2014年05月30日

百聞は一見に如かず

ぐだぐだ説明するぐらいなら、
絵を一発見せたほうが、
よっぽど説得力があり、話が伝わる。

だから絵は強い。
一瞬見せる表情、モノに託した象徴表現、
シチュエーションの面白さをワンカットで示したもの
(ストーリーのイコン)、
美しい風景、すごいアクション、
などは、「絵の力」だ。

普段絵の力に頼ることを批判しているが、
それは、絵だけになってしまい、話が疎かになることへの警鐘だ。
話が充実してきて、初めて絵の出番なのだ。
絵のつくりかたについて、いくつか経験則をのべる。


お金をかけると、絵の力を増すことが出来る。

世界の絶景、凄いアクション、凄いセット、凄いロケ、
凄いマシン、凄いCGや特撮、豪華キャスト、凄い衣装、
などは、お金に比例して、絵の力を増すことが出来る。

観光写真的要素、空撮、滅多に見れないもの、
物凄い手間がかかっている凄いもの、
などはそれだけで娯楽だ。
おおむね、これらは制作費に比例する。
(絵ではないが、フルオーケストラや歌などの音要素も同じくだ)
スーパーショウという、映画王道の絵の眼福は、
このようなものである。
見世物小屋としての絵の力だ。


他に、一般に人には見たいものがある。

CMの世界で3Bという言葉がある。
これを撮っとけば必ず受けるというやつ。
Baby, Beauty, Beast、つまり、
赤ちゃんや子供、美女、動物である。
これを見ていると人は幸せになる。
他にもある。
人が食べているところ、人が感情を爆発させるところ、
人が幸せになるところ、人が不幸になるところ、
進行している感じの絵、真俯瞰のような神視点の絵、
なども見たい絵のひとつだ。

あるいは、エロ、グロ、ナンセンスもそうだ。
怖いものや気持ち悪いものも、見てみたいもののひとつだ。
(絵的に、である。ストーリー的に気持ち悪いもののほうが高度)

映画は眼で見る娯楽だから、
それを見ているだけで、一定の満足感がある。
ある種のタレントは、見ているだけで幸せになる。
それを写しているだけで、絵が持つ。


これらは純粋に絵の力で、ストーリーとは関係がない。
「絵が持つ」と表現したが、
それを見ているだけで楽しいのは、飽きるまでだ。
映画の中では、それは数十秒から三分程度だ。
多くのポップスの尺までである。
それ以上は、ストーリーがないと持たない。
(だから、多くのショートムービーは、
絵が面白くて、絵が持つだけのもので終わらせる。
短編小説のような面白い「話」は、減っている)


ストーリーに関係なく、強い絵は、誰もが楽しいものだ。
だからプロデューサーは、ストーリーが詰まらない時のための保険に、
強い絵を要求したりする。
(かつてはその予算もあったが、今はそれすらない)
こればかりやっていると、
いずれ、ストーリーの良し悪しではなく、
絵の良し悪しが映画の力と、勘違いするようになる。

多くの素人観客は、絵とストーリーを分離して考えられないから、
映画は絵ではないと言っても多分ピンと来ない。
(ペプシ桃太郎に寄せられた、おそらく一見さんのコメントを見れば、
区別がついていないことが読み取れる)
この問題は繰り返し論じているので次にすすめる。



最も映画の絵の力を示すのは、
象徴表現である。

結婚の約束を、指輪で表現する。
指輪を海に投げるのは、死別した恋人との別れを意味する。

などの例である。
古い映画でいえば、「サンセット大通り」のラストシーン、
女優が階段を降りて来る絵は、
この物語の全ての象徴になる一枚絵だ。

何かのアップや小物で、何かの象徴にする場合(指輪など)と、
シチュエーションのヒキで象徴する場合に分けられる。
後者をストーリーのイコンという。

象徴表現は、
強い絵でなければならない。
指輪なんて陳腐だ。古タイヤぐらいの図抜け方は欲しいものだ。

ヒキで表現するなら、
その絵は、よくある絵ではなく、見たことのない強い絵が望ましい。

それは、平凡でない、新しい、強い話であるときに、
出現する絵である。

(5/30追記:ウッディアレンの「マッチポイント」は、
トップシーンにそのイコンがある。
テニスボールがネットにひっかかり、どちらのコートに落ちるか分からないショットだ。
これはこの映画のテーマを暗示する。非常に上手いイコンである)



強い絵には二種類ある。
ただの強い絵と、ストーリーの象徴表現の絵だ。

絵だけを追うと、ストーリーのないガワだけをつくっていることになる。
中身だけを追求しても、強い絵のない、取っつきにくい話になる。

絵はいいけど話が微妙、面白い話だけどヒキが弱い、
という言葉は、企画打ち合わせではしょっちゅう出るワードだ。
posted by おおおかとしひこ at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック