2014年08月09日

映画とは、決断のことである

極端に言ってみる。
映画の構造を大きく抽出せよ、といったとき、
大きな決断をポイントに考えるとよい。


主人公が陥った状況で、どうすべきか決断しなければならないときがある。
相手の決断で、こちらの人生に影響することがある。
ぼさぼさしてたら死ぬから、今すぐやらなきゃいけないことを決断する必要がある。
決断を知られないようにする決断もある。
決断を知らないがゆえの決断という悲劇もある。

決断は、自分の腹を決めることだ。
自分の動機を見直してゴールを決めることだ。
それまでの状況をなるべく明らかにし、
分かっている範囲で情報を整理し、
リスクとリターンと本来やりたいこと(目的、動機)を明らかにし、
関わる人たちの立場や利益や損害を考えに入れ、
それに責任を負うことである。
失敗すれば自分の責任であり、
決断したからには実行を伴わなくてはならない。

映画の中で、主人公が何回決断するだろう。
チームを率いるリーダーなのか、一人なのか、周りとの関係でも決まるだろう。
映画の中で、敵や他の登場人物は、何回決断するだろう。
主人公と同じぐらいそれは、
各々の事情や個性や責任が現れるはずだ。

決断はターニングポイントだ。
しかも、おそらく最も強力なターニングポイントだ。

戦うこと、捨てること、立場を表明すること、選択肢から選ぶこと。
それは未来の自分を決めることだ。


決断を元に、ストーリーの構造を把握してみることをやってみてはどうか。
それが観客に明らかになっていることで、
その人物とともに冒険をすることが出来る。




実写「風魔の小次郎」を例に取ろう。

小次郎は、
白凰学院に仕事をしに来る、
姫子のために頑張ることにする、
周囲の制止を振り切り勝手な行動をする、
忍びに禁じられている墓をつくり弔う行為をする、
鍛えようと思う、
伝説の風林火山を使いこなそうと思う、
胸のうちを告白する、
姫子を助け、戦いを終わらせる、
武蔵のサイキックを斬る、
姫子と笑顔で別れる、
などの重要な決断をしている。

飛鳥武蔵は、
入院費のために自分を高く売る、
夜叉に入る、
風魔の存在を脅威に感じ、赤星の矢を射る、
忍の掟を遵守し、一対一を守る(←ここちょっと弱い)、
力の解放を決断する(←ここちょっと遅い)、
忍びから足を洗う、
などの重要な決断をしている。

壬生攻介は、
常に戦いの先頭に立ち特攻隊長になる、
怪我をおし小次郎と再戦、
黄金剣を盗みだし出奔、
裏切者黒獅子を斬る、
小次郎に再々戦を挑む、
黄金剣を使いこなす修行をする、
陽炎とともに夜叉を建て直そうとする、
夜叉姫を助ける、
武蔵にあとを託す、
などの重要な決断をしている。

姫子は、
風魔に助けを求める、
(何回か直接助っ人を頼む)、
殺し合いになるのなら辞めるべきと小次郎に頼む、
主君として責任をとろうと、夜叉姫と話し合おうとする、
強い善人であろうと思い、総長になる覚悟をする、
などの重要な決断をしている。

夜叉姫は、
司令官を武蔵にする、
黄金剣を武蔵へ渡そうとする、
壬生抹殺指令を出す、
司令官を陽炎にする、
などの重要な決断をしている。

竜魔は、
赤星の矢を見て風魔衆を白凰へ集め、長兄としてリーダーをつとめる、
小次郎を後方に回す、
霧風の反対をおさえ、小次郎を現場に残す、
掟で戦い方を一対一にする、
(ちょいちょいサイキックを使う)、
蘭子の告白を断る、
小次郎を一人前と認める、
などの重要な決断をしている。

陽炎は、
壬生に負けたふりをするなどして媚を売る、
武蔵を追い出そうとする、
壬生に黄金剣を盗ませる、
死んだふりをし出奔、
壬生とともに新秩序を描こうとする、
夜叉姫を殺そうとする、
絵里奈を人質に取ろうとする、
などの重要な決断をしている。

これらの糸の絡み合いが、風魔という大河物語の構成だ。
各話のゲストやサブキャラの小さな決断もあるが、
主なものを書き出してみた。
こうしてみると、前半部に決断が少なく、
後半部に決断が集中していることが俯瞰できる。
後半の怒濤の展開の面白さは、このようなことでもあるのだ。
前半はギャグ多め、後半はストーリー多めのバランスは、
これらからも読み取れる。(後半の面白さをもう少し前倒し出来ていれば…)


それぞれの意図や決断やその結果が影響し合い、
同時進行し、層になって重なりあい、
時に成功したり失敗するのが物語だ。

プロットや骨格を考えるとき、「決断」を節に考えるのは、
動的進行を考える上で役に立つかも知れない。
posted by おおおかとしひこ at 18:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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