ファーストクラスで、
せっかく何もかもリブートしたものを、
「旧三部作との接続」目的にしてしまったこと。
旧三部作のうち、1、2を監督したブライアン・シンガーが、
他人が監督した3の結末を良しとせず、
真のエンドとするための、彼にとっての4としたこと。
ブライアンはゲイであり、それをカミングアウトしてもいる。
マイノリティ故の彼の出自が、
ミュータントの描写に上手くシンクロしているのが、
Xメン三部作の特長だ。
(ゲイ監督特有の、女性に性的魅力がないことも特徴だ)
だから、ウルヴィーとジーンの愛よりも、
プロフェッサーとマグニートーの友情と反目に、
ウルヴィーとスコットの反目に重心が置かれる。
ファーストクラスのラストのミスティークの決断が、
「変身して世間を煩わせないことより、真の姿でそのままいろ」
というマグニートーへの傾倒だったのは、
本当はブライアンのテーマでもあった。
(ミスティークを妹としては見れるが、恋人としては見れないチャーリーも、
ゲイ監督ならではの物語性だ。ゲイは女の性的肉体を忌避する)
僕はゲイ監督を差別しているのではない。
シリーズの傾向が繋がっていないことに抗議したいのだ。
ゲイ=マイノリティ=ミュータントなら貫いてほしかったし、
ファーストクラスでリブートするなら、以後はストレートな話を期待していたのだ。
クイックシルバーの母のキャスティングが、ゲイ監督ならではだ。
女女してない、サッパリした女を使う。
(ワンシーンなんだから、ストレートな監督なら、
多少でも色気のある美人と仕事したくなるものだ)
原作では彼女はマグニートーと寝ていて、その息子がクイックシルバーだ。
一応台詞では「金属を操るミュータントと知り合い」を匂わせていたが、
キャスティング的に説得力がなかった。
ファーストクラスの直接的続編なら、
プロフェッサー、マグニートー、ミスティークの三角関係を主に描いた筈だ。
ミスティークは、マグニートーとセックスしたかも知れないが、
心の底でプロフェッサーに認めて欲しいと思っている筈だ。
それをすっ飛ばして、
ミスティークを狂言回しにしたのが、受け入れがたい。
脚本家と監督の視点は未来側にあり、過去側にはいない。
X4というタイトルなら受け入れられたかも知れない。
それにしても、ミスティークの本当の心はどうなのだろう、
という疑問はのこる。
「彼女の本当の姿として生きること」は何なのか、
この映画では分からない。
ストライカーに化けた意図も不明で、
それが彼女の結論でもないだろう。
峰不二子的な、謎の女的なポジションにするには、
ファーストクラスでは内面に入りすぎている。
ブライアンシンガーにとっては、ミスティークはただの謎の女キャラ扱いのようだ。
何故ならゲイにとって、女は謎だからだ。
ゲイにとって女の最も忌避する特徴、性的肉体を、
ラインは美しいのに触るのが嫌な造形にしているのも、
女に対する無意識をよく表している。
ブライアンシンガーが続投する限り、
女キャラの内面が、納得いく形で描かれることはないだろう。
ストーム、ジーン、ローグ、ミスティークなどの、
女的内面は、多分「分からない」まま進むのではないだろうか。
一方、プロフェッサーとマグニートーの関係については、
まだまだ出てきそうである。
このへんが腐女子のみなさんが好物としているのも、
偶然ではない。
アポカリプスという巨大な敵がいることは、
何となく知っているが、詳しくは知らない。
そこでこれらの疑問が解消されるかといえば、
恐らく解消されないだろう。
ファーストクラスは、なかったことになっているからだ。
あるいはマシューボーン復帰で、ストレート視点での続編になるかも知れない。
それでも、この物語全体のテーマは、見えてこないのが残念だ。
「ミュータントと人間の共存」がテーマのようでいて、
アンチテーゼ「ミュータント以外は滅びてしまえ」の呪詛が強すぎるように思える。
「共存なんて無理だよ、あいつらは我々と違うんだもの」という本音が、
今の世の中強い気もする。
それでは、お互い呪詛をぶつけあって、戦争になって修羅が続くだけなのだ、
という所へ、上手く着地して欲しいものだが。
(今作の結論は、「狭い理想郷の範囲内では、それを実現できる」でしかないのが痛い)
シリーズは、「期待に正しく答えること」が難しい。
一本の映画ですら、それが難しいのに、
ホームランを打ったら、次もホームランを打たなければならないのが難しい。
次に期待されていることは何か?を感知するのは、
データには出ない。
作品の流れと世の中の流れの、総合体だ。
それを勘という。今回は、その勘は間違っていたと思う。
そろそろ、CGにも限界が来ている。
スタジアム移動させても、うおおおおお、というまで驚かない。
お話で、ちゃんと心を動かして欲しいものだ。
2014年06月01日
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