つづきです。
テーマとタイトルの関係です。
タイトルはテーマを表し、なおかつネタバレを避け、
なおかつキャッチーでなければなりません。
「流れ星の侍」は、キャッチーですが、
ここから想像されることと、内容はあっていません。
(流れ星○○、というトラック野郎にもあったこのヒーローネームは、
風のように去ってゆくとか、どこにでもあっという間に現れるとか、
そういう意味合いの枕詞。
となると、次郎丸はカッコよく現れ、カッコよく去ることが必要)
たとえば、ラストに、俺にとっての流れ星とは、○○じゃ、
と結論をつけてタイトルにひっかける訳でもありません。
流れ星はきっかけにすぎない、二度と物語内で使われない。
まだ、「河童と侍」のほうが内容を表して、ある程度キャッチー。
でも、そもそもこの話って、何がテーマなんだっけ?
というところに、話はまたも戻って来るのです。
さて、前回までの議論で、修正したログラインをあらためて見てみます。
「落ちぶれた浪人が、助けた河童と(賞金つきの)山賊を倒す」話
でした。
ここから想像されるテーマは、
「落ちぶれた浪人が山賊退治のチャンスをつかむこと」、
「河童との旅によって、落ちぶれた原因を取り除き、再び自信を取り戻すこと」、
などが考えられます。
(まだ具体的なストーリーラインは、この状態では考えていません)
どう考えても「流れ星の侍」ではないでしょう。
(逆に、「流れ星の侍」から想像されるテーマで、
話をリライトする手もありますが、どちらが大変かというだけです)
さて、落ちぶれたことや自信回復の象徴に使えそうなものが、
本編にはありました。
「錆びて抜けない刀」です。
落ちぶれて自信をなくし、唯一の魂のよりどころとすら思っていた刀が抜けない。
そこまでオレは落ちぶれたのか、という象徴、
それが抜けたことが、侍としての自分の自信を象徴できそうです。
(フロイト的に分析するまでもなく、これはちんこのことです)
ということで、
「抜けない侍」とでも、仮にしてみます。
うーむ、河童のキャッチーさも欲しいな。
「河童と抜けない侍(仮)」としてみましょう。
仮タイトルなんてこれぐらいでよいです。
本質優先にすべきです。
書き終わってから考えればよいのです。
さて、テーマに戻りましょう。
自信喪失の原因はなにか。
太平の世になり、人斬りの技術は不要になったこと、
ととりあえず説明されています。(となると設定は徳川幕府初期か)
それが、職人になること、という新しい生き方を見つけた、
という話に成長させることが、
第一稿には埋まっていました。
これを丁寧に掘り起こしていくことにします。
象徴表現で使えるのは、
「刀を捨て、時計をはめる」でしょう。
これによって、次郎丸はあらたな自分へと生まれ変わることになります。
何きっかけで?
山賊退治と、河童の父を救うことで。
抜けない刀が、偶然か必然か、山賊の前では抜けることになります。
これで大立ち回りをすることになるでしょう。
しかし山賊退治をしても、刀には意味がない、これからは時計なのだ、
と思うドラマが必要です。
河童とのドラマで、それをしなければなりません。
何故なら、河童が時計をくれるからです。
「時刻を知る」ということは、
江戸時代には、日時計や腹時計、寺の鐘しかありませんでした。
これが人の生活に革命を起こす、といういい面を描き、
それは人斬りの世よりいいことなのだ、
と次郎丸が思わない限り、刀から時計への転向はしないでしょう。
でも時計は管理社会の象徴だから、
あまりよくなさそうです。
なので、「技術」と読み変えてみます。
中の精巧さにおどろき、これが一体どうやって動いているのだ、
と感心を持つことは誰にでもあります。
刀の精妙な使い方にも相通ずるところはあるから、
「人の手による細かい結晶」に興味をもつことは不自然ではない。
とすると、「技術は世に連れ、変わりうる」と次郎丸が思いなおすことは、
次郎丸の内面として、ありえそうな気がします。
さて、そんなものを何故河童は授けるのか。
「宇宙船へ連れてくれたことへの報酬」という意味だけど、
なんとなく、「友情の証」も含んだほうがドラマチックな気がします。
逆から入る発想をします。
「刀と時計を交換」という等価交換的なことを河童が提案する、
という入口から入るのはどうでしょうか。
(逆の立場から、「迎えに行く」と業界ではいいます)
刀という武士の魂を譲る訳にはいかん、と次郎丸は反発し、
宇宙船のところへ連れていく報酬とする、という契約を結ぶ、のようにする。
河童が何故刀が欲しいかを考える。
たとえば河童の星では、鉄が不足していて、良い鉄の作り方を知りたいのだ、
ということにして、鉄サンプルとして日本刀が欲しい、と設定してみます。
そうすれば、「日本刀をよこせ、代わりにこれをやる」
と時計を次郎丸に見せることが出来ます。
なんだこれは、見たことがないぞ、と次郎丸はリアクションできます。
中をパカッとあけ、さらに次郎丸はおどろく。
これは生命体か? いや、人の技術でつくれるものなのだ、と河童がいい、
次郎丸は興味を持つのです。
武士の魂である刀を渡す訳にはいかん、
宇宙船まで無事に届けるから、それをくれ、と二人の契約が成立する。
しかし最後、刀を抜き山賊を退治した次郎丸は、
時計をもらい、刀はくれてやる、と河童にあげるのです。
これで友情の証ラインも描けそうです。
次郎丸と河童の珍道中(ACT 2)を、どう描くかはもう少し考えるにしても、
以下のような大枠ができてきました。
タイトル「河童と抜けない侍(仮)」
ログライン「落ちぶれた浪人が、助けた河童と(賞金つきの)山賊を倒す」話
ストーリーはこんな感じかな。
ACT 1
博打ばかりし、侍の魂を忘れかけた次郎丸。
(太平の世に自分の居場所も、士官の道もない。
この説明はここでするかあとでするか)
流れ星を見る。山に墜落。金目のものかも、と追う。
道行く途中で、河童に出会う。流れ星の落ちたところへ連れて行けと。
助ける次郎丸。河童は不思議な力で怪我を治す。おどろく次郎丸。
と、最悪の山賊、先手組が馬にのって山の方へ。
あきらめようと次郎丸。俺はあれにのって故郷へ帰らなければと河童。
「俺の居場所に帰りたい」という河童に、
居場所のない侍である次郎丸は感情移入し、
人助け兼、賞金首の山賊退治を思いつく。
馬でいけないような、近道を選ぶ次郎丸。
ACT 2
河童と次郎丸の珍道中。
途中、山賊の配下に襲われる。
ようやく刀の使い道が出来た、と刀を抜くが、錆びついて抜けない。
なので、鞘ごと闘い、退治。
河童は、敵の日本刀を拾い集める。
何をしているのかと聞くと、
河童は、良質の鉄を求めてこの星に来たのだという。
ここで河童の事情。
先に偵察部隊として来たのだが、遭難したので、俺を救うために父が来たのだと。
その刀は錆びてていらない、とバカにする河童。
何を言うか、伝家の宝刀、そのへんのなまくらよりよほどいい南部鉄を使っておるわと。
ではこの時計と交換ならよいかと。
その精巧な技術に驚く次郎丸。
しかし刀はやれぬと事情を説明、無事おまえを届けるからそれをくれないかと。
次郎丸の事情。
太平の世に、居場所を失っていたこと。
河童は、技術で生きてゆけば良い、俺の父も技術者だと言う。
職人になるということかと。バカなと笑う次郎丸。
そこへ山賊2。さらに多勢。刀は抜けない。
河童がさらわれる。
宇宙船にたどりついた次郎丸。藪の中から観察。
河童の親子と宇宙船がしばられている。
山賊たちは思ったより多く、一人でいけるわけがない。
と、河童と目が合う。首を振って、来なくていいと河童。
山賊が刀を抜き、河童を殺そうとする。
次郎丸は、思わず躍り出る。
ACT 3
相変わらず刀が抜けないまま闘う次郎丸。
しかし鞘で殴ることが、人を殺していないことに気づく。
残るはボス。鞘が叩き壊され、刀身が露出。
太刀一閃、ボスの首を取る。
降伏する山賊たち。河童たちを解放。
時計を貰う次郎丸。刀を河童にあげる次郎丸。
これからは、刀はいらないかも知れない。と。
賞金首を倒したことで、仕官する道を与えられた次郎丸。
腰に下げる刀は、実は竹光だ。
そのかわり、左手に時計をはめている。
「ねじまき侍」と、人はよんだという。
剣もふらず、ねじまきばかり研究したそうな。
のちの、平賀源内である。
なんてのはいかがでしょう。
タイトルは「ねじまき侍」に自動的になることになります。
平賀源内オチは、もうひと押しいるかな、と思って足してみました。
時代が江戸初期ではなく、後期になるし、
たぶん平賀源内の生涯とは違うだろうけど。
結局テーマは、
「居場所を、刀(人斬り)から時計(技術、職人)に見出す」
ということになります。
しかし、15分で書けるかな。中盤が物足りるかな。
これを、脚本に書いてみましょう。
つづきます。
2014年04月24日
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