プロットが大体出来たら、執筆の段階だ。
しかし、執筆とプロットの間には、大きく深い溝がある。
どれくらいかというと、
夏休みの計画と、実際のその日の違いぐらい。
だいぶあるね。
つまりプロットとは大筋のことで、
執筆とは、ディテールだ。
計画通りにいこうが、計画通りに行かなかろうが、
それはどっちでもいい。
例えば、計画に「海へいく」となってれば、
その日は海へいくことはいくが、
具体的に何をするかや、出来事や、台詞や、気持ちは、
自由であっていいということだ。
プロットの元義は「計画」だ。
その通りに大筋はいくのだが、
細かいことは、執筆者が決めていいんだ。
(更に細かくは、監督や役者が決めることもある)
その細かいディテールを書いていくのが、執筆だ。
プロット段階ではなかった、次の準備が重要だ。
登場人物の具体的な設定、
関わることの具体的な設定、
そして、題材についてのビビッドな気持ちだ。
登場人物:
架空なのだが、実在のような人物であるためのディテールには、
何がいる?
外見?好みの雑誌やファッション?
否。性格や人格や哲学などの、内面だ。
外見は監督が考えることで、
脚本家は内面を考える。
心理学の本などの性格分析、実在のモデル人物への取材、
典型的なその職業のキャラと典型的ではないがリアルなキャラ、
などが人物造形の参考になるはずだ。
行動規範や、一番大事にすることや、逆に一番否定すること、
などの内面の考え方をつくっていこう。
これは、人生経験の豊かさで決まる。
キミが(漫画や小説などの作り物でない)どれだけリアルな本物の人間を、
知っているかで決まるんだ。
薄っぺらい体験しか持たない者は作家にはなれない。
膨大とまでは言わないけど、核になる、人間とは何か、
みたいなことは、芯に必ず必要だと思う。
複数の人間を創造するからには、
それぞれのキャラがばらけているのがいい。
メインキャラ全員並べたときに、
外見一切関係なく、内面のキャラが個性豊かなのが最高だ。
(簡単な例は、脚本添削スペシャルで見てみるといい。
プロットの平面的な役割のキャラから、立体的な人間への例が書いてある)
試しに、登場人物同士で何かお喋りさせてみよう。
それぞれのキャラの違いが、お喋りの方向をねじ曲げていくだろう。
逆にキャラが出来ていないと、誰が喋っても同じことを言い、
会話がすぐ止まる筈だ。
ストーリー的に重要な場面、全く重要でない場面(たとえば昼飯どこいくか)
などを想定し、仮にお喋りさせてみるのもいい。
キャラが立っていれば、お喋りが盛り上がる。
逆に言うと、盛り上がらないレベルのキャラ立ちなら、
執筆は、まだはじめないほうがいい。
映画は、プロットではなく人間を描く。
人間こそが、執筆の対象である。
その人間が、漫画より小説よりリアルでなければ、実写の意味がない。
リアルすぎて、作り物の面白さを失ってもまた意味がない。
作り物の魅力を持ちながら、なおかつリアルな魅力の、
人物造形を目指そう。
それは、外見でなく、内面の魅力なのだ。
世界に関わる設定:
扱う事件やその関連事については、
きちんと調べものをしておこう。
SFなら最低限の科学はわかっておきたいし、
時代劇を書くのに剣術や馬の性質や農業について知らないなんてあり得ない。
ピアノについて書くなら、いつ頃からみんな習うのかとか、
花について書くなら、世間に見向きもされてない花のこととか、
専門家でも知らないことや、
詳しい人なら当然知っているだろうことぐらいは、
調べておこう。
たとえ初稿には書いていなくても、
中世の硬貨のことを調べていたら、登場人物が偽金を見分けるエピソードに転用出来るかも知れない。
得意な世界を書くのは当たり前だ。
知らない世界を知ることも、知的冒険として楽しいものだ。
その知的冒険の一部を、作品として世に出せる楽しみも、
知らない世界を書くことの楽しみのひとつだよ。
文字に出来ない調べもの、
例えばビジュアルや音楽についても、
脚本だけでなく実制作の資料になったりするから、
調べものは色々しておこう。
実在の場所がモデルなら、
その場所に実際に立ち、その空気を吸い、
そこで駆け回る登場人物達を想像するのは大変よい。
(そこがほんとにロケ地になることもあるし)
写真を撮って肌身離さず持つ人もいるし、
宮崎駿のように、印象だけを持ち帰り、
想像力で膨らまして架空の世界を創造する人もいる。
色々な人のやり方を知り、参考にするのもとてもいい。
さあ、全ての場面のディテールが、揃ってきたかな?
登場人物は勝手に喋りだし、
世界や問題のディテールで、疑問に思わないものはもうないかな?
だったら、いよいよ書きどきだ。
おっと、原稿用紙の使い方は知ってる?
知ってる人や経験者は、ばんばん書いていい。
知らない人は、先に「脚本の書き方」なる、
初歩の初歩は知っといたほうがいい。
次回につづく。
2014年06月10日
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