2014年08月21日

続・小説のススメ(追記)

会社で「下手なシナリオ」を見たので、記録しておく。

オペラを観劇する男。演目は「トゥーランドット」。

小説ならどこも不思議のないこの文章も、
ト書きとして見るなら下手くそ極まりない。


観劇の場面がトゥーランドット全部を見るのでない限り、
まずはどの場面かを指定する必要がある。
トゥーランドットという説明を入れないのなら、
その見ている場面が、一発でトゥーランドットと分かる場面にするべきである。

僕はオペラに詳しくないし、多くの人もオペラに詳しくないから、
せいぜいイナバウアーでかかった曲をおぼろげに覚えているだけだ。
それがどこでかかるのかも知らないし、
それがこの劇の代表的な重要な場面かも分からない。

一応どの場面を使うかを決めた上で、
演目がトゥーランドットであることを、どこかで前ふりするべきである。
(トゥーランドットであることが話の上でどちらでもよいのなら、
その必要はない)
トゥーランドットを今度見に行くんだ、と誰かに言ってもいいし、
劇場の看板にトゥーランドットと書いてあってもいい。
或いは字幕で「トゥーランドット第二幕第三場」などと入れるのもよくある。

にしても、シナリオ上は、

オペラを観劇する男。演目は「トゥーランドット」。
二幕三場の、王女が何者かに囲まれ、魔法をかけられるシーン。
有名な「誰も寝てはならぬ」が歌われる。

などのように書くべきだ。(※二行目は調べもせず適当に書いてます)
もし演目がストーリーに関係ないなら、

オペラを観劇する男。

の一行で十分である。
実製作のときに、演目と場面を決めればいい。

(風魔の6話、シンクロの試合中にかかる音楽は、シナリオ中では明示されていない。
それは、ストーリー進行に関係がないからだ。
もし曲が「誰も寝てはならぬ」で、寝るかどうかがストーリー進行に重要なら、
それは意味があるからシナリオ中で指定されるだろう。
組曲「木星」を監督として僕が指定したのは、
フリー音源、即ち使用料無料のもののなかで、メジャーなものを見つけたからだ。
金がない風魔ならではだ!)



映像表現では、そのオペラの芝居を指定する必要がある。
どの場面のどの瞬間を使うかをだ。
その数の役者、衣装、音楽、導線などを用意しなければならない。
シナリオはその用意するリストを指定する役割をする。

一方、小説では概念だけを示せば、
あとは勝手に読者が補完してくれる。

シナリオ形式は、小説形式より、難しい。
小説形式で最初書いたほうが、楽かもしれない。

逆に小説とは、その概念を自在に操るさまを味わう芸術かも知れない。
posted by おおおかとしひこ at 15:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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