和感を抱えた日常に戻るのか、
今身の回りで起きている異常な出来事(夢かも知れない)の、
説明が全てできる、真実を知るかだ。
リスクは当然ある。こわい。
しかし、それを補ってあまりある、自分の動機があるようにする。
このふたつがそろわないと、第一ターニングポイントは詰まらない。
さて、第一ターニングポイントで言い出しっぺになったからには、
主人公は責任をもつ。途中で逃げ出せないのだ。
冒険をやめるチャンスはない。
ないように、次々に危険が起こるように、ACT 2ではするものだ。
なんといっても、危険なるスペシャルワールド側に来てしまったのだ。
いつ命(社会的生命でもよい)を失っても、おかしくないのだ。
主人公には、危険度の差はあれ、
次々に問題が舞い込むはずだ。
それを、知恵や勇気や仲間の力で、ひとつひとつ乗り切るのが冒険というものだ。
(そして映画のお楽しみポイントは、この部分である)
一度だけ、
主人公には冒険をやめるチャンスが来る。
第二ターニングポイントの手前が多い。
ここまでやったんだから、
成果を得られず、元の(嫌な)日常に戻っても構わないのでは、
また耐えるだけでいいし、俺が我慢すれば八方まるくおさまるし、
というポイントだ。
しかし、それをあきらめては、これまでの冒険に意味がなくなる。
関門はあとひとつなのだ。
これさえ乗りきれば、ゴールなのだ。
しかし、一番リスクがあるのだ。
クイズミリオネアの、最後の問題がまさにこれだ。
勝てばこれまで以上のとんでもない賞金(倍どころではない)、
負ければ0。
やめればこれまでの、ラストの賞金に比べればたいしたことない勝利。
一度だけ、チャンスが訪れる。
やめますか?続けますか?
この選択を断る主人公はいない。
盛り上がりの空気を読んでいる訳ではない。
クイズミリオネア以上に、
ここで辞めたら、0以下になってしまうからだ。
たいていここで、自分はなんのためにこの冒険をはじめたのか、
という初心を確認したりする。
内的動機の再確認だ。
それを果たす為に、主人公は選択をする。
最後の関門に挑むことに。
これが第二ターニングポイントだ。
逃げる/逃げないの選択肢は、
主人公にはある。選択をすればいい。
これを、「逃げないを選ぶ」ことが、
話が面白くなるように、リスクやリターンや状況を組むのだ。
勿論、小さな選択は沢山する。
何を話すかも選択だし、何をするか、しないかも選択だ。
どこへいくか決めたり、誰と会うかも選択だ。
頼んだり、頼まれたり、断ったりも選択だ。
小さな選択の連続が人生だ。
オープニングから始まっている主人公の人生は、
人生の小さな選択を積み重ねて、進行する。
選択していると自覚しない場合もあるし、
選択肢が全て示されない場合もあるし、
選択のリスクやリターンが明示されない場合もある。
それらが少なくとも全て明解なのが、
第一ターニングポイントと、第二ターニングポイントなのだ。
最後の大きな選択は、
クライマックスもしくはラスト近辺だ。
この選択は、テーマに関係する選択に、自動的になる。
この主人公の選択自体がテーマであるように、
あるいはテーマに繋がるように、描くとよい。
この選択をするには、
主人公は成長していなければならないからだ。
冒険をはじめる前では、とてもでないが選択出来ないほうの選択肢を、
主人公は選択する筈だ。
欠損や渇きや、足りないことや何かを学んだから、
正しいほうの選択肢を、主人公は選べるのだ。
「千と千尋の神隠し」における、
ラストの選択は、ちっともテーマに絡んでこない。
あの冒険で千尋が何を学んだか、
そもそも千尋には家族はどういう意味だったか、
それは思春期特有の何かだったか、
まるで関係がないのだ。
たとえば恋というものを知り、家族でない他者の存在に触れることで、
今まで絶対的で嫌だった存在の両親を、
普通の人間として見れるようになる、
という思春期特有のテーマであるのなら、
その話も意味があるのだが、
どうやらそのようにはなっていない。
あの映画を観たあとの、まあまあ面白かったけど、
あれって何だったの?という残尿感は、
大きなみっつの選択を、主人公がしていないことによると考えられる。
もし、あなたの物語において、
このみっつの選択が発想から抜け落ちているのなら、
それは残尿感の危険がある。
この選択肢だけで物語を抽出し、
そこから再構築するのは、おすすめの方法だ。
逆に言うと、映画では、選択肢を出される場面と、
主人公の選択は決まっている。
第一ターニングポイント:
A 冒険のリスクは犯さず、嫌な日常に戻る
B ハイリスクハイリターン、それは内的動機の実現の可能性
→必ずBを選ぶ
第二ターニングポイント:
A ここでやめて、日常に戻る。元の日常以下だけど、我慢すればいい
B 最大の障壁、必ず勝てる保証はない
→必ずBを選ぶ
クライマックス:
A 最初の状態だったら選ぶかも知れない選択
B 冒険した経験をふまえた選択
→必ずBを選ぶ
これが、無理がなく、合理的で、しかも感情を揺さぶられ、
納得がいき、感動するように書くのが、我々の仕事なのだ。
2014年04月20日
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