よくあるパターンだが、使いこなすのは難しい。
あのとき、あっちを選んでいたら今頃どうなっていただろうか、
と回想したくなる、どっちとも選べないふたつの選択肢を創作する能力が必要だ。
ドラクエ5での、ビアンカとフローラどっちと結婚するか、
という話はいまだにたまに話題になる。
それくらい、このふたつの選択肢は良くできていたということだ。
選択はただ指差すだけという簡単なこと、
ふたつは迷うような選択肢であること、
であるとよいだろう。
ある面から見ればこっちなのだが、別の面から見ればこっちだ、
のような、複数の評価軸があるとよい。
俺の大事にするべきことはなんなのか、という評価軸が、
選択肢のポイントだ。
例えば部屋を選ぶときに、駅近の評価軸か、間取りの評価軸か、
みたいなことでもよい。
選択肢の良し悪しではなく、
俺は何を一番大事にしているのか、
という確定にこの選択イベントを持ってくるのがベストだ。
つまり、この選択イベント以前に主人公は迷っていなければならない。
人生で大事なことは何かを、一端ぐらついている必要がある。
ただの不透明ではなく、具体的な両者の間で迷わせる。
たとえばAという信条があったときに、それを否定される出来事があり、
Bという信条が正しいのかも知れない、という出来事が起こり、
しかしBも絶対正しい訳でもないことを描いておく。
どちらも一長一短であり、どちらも絶対の正義でないことを描ければ、
選択イベントは、信条を選ぶことに一致する。
(たとえばマイケル・サンデルが「正義とは何か」で出した豊富な例題は、
そのようなものだ。
一人を殺せば5人が助かり、無視すれば5人が死んでしまう状態のとき、
その一人を殺すことは正義か、などのような、答えのない問題が沢山載っている。
これは議論のための議論であり、陪審員制の国ならではの議論だ)
信条という目に見えないものを、
両者からの選択、という目に見えるもので表現する、
これはきわめて映画的なシーンである。
身近な選択肢、難しい選択肢、さまざまな信条を二択にする、
具体的な例を考えてみよう。
そのどちらかを選ぶ場面のある話を書いてみよう。
恋人か友達か、仕事か彼女か、金か心か、
などを選択させるために、
ガリガリ君かハーゲンダッツの選択をする場面を書いてみよう。
徒歩かタクシーかを選択する場面でもいい。
4つの具体の組み合わせを、もっと面白いものにしてもよい。
最終的に自分が笑うのが人生の勝ちなのか、
最終的に周りが幸せになるのが勝ちなのか、
などという難しい選択肢でもよいだろう。
答えのないものほど、その選択は面白いものになる。
少し深く考えると、
これを洞窟の右の穴と左の穴、などのような場面にせず、
主人公と敵、ということに変換できることに気づくかも知れない。
敵は、もしかしたら自分がそうなっていたかも知れない、
もうひとつの自分だ、という話は、
このようなことの変換から生まれてくるのだ。
このような定石のパターンは、
習作としてどんどん書く経験を積むべきだ。
(5分シナリオなら、すぐ出来るだろう)
定石を研究するのは、
その具体的な構造を把握したり、
内的なコンフリクトを把握したり、
素早い説明の仕方を学んだりする、
よい機会だ。
それがいつか、あなたの長編シナリオの重要な場面として、
命を吹き込まれるシーンになるかも知れない。
2014年08月02日
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