2014年09月09日

場面とシーンは違う(場面しか思いつかない3)

ストーリーを考えたくても、場面しか思いつかないことは、
初心者の時にはよくある話だ。

さらに追い打ちをかけるようだが、
そのような人は、場面と「シーン」の区別がついていないと思う。


「思いつく場面」は、たいてい一枚の絵でかけるものだ。
絵本でたとえよう。

文章に対し、あるまとまりをつくって、
その中のどこかの場面を、そのまとまりの代表として絵にかくのが絵本である。

「シンデレラ」で考えよう。
「かぼちゃが馬車になる場面」を出そう。
かぼちゃから馬車への「変化」がこの場面の肝だが、
変化という動きを絵に描くことは出来ないので、
大抵は「馬車出現」の絵を描くだろう。
(丁寧な絵なら、変化前のかぼちゃと変化後の馬車のふたつの絵を描くはずだ)

絵は変化をかけない。変化という動きこそがお話だ。
movieとは、moveのことである。

したがって、「場面」とは、大抵動きがなく、
お話という動きを表現するのに適さない。

ヒーローが悪を倒すなどの、動きのある絵なら可能か?
いや、すべてをそのような絵で描くことは困難である。
そもそも思いついた場面とは、すべてがそうだろうか?
大抵はそうではない。
だから、「場面を思いつく」ことは、
お話をつくっていることには、ほぼ関係がない。


さて、映画とは「シーン」が単位である。
それはひとつの場所で行われることで、
それが終わったら次のシーンで話の続きが行われる。
長編映画では数十から100程度のシーンで物語が語られ、
5分ものですら、7、8のシーンで構成されることもある。
(長編映画での、平均的な短いシーンは1分半程度だ)

さて、場面とシーンは何が違うのか。
そのシーンが場面のことではないのか。

「シーンの終わり」にまず注目してみよう。
シーンの終わりは、ラストシーンの例外をのぞき、
すべては「次に続く」ところで終わるものだ。
シンデレラの馬車の場面の文章を見るとよい。
「その馬車は、お城に向かいました」となっているはずだ。
次に続くことがシーンの役目である。
この文脈では、シンデレラが行きたかった舞踏会へ向かうことで、
次へ続いている。

「長編とは、序破破破…破急」でものべたが、
話というものは、はじまりがあり、
途中があり、「終わらない」で次へ続くものだ。
その面白さが、話の面白さである。
どこかで、「この話終わり」になってしまてはだめなのだ。
(サブプロットが途中で終わるのは例外)
その連鎖の面白さを組むことが、お話をつくることだ。

シーンの終わりには、すでに次のシーンへの続くがある。
では、シーンの頭はどうか。
前のシーンを受けて、
「それがどうなっていくか」を描くためのセットアップがあるのだ。
シンデレラの続きでいえば、
貴族たちがめいめいの格好をして踊っている様であり、
目的の王子様もそこにいることを示すのだ。

シーンの頭は、前のシーンからの続きであり、
シーンの終わりは、次のシーンへの続きなのだ。

ではシーンの途中はどうか。
展開と結果がある。

シンデレラの例で言えば、
王子様と踊って惚れられ、12時に魔法が解けるから家に帰ります、
といって帰り、ガラスの靴を忘れて帰る、
という展開と結果が。
(そして、シーン終わりに次への続きとして、王子が靴を拾う)

このように、シーンとは、
前の続きから、焦点を引き継ぎこのシーンのセットアップをし、
その焦点(興味)の展開と結果(完結はしない)を示し、
次のシーンへ新たな焦点を引き渡す、
という構造がある。

場面という一枚絵にはそのような構造がない。
絵本の馬車の場面と同じだ。
場面という一枚絵がシーンだと思っているならば、
それは浅はかなイメージでしかないのだ。



シーンは、映画の物語の最小単位である。
最小単位で、序破急や起承転結や三幕構造を持っている。
難しく考えなくても、
「はじまり」と「展開」と「終わらない(つづく)」が
あると思うとよい。

場面しか思いつかないことは、
シーンを思いついたことに比べれば、ペラペラだ。
(しょせん二次元だ。その二次元空間が時間軸を持つ、映画は三次元の芸術である)
しかもその一枚絵が、はじまりの部分なのか、展開のところなのか、
結果が出たところなのか、続くのところなのかすら、分らないはずだ。


場面を思いつくことを、やめよう。
お話を、思いつこう。

場面を思いつくことは、お話を思いつくことではない。
(場面を思いつくのは、お話を、夢や記憶のようなものだと勘違いしているからだ。
一枚絵でしか人は記憶できないという仮説を僕は出した。
そのあたりの議論は、このブログの過去のだいぶ前のところにある)
posted by おおおかとしひこ at 18:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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