「面白さとは何?」というようなキーワードで、
本ブログにたどり着いた人がいるようだ。
面白いテーマなので、食いついてみる。
僕は、「異常であること」だと思う。
異常を描くには、正常がなにかを、知っていなくてはならない。
「学校で銃を乱射する」が正常である世界では、これは異常ではない。
(たとえばSWATの話などでは、これは想定される事件の範囲だろう)
普段我々が生きている、平和な日本という世界が正常範囲なら、
これは異常だ。
つまり、異常とは、正常との対比で決まる。
死体を繋ぎあわされて誕生した醜い人造人間(フランケンシュタイン)は、
我々の日常では十分異常だが、
「怪物くん」やフリークスの世界では、単なる一キャラでしかないだろう。
異常な性質を持つ宇宙人は、我々のクラスに転校生として来れば異常だが、
その星の沢山の一人であれば、異常ではない。
(むしろ地球人である主人公が異常者扱いされる。
そのような逆転により相対的視点を提供することは、SFの基本である)
助走なしに5mの高さにジャンプ出来る人は、オリンピックの世界でも異常だが、
「スト2」では普通である。
むしろこの世界では、垂直飛び1m以下のほうが異常かも知れない。
異常を生かすには、正常を描くことだ。
「正常の中の異常」を、意識することである。
さて、異常が現れると、面白くなる。
正常の世界は、我々の日常と同じで、なんら面白くないからだ。
毎日毎日同じ日がつづき、良くもなければ悪くもならない。
(悪くなる一方の場合もある)
その退屈を、異常が変えてくれそうだからだ。
「アンタ面白いね。こりゃあ先が楽しみだ」
なんてセリフは、程度はどうあれ、どの物語の人物も吐くだろう。
つまらない日常にステキな転校生がやってきて恋の予感、
という定番も、異常が正常の中に放り込まれたからだ。
異常は、異常ゆえに、
人気と、忌避の両方の反応が正常からは下される。
そして次第に排斥へと向かう。正常世界の維持である。
この「動き」が物語の、大きな原動力になってゆく。
異常が主役の場合、
その異常が、訳も分らない異常なら、なんの感情移入も出来ない。
ところが、「そこは僕らと同じなのだ」という所に気づくと、
途端に感情移入が出来るようになる。
「フランケンシュタインが優しい心を持つ」のは、その典型だ。
醜い異常怪物でも、繊細な心を持つことが、感情移入のきっかけになるのだ。
思えば、人を好きになるのもこれに似ている。
退屈な日常に現れたニューカマーは、異常である。
そこに、自分と似たところ、理解できるところがあると、その人を好きになる。
そして、そもそも異常なので、正常ではない異常能力がある。
それが憧れの対象になるのである。
異常は、正常との対比で表現される。
その落差が、面白さだ。
異常の中に感情移入要素を見つけ、
異常側に踏み出すこと(スペシャルワールドへの侵入)が、
つまらない正常を、ぶち壊してくれそうな期待がある。
その期待感が、面白さの正体であると、僕は考える。
藤子不二雄の作品は、必ず異常者が日常に現れる。
未来から来た猫型ロボット、大食らいのお化け、忍者、怪物ランドのプリンス、
などなど。
恋は、身近な慣れ親しんだ世界ではなく、
必ず「他の世界の人」へのあこがれからはじまる。
異常とまでいかないにせよ、物語のはじまりは、日常世界と違和感のあることからはじまる。
よくある物語の導入は、使者(ヘラルド)が来ることだ(依頼も含む)。
別の世界から、いつもの正常ではない異常事態が持ち込まれるのだ。
キャラの面白さは、他にはない要素(すなわち異常)である。
遊園地とは、重力や慣性などを異常化した乗り物で楽しむ。
(あるいは日常を離れた異常な世界観で楽しむ)
舞台は非日常。時代劇や中世物語は、それだけで非日常。
そもそも、映画とは、日常世界でない、異常事態について描く。
映画の玄人が楽しみにする映画は、よくある異常ではない、
滅多にない異常である。よくある異常は、先が読めてつまらない。
正常世界(テーゼ)と異常世界(アンチテーゼ)のアウフヘーベンが結論(ジンテーゼ)だ、
というのが、そもそもの古典的物語論である。
「異常」は、物語の数だけあるだろう。
超能力、怪物、幽霊、宇宙人、機械、特殊能力、殺人、異常性格、心が病むこと、
ビジュアル、世の中に見ない関係、持ちもの、キチガイじみた信条、大事件、
などなどなど。
中二病とは、この異常に興味を持つこと、と言ってもよい。
それは、正常世界を抜け出して別の地平に興味を持つ、冒険者や探求者としての、
人類のDNAがそうさせるのかも知れない。
中二病は、自立への過程のひとつだと僕は思っている。
物語は、異常の端緒である、異物からはじまる。
僕の異物論(詳しくはトップの脚本論の中のインデックスからたどって下さい)
は、そう主張しているのである。
面白さとは、異常さのことだ。
逆に、常識的ではみ出さないものは、面白くない。(最近のCMみたいに)
面白さとは、本来、
良識ある大人が眉をひそめるような、異常から出てくるものである。
2014年04月28日
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漫画家志望の22歳、あやかと申します。
「面白さとは何か」の検索ワードでこちらのブログにたどり着いたのはたぶん私です。
びっくりしつつ拝見しました。長く私の中にある疑問といいますか、埋まらない物がぴったりとはまりました。
偶然の縁ですが、もやっとしたものが晴れて嬉しかったです。
またの偶然の縁を願って、大きく成長して見つけてもらえるように頑張ります。
読んで頂いて光栄です。
僕も高2まで漫画家を目指してたので、羨ましいです。
「出来るだけ連載を長く続ける」漫画と、
「決められた尺の中に物語を整える」映画では、
作劇の仕方に差があると思いますが、
何かの参考になると幸いです。
面白い漫画をかきつづけてください。