脚本家を目指す者は、観といたほうがよい。
とても素直で本質的な良脚本だ。
(ラストFFとかのゲームっぽいけど)
村井の芝居を観に行ったのだが、予想外に内容が良かった。
いい脚本は役者を乗せるという、いい循環が出来上がっている。
シアタークリエで日曜まで。
女性ファンの中、居づらさを感じながら、当日券ゲットに並ぶべし。
(以下ネタバレせずに批評)
一幕の幕切れに鳥肌が立つ。
最高のターニングポイントだ。
演劇のドラマチックな幕切れとはこのようなものか、
を十二分に味わえる。
(クライマックスより、僕のピークはここだったかなあ)
多少のアドリブは入っているものの、
これらの台詞は全て台本に書いてあることを意識しながら見よう。
どんな言い方ならこの台詞に命を持たせることができるか、
役者たちは懸命に台詞の言い方に全身全霊をかけている。
稽古のある芝居ならではの、いい産物だ。
(中でも宝塚の二人は、なんの抵抗もないいい芝居をしている。
どんな台詞でも、はじめから自分の言葉であったかのように言える、
おそるべき柔軟性だ)
現場で台詞をはじめて言うのがほとんどの映画界では、
台詞の一言一句を変えずに読むことは殆どない。
それは、芝居が本当に上手い人の割合が少ないからだ。
芝居が出来る役者が集まったときの、
芝居の強さ、面白さ、凄味を、肌で感じるよい機会だ。
(ここまで三拍子揃った芝居の場も滅多にない。
これが本来の「芝居」なのだろうけど)
あなたはこの台詞を書く担当であるはずだ。武者震いするではないか。
僕が気に入ったのは、トップシーンである。
見世物小屋の前口上の、リズムのいいこと。
冒頭の一文字から、物凄く練られている素晴らしさ。
冒頭の数行の調子よさだけで、この芝居がちゃんと書かれていることがわかるクオリティ。
まだ始まってばかりの眉唾な観客を信用させるだけの、
この芝居は面白いぞ、ときちんと導入する名台詞だ。
映画だとあまりに長い長台詞も、
舞台ゆえに楽しんで見ていられる。
その台詞をこう言うのか、という楽しみすら生の芝居にはあるものだ。
今の映画は、芝居がもっている、
大人が真面目につくる、「嘘なんだけど本当」に欠けている気がする。
台本があるやん。
ふりをしてるだけやん。
音楽がかかるやん。
舞台セットはイントレと物見矢倉とカーテンだけやん。
DLPでそれにちょっとCGうつすだけやん。
生でそれをみんなで合わせてるだけやん。
けれど、
それが物語を語るということなのだ。
文明が始まって以来、人類がたどり着いた最高の娯楽のひとつだ。
「嘘なんだけど本当」を楽しむことの。
この脚本を、書いた奴がいるのだ。
8800円のチケットは、正直高い。
だが、100万円払っても、これと同じ体験を出来るものは滅多にない。
高いけど、本物は見るべきだ。
脚本技術的には、サブプロットと狂言回しと、
メインコンフリクトの絡みを意識しながら見るといいだろう。
狂言回しがコンビともう一人、計3人いる、珍しいタイプだ。
樹海の設定(これ、いる?)を含め、
この脚本家は、三つ巴が好きらしい。
勿論、映画脚本でこんなものを書いたら、
「いくらかかるんだよ」と却下されることが99%だ。
舞台演劇ならではのパターンかも知れない。
だからと言って、書いてみろといわれて、なかなか書けるタイプの脚本ではない。
「ベルセルク」は、果たしてこれより上手い結末を用意出来るかなあ。
三浦健太郎が心配になってしまう。
パーフェクトな脚本ではない。
決闘後の展開は多少無理がある。
肺病の伏線も効いていないし、ヒロインが樹海からさらわれた理由も、
うーんなんだこれ感はある。
マホロバはいわゆるマクガフィンだが、
もっと上手く落とせるはずだ、という煮え切らない感はある。
ザッパのラストも、ご都合だ。
(かといって、マホロバはみんなの心にある!みたいなことでもうーん、だろうし。
ジブリアニメ臭もちょっとあるよね。多分同世代の人なのかも)
それを、キャスト達が上手く埋めている。
キャストに助けられている、のは脚本としては失格だが、
欠点を補いたくなる、一線を越えたレベルの脚本であることは確かだ。
こういうとき、作演出が一人だと難しい。
脚本と監督が別なら、監督がもっといいエンドを書く提案もあり得るのだが。
僕なら、ラスボスを佐藤アツヒロにせず、
ラスボス前の露払いにし、
ラスボスをきちんと佐々木に回すと思う。
二人の出会いで始まった物語は、二人の決闘で円環を閉じるべきだ。
あと、雑感。
殺陣は僕好みの中国剣法で大変好物。
挫盤勢でのキメが多すぎてまたそれか感はあるけど。
日本刀以前の直剣というのもいい。
あれは槍ではなく矛なんだね。
遠目では判らなかったけど、蛇矛スタイルだったかも。
石突き側での工夫がもう少しあるといいな。
相手に得物を投げるジャッキー方式が僕にはツボでした。
欲を言えば旋子や二起も見たかった。
そうそう、ジャッキーによくある、
何かを拾う動作で結果的にかわして、相手がその背中を転がるやつも見たかった。
オープニングの殺陣で一人だけ剣捌きの違う、
舞うような剣の使い手がいて、遠目では最初女剣士に見えたので、
いい役者使ってるなあと思ったら、佐藤アツヒロだった。
流石のダンサーぶりです。
華ってこういうことだよねえ。何だろう、ターンかな。
華といえば、宝塚の二人の歌もいいです。
芸能ってこういうこと。
なんだろう。昔の人はこういう人を観音様と言ったんじゃないかなあ。
あと、サントス・アンナさん、タイプです。
つきあってください。早速wikiで結婚していることを知り、ショックです。
(追記:マホロバ関連まとめました。→まとめ)
2014年07月25日
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