2014年09月18日

途中でテーマが変わるとき

書いている途中、当初の想定と大きく変わってくることは、
よくある。

とくにテーマを再発見することはよくあることだ。
この話はこういうことが描きたかったのか、
と自分でもほんとうの結論が分かっていなかったりする。
終盤近く、後半戦にそれはよくある。
(例えば風魔のテーマのひとつ、絆は、随分後半になって、
勝手な夜叉との対比で醸成された)

それを書くことで、あなたはようやく本当のテーマを発見する。

それ自体は非難されるべきではない。よくあることだ。
問題は、それをきちんと回収しないことだ。
そのやり方について議論しよう。


最も簡単な辻褄合わせは、
一言台詞でフォロー入れたり、
新旧の差異を埋めるような新場面をつくることだ。

(風魔の例で言えば、12話の夜叉姫の
「みーんな自分のことしか考えていないんですもの!」
の半狂乱名シーンは、そうやって生まれた。
この一連の台詞は、
「何故八将軍は、たかが女頭領に対して反乱を起こさないのか」
という原作に対する自分の疑問への答えでもあった。
元々、壬生と陽炎の反乱は、
タツノコの傑作アニメ「未来警察ウラシマン」の中の、
ルードヴィッヒのクリスタルナイツのようなことをイメージしていた。
壬生は塩沢兼人キャラだと思っていたし。
ネクライムの頭領フューラーが夜叉姫のように自虐したかは、覚えていないが)


それだけでおさまらない場合は、
前半を新テーマに合わせて書き直すか、
後半を旧テーマに書き直すかを、決断しなければならない。

問題は、その決意がぶれることだ。

ぶれてはいけない。
ひとつの作品はひとつのテーマで貫かれ、
全てのサブテーマはテーマの一部でなければならない。
それが「ひとつの作品」であることだ。
(ふたつの作品をつくるなら別だが)


与えられたフィックスしたテーマでない限り、
僕は新テーマに書き直したほうがよいと思う。

それはよりビビッドで、おそらくあなたの芯に近い。
創作は、大抵新しいもののほうがよい。
それは、散々考えつくして、
これまで考えていなかった新天地にたどり着いたことだからだ。
(しかし、新旧では旧のほうが良かった、というパターンもたまにある。
客観的になることがどれほど難しいことか!)

だとすると、その新テーマに従って前半部をリライトするのがよい。


以下、リライトのこつ。

何度か書いているが、前の原稿は捨てること。
(本当には捨てず、鍵のかかる引き出しに入れて保管する)
白紙に新しく書くと良い。
それは辛いことだが、
既にある原稿に赤を入れることより、ずっといいものを生み出せる。
これは経験則だ。

赤を入れていくのは「直し」で、
新しい白紙に書いていくのは、「リライト」であると思う。
リライトは直しではない。もう一度書くことだ。re-writeなのだ。


新テーマ、そのサブテーマ、
その新ログラインを書き出す。
それにふさわしい三幕構成、プロットを書きなおす。
それだけでも不安なら、ボードや細かい見取り図も書いておく。

その上で、第一稿を書くように最初から白紙に書いていくと良い。
どこまで書くかというと、新しいテーマに変わったところまでだ。

最初に書いたときより、数倍早く書くことが出来る。
何故なら一回書いているからだ。
山をはじめて登るときと、二回目以降の違いだ。
ずっと気が楽になるし、一度やったことの応用が効くからだ。

書き終わるまでは、前の原稿を見てはいけないが、
書き終わったら引き出しから出してもよい。
大抵は前の原稿のエッセンスだけが上手く溶け込んでいるものだ。
取りこぼしがあるといけないから、それを拾って、
リライトではなく直しのレベルで赤を入れると良い。

もし大幅に直したくなったら、三稿目にかかるとよいだろう。
やり方は全く同じである。


僕が脚本を、水彩画ではなく油絵にたとえるのは、
こういう過程を経ているからである。
塗り重ね、塗り重ね、どんどんよくしていき、
ただひとつの隠された線にたどり着く行為なのだ。

ただし実際には、シーンは最初から最後まで一気に書いたような、
水彩的な流れるような会話でなければならないのだが。



一本の背筋を通そう。
ひとつの作品は、ひとつの筋で、
序破急だったり三幕だったり起承転結がある。
そうではないなら、それはただのバラバラな寄せ集めである。
書いている途中にテーマが変わるのなら、
それは途中で作風の変わってしまったへんな人だ。

(漫画「とどろけ!一番」というコロコロの漫画は、
「答案二枚返し」の必殺技などの受験バトル漫画が、
急にボクシング漫画に路線変更してしまった、キテレツ漫画である。
「ドカベン」の柔道編は本題の野球への助走であるのだが)
posted by おおおかとしひこ at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック