つづきです。
ここで書き始めると、プロットを追うだけの脚本になります。
映画というのは、一にも二にも、人間です。
人間の魅力を描くのです。
人間とは、どうであったかより、
何をしたかで決まります。
そのbeではないdoに関しては、大体プロットに納めました。
キャラを立てるというのは、beを決めることです。
キャラ立ちで一番簡単かつ効果的なのは、
口癖や身体的特徴です。
小学生でも分かるレベル、というべきか。
その点、次郎丸と河童のコンビは、
コンビとしてキャラ立ちしています。
でくのぼうの侍と、チビで生意気で口のたつ子供。
身体的にも、性格的にも、はっきりとコントラストをつくっています。
もう一歩足すとしたら、
持ちギャグでしょうか。
ギャグとは言わないまでも、口癖でもいいかもです。
思いつきで、
河童は常に口を尖らせて、
「むきゅう」と鳴くのが口癖だとしましょう。
別れたあとのラストシーン、
次郎丸が独り言で「むきゅう」と言ってみて、
「いかんいかん、奴の口癖がうつったわ」と言うことで、
そのキャラを利用した、なんともいえない、
二度と会えないのだけど心が繋がった、
二人の絆を描くことが可能になります。
こういうちょっとした工夫が、
プロットに対して効くディテールとなってゆくのです。
ディテールから入ると、
プロットを変更するのに勇気がいります。
せっかく気に入ったディテールを壊すからです。
命はディテールに宿ります。
ディテールを壊すことは、命を奪うこと。
だから、脚本の初期段階では、
ディテールを細かく決めないほうがいいです。
例えば、元の原稿の、
宇宙船が飛び立とうとするのだが鎖で繋がれている、
という絵や、
それを断ち切り「いけえええ」と言うあたりは、
かなりディテールの絵が浮かぶものです。
これはこの脚本のいい面でもあり、弱点にもなります。
きっとほらさんが何度リライトしたとしても、
この場面だけは変更しないでしょう。
ディテールの神が既に宿っているからです。
これを殺すことは、自分の信条を曲げる痛みを伴います。
僕はあえてこの場面を採用しませんでした。
このディテールに影響されず、
自由にリライトを行うためです。
最終的に使えれば使おうと思っていましたが、
どうやらねじまき侍には使えなさそうです。
ねじまき侍のビッグシーンは、
宇宙船の鎖を断ち切る場面ではなく、
初めて露出した伝家の宝刀で、山賊をなますのように斬る場面です。
さて、他のキャラ立ちも考えておきましょう。
山賊のボスは、いかにも悪党にしましょう。
冷酷非道、残虐陰険、乱暴横暴、とにかく殺されても文句の言えないタイプが最適。
役者が演じるのが楽しくなるくらい、
典型的な悪玉にしてやりましょう。
あと、特筆すべきキャラがいました。
立ちはだかる山賊の中にいた、
元侍です。
次郎丸が知った顔と表現した男です。
オイシイキャラなので、
ここでもキャラを立てましょう。
山賊たちの無法な刀の構えかたに対して、
正眼にかまえた正統派の剣術を使っている、
というのはどうでしょう。
まだ山賊になりきれていないのを、身体で表すのです。
せっかくなので、次郎丸がそれに気づき、
山賊に身をやつしても、構えは侍か、と聞くのはどうか。
人を斬るのに、侍も山賊もない!と彼は答え、
山賊と同じ理由で侍は人を斬らぬ、と、次郎丸の侍観を炙り出させるのです。
お話とは、コンフリクトのことです。
コンフリクトというと難しいけど、
相手役がいる、と考えると分かりやすいです。
この場合、次郎丸の相手役は、元侍の山賊。
元の原稿ではエキストラ扱いでした。
第一稿ではこうなりがちです。
主役を描くことで精一杯で、その他は背景扱いになりがち。
しかし、「相手役との絡み」としてお話をとらえると、
相手役と主役との、落差や差異やコントラストを描くことが必要だ、
と分かって来るでしょう。
たとえワンシーンであっても、
この対比は印象的なワンシーンとなるでしょう。
キャラを立てる、とはそういうことです。
「剣が抜けず鞘で闘う」だけの場面に、
重層的な魅力を足して行くのです。
プロットが、骨組みや内蔵だとすると、
キャラ立ちや人間的魅力は、
皮や表情や服に当たる部分です。
骨格見本で映画は完成ではありません。
その先のフィニッシュには、ガワの魅力もあるものです。
僕はガワの悪口を言っている印象がありますが、
ガワを否定してはいないです。
問題は、ガワだけで中身がないことです。
同じ中身なら、ガワも魅力的であるべきです。
(そして、それを区別できない一般人には、
次郎丸の芝居が良かった、と言われることでしょう。残念ながら)
さて、では、そろそろ書きはじめてみますか。
つづきます。
(執筆の時間を考えて、土日をまたぐことが予測されます)
2014年04月25日
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