会いたくない人に会うこと。
自分の真の内面を晒すこと。
出来れば直接話したくないこと。
出来れば誰か他の人が解決したり泥をかぶってほしいこと。
我々が現実の人生でなるべく避けている危険。
それが、物語の中では重要な場面としてやってくる。
直接対決という場面でである。
現実の世界ではプレッシャーが大きいから、我々はつい避けている。
それは自分のことだからだ。
しかし、「他人の不幸は蜜の味」だから、
他人のそれは、とても見たい。
安全圏からであれば、しゃぶり尽くすように見てみたいのだ。
物語はその我々の無意識に答える。
登場人物の危険によってである。
危険といってもこの場合、
崖から落ちそうになるとか、爆弾テロとかの危険ではない。
人間関係の危険である。
我々は他人の告白の瞬間が大好きだ。
それはその人が普段見せない、真の姿(美しくても、醜くても)を
見せるからだ。
愛の告白、過去の告白、過ちの告白、秘密の告白、
どのような告白であれ、真の姿を見せる危険が本人にはある。
出来ればそれを避けたい、しかし、それをしなければならない必要に迫られるのが、
ドラマというものである。
夜遊びして帰ってきた高校生は、
なるべく母親に見つからず二階の部屋に上がりたい。
現実なら、どうにかして見つからずに逃げ込む。
見つかっても「うっせーババア!」となるべく話し合いを避けて、
階段をダッシュであがる。
しかしドラマでは、(それが状況のセットアップでない限り)
必ず息子は母に見つかり、直接対決をするのである。
本音でぶつかり合う危険を描き、
二人の関係はその事によって何らかの変化をするのである。
なぜなら、それがドラマであり、それが展開だからだ。
展開とは変化である。
自然になんとなく移行するのを変化とは言わない。
危険に晒され、そこで何とかし、何とかし終わって、
最初の状態とは違う状態になることがドラマでの変化である。
「うっせーババア」で会話を拒否するのは、ドラマではない。
母と息子が直接対決をし、当初の人間関係とは違う状態になることがドラマだ。
息子が母を殴り、取り返しがつかなくなってもいい。
彼女に会っていることが分かり、じゃその彼女を連れてきなさいになってもいい。
不良とつきあっているとばれて、警察沙汰になってもいい。
不良とつきあっていると勘違いされて(本当は善行を積んでいるにも関わらず)、
母がなんらかの行動を明日とってもいい。
直接対決は、このように次の変化を生む。
それからどうなるかがドラマであり、
それが最終的にどうなるかがドラマである。
危険から逃げるな。
危険と直接対決せよ。
あなたは現実では、普段から危険を避けている。
しかし物語の中では、危険を避けていては、
うっせーババアから一歩も話が進まないのだ。
直接対決せざるを得ない場面を無理矢理(出来ればごく自然に)つくり、
そこでどうにかするという枷を自分にはめてみよう。
危険に挑む。それが冒険だ。
なにもナイルワニを倒したり、嵐の船に乗ることだけが冒険ではない。
危険に挑むことが冒険だ。
そして、演劇や映画は、
コンフリクトを人と人で表現するメディアだ。
(小説では、もう少し多様なコンフリクトを描ける)
直接対決が、一番の道具なのだ。
演技合戦、などと言われるタイプの映画や演劇がある。
コンフリクト、直接対決をきちんとシナリオで描いていれば、
それは元々演技合戦になるはずである。
演技合戦と言われるタイプの芝居は、
そのコンフリクトが特に濃い場合を言うにすぎない。
(あるいはコンフリクト以外のものがショボいから目立つだけ)
直接対決を書こう。
出来れば会いたくない人と、直接対決する場面をつくろう。
自分の真の内面を晒すような、直接対決する場面をつくろう。
出来れば直接話したくないことを、メールや人づてでなく、
直接言う場面をつくろう。
出来れば誰か他の人が解決したり泥をかぶってほしいことを、
直接対決でやらざるを得ない場面をつくろう。
少年漫画出身の僕は、直接対決というとついついバトルを想像してしまう。
漫画やラノベではそうなるかもしれないが、
現実のリアリティーでは、おそらくただ話をするだけだ。
その胃が痛くなるリアリティーこそが、
蜜の味なのである。
「逃げちゃダメだ」とシンジはエヴァンゲリオンで、
逃げずに立ち向かった。
逃げてしまう、がセットアップで、
はじめて立ち向かった、が最初の物語のステップ(カタリスト)だ。
逃げなかった結果何が起こり、それがどう展開していくか、
逃げなかった結果どう帰結したかが物語だ。
残念ながらエヴァンゲリオンは、その帰結を描いていない未完成作品である。
帰結を描くには、人生経験がいる。
逃げてばかりで直接対決をしていない者は、直接対決が描けない。
2014年07月27日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック