さて、かくして出来上がった作品を、
引いた目で見てみましょう。
どこで流れる作品になるでしょうか。
「世にも奇妙な物語」の枠ですかね。
若手を集めたオムニバス系映画の一本ですかね。
では、これに制作費はいくらかかるか、見積もって見ましょう。
実は、この作品は三重苦です。
時代劇、
SFX、
夜間撮影、
で。
時代劇でお金がかかるのは、想像がつくでしょう。
衣装、小道具、そしてちょんまげ(床山、という特別なスタッフ)。
都会(つまりスタッフの会社から日帰りで行ける場所)ではなく、
人工物の少ない田舎ロケですから、
泊まりの費用も発生します。
お城のロケもあります。
街をつくるには、ぱっと見た目にあるものを、
全てつくらなければいけないことになります。
なるべくそれを避けるために、江戸の街は全景だけにして、
これはCGでひとつあればいいようにはしておきましたが。
時代劇の華、殺陣と馬も、多少のお金がかかります。
でもここは譲っちゃあいけないところ。
特撮もお金のかかるもののひとつです。
河童のビジュアルが、一番手間暇がかかりそう。
緑に塗るか塗らないかが、キモになります。
塗るとなると、特殊メイクに二時間。
毎日、河童の撮影時間は常に二時間失った状態からスタートになります。
(実労働時間8時間とすると、6時間しか河童を使えない)
それでも撮りきれる量で、撮影スケジュールを組む必要があります。
塗らない場合でも、塗る場合でも、
甲羅や、服やアイテムを、オリジナルでつくるか、
あるものを使い回す(何かを緑に塗るとか)かで、
お値段も変わってきます。
ちゃんとつくれば高く、しょぼくつくればしょぼいです。
宇宙船の実物をつくるかどうか、
CGでやるかどうかも考えなくては。
(元原稿だと乗り込むところは実物でつくらないと無理、
鎖など、絡みも沢山あります。
最新版だと絡みをなくしたのでフルCGでOK)
夜間撮影は、昼間撮影の3倍手間がかかります。
照明を一からつくるからです。
セット内撮影ではないため、
雨風対策など、キャンプ仕様で出向かねば。
3倍手間がかかるということは、
撮るスピードは1/3になるということ。
スケジュールは3倍に膨らむということ。
じゃあ3倍の値段がかかるということ。
じゃあ撮るカットを減らされるということ。
15分尺とはいえ、3000万で出来るかなあ。
もうちょいかかるかもですね。
大抵の低予算番組は、
昼間の日常を舞台にした、ストレート芝居でどうにかなる範囲で、
物語を描こうとします。
それは、志が低いのではなく、
500万とかの予算しかないからです。
「世にも奇妙な」枠だとすると、そのクラスを平均的にならべて、
ラストの一本だけ派手に予算を使う、スペシャル版のイメージです。
となると、多くの人が注目するような、
有名キャストを呼ばなくてはなりません。
次郎丸とボスは、最低でも有名人です。
と、そのギャラもかさんで、全体予算は4000から5000。
なかなかの規模です。
(低予算映画が1億というのを考えると、15分でそれかあ…)
となると、脚本に文句を言う人が、30人はいるでしょう。
ここから、完成まで、その苦難を乗り越えていく必要があります。
勿論、書くときに、そんなことを考えてびびってはいけません。
若いときは、マックス面白いことを書くべきです。
そして自分のフルスロットルが十分大きくなってから、
現実に作れそうな作品を書くのです。
そして世に出たら、いつかフルスロットルを書けばよいのです。
その時に縮こまって錆び付いていては話にならない。
だから、常にフルスロットルを出す練習はしておくべきです。
作品を書き終え、冷静になってきたら、
この作品はどこでどのように流れるのだろう、
と想像するのはよいことです。
どんな人に特に受けるのだろうか。
万人か、特殊な層か。
若者は。オッサンおばさんは。高校生は。子供は。老人は。
どんな深さでささるだろう。
5分後には忘れてる程度か。
明日になったら忘れてる程度か。
昨日見た?と誰かと話せる程度か。
もう一度見たい程度か。再放送があれば見るか。
あるいは、しばらくその余韻に浸りたいぐらいか。
(流星はこのレベルではないが、ねじまきはこのレベルです)
あるいは、一生を変えるレベルの名作か。
すべての人に楽しまれ、
多くの人の心に残り、多くの人の一生に影響を与えるのが、
優れた文学というものです。
その理想に対して、あなたはどこまで迫れたかを、
冷静に判断するべきです。
友人の批評も大事です。
自分で気づかなかった点を指摘され、驚くことも多いでしょう。
しかし、プロの批評家ではないので、
それが妥当な批評とは限りません。
あなたが、一番正確に、あなたの作品を批評する必要があります。
誉めちぎる批評はありません。
卑下しすぎる必要もありません。
他の名作と比べて、どれくらいの位置にいるかが、
正確にとらえられるといいです。
だから、名作は見るべきなのです。
沢山の駄作も見るべきです。
その群れの中で、自分の作品はどこにいるかを体感するのです。
あれよりは全然面白くて、あれには叶わない、
ぐらいが分かれば、それでよいでしょう。
そして、次回は「あれ」を越えるものを書くのです。
正直、脚本添削をすると言ったものの、
応募がある可能性は低いかなと思っていました。
このブログは、毎日200人以上、500から1000のアクセスがあるブログです。
毎日見る人がそんなにいるとも思えないし、一見さんもいるでしょう。
でも、記事をアップすると、
その日中に見る人が12人くらい、2、3日中にさらに15人くらい、
つまり、30人くらいはレギュラー読者がいることが、
アクセス解析で分かっています。
そこまで読むからには、きっと書くことを目指す人達なのでしょう。
ほらさんは、それらの中で、突出した才能があったのです。
「最後まで書くこと」。
一度これを成し遂げたら、次回こそもっといいものを書きたい、
と思うのは、人間の性です。
自分の作品が未熟で、悔しい思いをしたり、恥ずかしい思いをすることも、
それは、書いた者だけの特権なのです。
代表作は次回作、というチャップリンの思いを、ほらさんは、もう味わうことが出来るのです。
次はもっといいのをつくってみせるぞ、と。
それは、書いた者だけの特権なのです。
僕は本気出しました。
もっといいものに添削出来る、凄い才能の人が世の中にいるかも知れません。
流星の侍は、もっといいものに化けるかも知れません。
僕とて、道半ばの者。
そうやって、皆が高みに登ろうとしているのが、
脚本家たちの世界だと、僕は勝手に思っています。
ほらさん、これにめげず、更なる面白い、次回作を書いてください。
そして反省し、それ以上の作品を書いてください。
その正のループに入る第一歩は、もう踏み出したのですから。
読者の皆さんも、これに刺激を受けて、
色々なお話を書いてみてください。
書き方や注意すべきこと、その基礎理論は、
このブログに、大体書いてあります。
では、長々とやってきた、一周年記念、脚本添削スペシャル、
これにて終了です。
脚本は、頭を非常に使う行為だということが、
読んでいるだけでも伝わるかと思います。お腹すくよね。
以下、通常運転に戻ります。
2014年04月26日
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