経験則から書いてみる。
1それぞれの登場人物の焦点を、各時点でリストアップする
2危険を加える
3感情を増幅する
1焦点のリストアップ
今観客がメインでハラハラしなければならないことは何か。
何を気にし続けながら、これを見ているか。
ターニングポイントが来て変わるまで、
それはひとつの焦点(ときに同時進行)を追っているか。
焦点とは例えば、
あの列車に間に合わなければいけない(締め切りのある目的)、
何が起こったか把握する(不明なことを明らかに)、
家賃を待ってもらう為、大家さんに金はあるふりをする為に友達にいい服を借りにいく
(多重の目的)、
主人公がいつ自宅のドアが開けっ放しなのを思い出すか(登場人物ではなく観客のハラハラ)、
のような、「具体的な絵で解決を示せるもの」のことを言う。
それがそのまま解決してもいいし、ターニングポイントでツイストしても構わない。
今、何を追っているかを明らかにすることだ。
明示する方法はいくつかある。
台詞で本人に言わせる、台詞で他人に言わせる、
その焦点の前に台詞で誰かが言ったものを、
人物の行動で、観客に思い出させるようにする、
などの、主に音で直接やる方法、
これを一部絵で示す方法
(渋滞にはまれば、誰もが脱出が目的になる)
などだ。
モンタージュによるやり方が最もスマートだ
(壁の影から好きな子を見ている男、その子が水道管破裂でびしょぬれになる。
彼は人の家の物干し台に走る。彼の焦点は物干し台からタオルなどを盗んで
彼女を拭くことで、彼女に気に入られたいことだ。
これはカット割りだけで表現できる)
が、毎回上手くいくとは限らない。
それらの焦点が、何を目的にこいつらは今いるんだっけ、
が分からなくなっていたら、問題である。
まずそのボケたポイントを指摘し、
ハッキリさせると、ストーリーラインの輪郭が出る。
ここで、登場人物の焦点と、観客自身の焦点があることに注意されたい。
登場人物の焦点と、観客の焦点が一致するところは、
感情移入が上手くいっているところだ。
登場人物が必死なことに、観客も必死でいる。
これがお話を見る者の喜びである。
2危険
焦点は、危険がつきものだ。
危険があるから必死になるのだ。
明日やろうが一週間後にやろうがどっちでもいいこと、
には危険はない。
それが、あと30分以内にやらないと恋人が殺される、
になった瞬間、危険度がはねあがる。
ハリウッド映画は、自分が死ぬか誰かが死ぬかという危険を大抵持ってくる。
日本の日常ではそこまで物騒ではないから、
もう少しリアリティーのある危険からはじめるのが常道だ。
(例えば、これを失敗したら空気が読めないと思われる、など)
危険は、成功へのスパイスだ。
失敗したらこんなリスクがあると、
分かっていればいるほど、成功への道のりがハラハラする。
綱渡りが分かりやすい。
一歩一歩着実に進み、成功したときにはそれが当然の遂行に過ぎない。
しかし、常に最大のリスクが足元にあるのだ。
危険を承知で主人公は行動するものだ。
だから面白い。
注意すべきことは、その危険を承知の上で、
なおかつそれに挑むのは何故なのかを、
観客が納得していなくてはならないことだ。
綱渡りの先の報酬の大きさなのか、
綱渡りへの動機なのか、
退路がないのか、
それが分かっていないと、そんな危険から逃げればいいじゃん、
と思ってしまう。
どうしてもその危険を承知で、
その焦点をクリアしなければいけないこと。
これを一般に動機という。(事情などの周囲の状況と、本人の意志がある)
その動機に感情移入していると、
その危険にハラハラしながら、成功への焦点を、
登場人物とシンクロしながら見ることができる。
これがお話を見る者の喜びである。
3感情の増幅
感情の振れ幅が小さい生き物より、
ちょっとしたことで身をよじって喜んだり、
悲しみにくれた姿が思わず抱き締めたくなる生き物のほうが、
見ていて楽しい。
そのように登場人物を描くとよい。
ちょっと嬉しいを、すっごい嬉しい、至福、へ。
まあまあヤバイを、危険、失敗したら死、へ。
好みであるを、好き、惚れた、一目惚れ、会えないと震える、へ。
少し感情が振れるのではなく、
大幅に振れると、見ていると面白くなる。
それは、リアクション芸を大きくすることではなく、
ストーリーの状況を、そのように持っていくことである。
ハリウッド映画が何故あんなにダイナミックなのかと言うと、
ダイナミックな状況にして、ダイナミックな感情を引き出すようにしているからだ。
しかし我々にはそんなダイナミックな予算はないから、
ダイナミックな感情を引き出す、お金をかけないダイナミックな状況へ、
登場人物を追い込むことだ。
それは、危険とも関係しているし、
状況変化でも表現できる。
ちいさくて繊細な感情は、
日本人の好きなものだが、
その繊細さは結論だけにしたほうがいい。
ダイナミックな状況や感情の末、
その繊細さに帰結する物語と、
ずっと微細な感情の変化を丹念に追う物語では、
前者のほうが確実にピリッとしている。
2014年06月13日
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