何のために伏線を張るのか、考えたことはあるだろうか。
どんでん返しのためと答えるのは、
まだまだストーリーテリングの初心者だ。
伏線は、納得するためにある。
お話をするとき、
まず最初に前提をふる。
その空間内、そのルール内でのお話だと限定する。
そして展開する。
展開の最中は、焦点がひとつに保たれ、
ターニングポイントで意外な方向へ進んで行く。
それが最終的に落ちがつく。
唐突な落ちは、納得度が薄い。
なるほどね、とすとんと落ちるには、
落ちのごく前の部分だけを考えては意味がない。
この5分のことだけ考えてつくられた落ちは、
落ちではない。
落ちとは、お話全体の落ちにならなければならない。
落ちがついて、初めてお話は全体を持つ。
つまり、初めから最後まで、という全体だ。
それが全体の落ちとして納得するには、
初めから最後まで全体の、落ちである必要がある。
だから、はじめの方の伏線を落ちで使うのだ。
いちいちはじめの方からおさらいをするほど、
物語のラストはまどろっこしくしていられない。
はじめのあのことを踏まえた上で落ちをつける為に、
即ち全体を含んで落ちをつける為に、
はじめの方の伏線を使って、話をまとめるのである。
最も良くできた例のひとつ、「ソウ」で見てみよう。
未見の方はここで帰ってよい。以下ネタバレである。
「ソウ」の伏線は、ファーストシーンにある。
転がった死体である。
そして、ジグソウは「一番近い特等席でお前らの苦闘を楽しんでいる」
とのたまう。監視カメラを見つけ、一体どこにいるんだ、となる。
中盤での冒険やミスリードを色々経て、
落ち、ジグソウとは何者かが明かされる。
もしこれがファーストシーンに関係していない、
中盤の展開の中の誰かだったら、
あれほどの納得は得られなかっただろう。
例えば刑事とか、町で一瞬すれ違った誰かだったとしたら、
まあ、そいつらに嵌められた、というだけの並の話だ。
この映画の非凡な所は、
「はじめから転がっていた死体が立ち上がる」というショッキングな落ちにある。
最初から見ていたのか!「特等席」で!
という納得感!
勿論、この大落ちにどんでん返すために、
テープレコーダーの件などの様々なミスリードがある。
これで謎は全部解明された、と思わせておいての大どんでん返しだ。
繰り返すが、この瞬間に、はじめから最後までの、
作品全体の構造が確定するのである。
だから、大きく、
ファーストシーンからのことゆえに最も大きく、
腑に落ちるのである。
ラスボスやラストステージは、最初に出ている。
これは、物語の原則のひとつかも知れない。
「青い鳥」の話は、その原則そのものがテーマだ。
(演劇「マホロバ」のいまいちさは、この原則を外しているからだ)
さて、このやり方は、全体の大構造ばかりでなく、
小構造に使える。
ターニングポイントとターニングポイントの間、
僕の言葉で言う、はじまり→途中→終わらずにつづく、
という一連の小構造の中でである。
前のターニングポイントを受け、
はじまりのシーンでは、これからの焦点を確認する。
(そしてこのファーストシーンのどこかが伏線になる)
色々あって、どんでん返し的なターニングポイントになり、
次の小構造になる。
このターニングポイントのとき、このブロックのファーストシーンの伏線を使うと、
このブロックの大詰めであることを意識させることができる。
「この」話がまとまるぞ、
と観客が身構えることが出来るのだ。
大構造の相似形になっているのである。
もしあなたが途中の小構造が今一面白くなくて困っているなら、
このやり方を試してはどうだろう。
具体的な例を。
あるターニングポイントで、焦点が絞られた。
次のブロックのファーストシーンで、
これを解決するには、AかBしかない、と前ふっておく。
成功率の高そうなAで、色々がんばる。
しかしどうやっても成功しない。
そこで誰かが言う。
「Bは試したの?」
これがターニングポイントになって、このブロックは終わり、
次のブロックへ進むのだ。
たったこれだけの文章で、
あなたは「ほほう」と身を乗り出した筈だ。
話が具体になれば、もっと身を乗り出すだろう。
「AかBか」を途中で示しては、
このファーストシーンでふっておくより効果が薄れる。
ブロックのはじまりから、その途中で示すまでが、
まるで無駄になる。(それは、編集で切る候補になる)
ソウのように、前ふり(即ち伏線)をファーストシーンでしておくこと。
それが最も上手く展開するコツだ。
他にも納得のいく構造はあるかも知れないので、
これが唯一である、とは言えない。
が、展開部や各所で困ったら、試してみるのは悪くない。
伏線は何のためにあるのか。
話に、納得するためだ。
(こうやって、話のファーストシーンに戻すことが、
終わりを示すことである)
なんでこう思うんだろうね。
話が一周すると、終わった感じがするのかもね。
これを、「円環を閉じる」テクニックと、カッコつけて呼ぶことにしよう。
(はい、ここターニングポイント)
2014年08月21日
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