2014年08月02日

難しい選択をつきつける

よくあるパターンだが、使いこなすのは難しい。
あのとき、あっちを選んでいたら今頃どうなっていただろうか、
と回想したくなる、どっちとも選べないふたつの選択肢を創作する能力が必要だ。


ドラクエ5での、ビアンカとフローラどっちと結婚するか、
という話はいまだにたまに話題になる。
それくらい、このふたつの選択肢は良くできていたということだ。


選択はただ指差すだけという簡単なこと、
ふたつは迷うような選択肢であること、
であるとよいだろう。

ある面から見ればこっちなのだが、別の面から見ればこっちだ、
のような、複数の評価軸があるとよい。
俺の大事にするべきことはなんなのか、という評価軸が、
選択肢のポイントだ。
例えば部屋を選ぶときに、駅近の評価軸か、間取りの評価軸か、
みたいなことでもよい。


選択肢の良し悪しではなく、
俺は何を一番大事にしているのか、
という確定にこの選択イベントを持ってくるのがベストだ。

つまり、この選択イベント以前に主人公は迷っていなければならない。
人生で大事なことは何かを、一端ぐらついている必要がある。
ただの不透明ではなく、具体的な両者の間で迷わせる。

たとえばAという信条があったときに、それを否定される出来事があり、
Bという信条が正しいのかも知れない、という出来事が起こり、
しかしBも絶対正しい訳でもないことを描いておく。
どちらも一長一短であり、どちらも絶対の正義でないことを描ければ、
選択イベントは、信条を選ぶことに一致する。
(たとえばマイケル・サンデルが「正義とは何か」で出した豊富な例題は、
そのようなものだ。
一人を殺せば5人が助かり、無視すれば5人が死んでしまう状態のとき、
その一人を殺すことは正義か、などのような、答えのない問題が沢山載っている。
これは議論のための議論であり、陪審員制の国ならではの議論だ)


信条という目に見えないものを、
両者からの選択、という目に見えるもので表現する、
これはきわめて映画的なシーンである。

身近な選択肢、難しい選択肢、さまざまな信条を二択にする、
具体的な例を考えてみよう。
そのどちらかを選ぶ場面のある話を書いてみよう。

恋人か友達か、仕事か彼女か、金か心か、
などを選択させるために、
ガリガリ君かハーゲンダッツの選択をする場面を書いてみよう。
徒歩かタクシーかを選択する場面でもいい。
4つの具体の組み合わせを、もっと面白いものにしてもよい。
最終的に自分が笑うのが人生の勝ちなのか、
最終的に周りが幸せになるのが勝ちなのか、
などという難しい選択肢でもよいだろう。
答えのないものほど、その選択は面白いものになる。


少し深く考えると、
これを洞窟の右の穴と左の穴、などのような場面にせず、
主人公と敵、ということに変換できることに気づくかも知れない。
敵は、もしかしたら自分がそうなっていたかも知れない、
もうひとつの自分だ、という話は、
このようなことの変換から生まれてくるのだ。

このような定石のパターンは、
習作としてどんどん書く経験を積むべきだ。
(5分シナリオなら、すぐ出来るだろう)
定石を研究するのは、
その具体的な構造を把握したり、
内的なコンフリクトを把握したり、
素早い説明の仕方を学んだりする、
よい機会だ。

それがいつか、あなたの長編シナリオの重要な場面として、
命を吹き込まれるシーンになるかも知れない。
posted by おおおかとしひこ at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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