2014年10月06日

ネーミングセンス

ネーミングのいい商品は売れる。
語感だけがネーミングだと思うのは間違いだ。

ネーミングとは、「新しい価値をうまいこと言う」ことだ。
新しい価値が、その名を呼ぶ度に認識されるから、
いいネーミングの商品は売れる。
その度に、新しい価値が発見されるからだ。
(名が体を現していない場合、キャッチコピーがその役目をすることもある)

ちなみに、新しい価値がそこにない場合、
どんなにいいネーミングでもダメだ。
(似たような良くないネーミングよりはましかも知れない)

さて、あなたは自分の作品の、
どこにそのようなネーミングを使っているだろうか。


主人公の名前、その他登場人物の名前。
脇役から端役に至るまで。
(端役は、医者Aや下忍Bなどが慣例)
登場する組織の名、町の名、電車やコンビニの名。
小道具の名、特殊設定の名、国の名。
(いまだにカリオストロ公国というネーミングは大好きだ)


作中に登場するこれらを、あなたは命名する必要がある。

命名は難しい。
放っておくと、すぐに中二病ネーム、すなわちDQNネームになりがちだ。
かといって田中や鈴木や山本など、
平凡な名前だけの世界も味気ない。
ドラゴンボールではサイヤ人は野菜しばりのもじりとか、
誰が見ても分かるパロディを使う手もある。
先祖や神様の名や権威あるものの名をもらうとか、
有名人にあやかるとか(科学者の役は科学者の名から取るなど)、
地名にあやかるとか(出身地の地名を名にする、というのはよくある)。

それらは、リアリティーとフィクションの中間にいなくてはならない。
リアルなら、名前にばらつきがありすぎてフィクションには向かない。
フィクションとはバラバラな現実を、作者の意向に沿ってある程度世界を整えて示すことだ。
だから名前にもその支配力は及ぶ。

役の本質を上手く表現しつつ、なおかつリアリティーを持つ必要がある。


ところで、映画の登場人物の名前は、
殆ど記憶に残らない。

役名より、誰が演じてたかで、記憶に残る。
有名でない役者がやった役なら、
父親、とか、医者とか、主人公を助けた人、
などのように、
「役割」で語られる。

ここが本質だ。
ネーミングは、実はどうでもいい。
物語中の役割が本質なのだ。

ネーミングセンスは、ある程度必要だ
(なんだか面白そう、と思われるために)。
しかし本当に必要なのは、役割だ。
その人がその話の中で何をするか、という役割が。


たとえば、エヴァンゲリオンやネルフが、
ピロピロマンとムーチョだったとしよう。
それでもあの話が面白ければ、エヴァは面白い話だ。
しかしそうではなさそうだ。
つまり、エヴァンゲリオンやネルフといった、
「何か物凄いものが秘められている感」を、利用している。
そして実質はその期待感ほどではない。
つまり張り子のハッタリに過ぎない。

ネーミングセンスは、このように、実質より、作品を大きく見せることができる。
逆に、綾波レイは、田中春子だったとしてもいいヒロインになりそうだ。
つまり、綾波は、名前が関係なくきちんと話になっている。


あなたのネーミングセンスはどんなもんだろうか。
単なるハッタリになっていないか。
ワードで書いていれば、置換で一発でネーミングなんて変更できる。
どんなネーミングにするかはあなたの自由だ。

ハッタリを効かせて実質がないのを誤魔化すか、
実質を取りどうでもいい名前で挑むのか、
実質もありネーミングもよいものを目指すのか、
それはあなた次第だ。



さて、実は作品にとって最も大事なネーミングがある。
タイトルだ。

売れるネーミングには、ある種の法則がある。
キャッチーなこと、覚えやすいこと、記憶に残ること。
他と紛れないこと、そして独自の、新しい価値を示すこと。
つまり、タイトルだけでキャラが立つこと。

これだけは主人公の名前よりも時間をかけて考えるべきだ。
内容を知らない人が最初に興味を持つのは、
タイトルが気になるかどうかだからだ。
ここだけは、ネーミングセンスの必要なところだ。


昔、クレラップのピーター登場編で、
最初にクルリが読んでる絵本のタイトル、というのを100個ぐらい考えた。
背表紙のみの登場なので、タイトルだけ考えればよい。
で、「世界を一周したウクレレ」にした。
(候補に入れたのは、「銀色の男」「敵の敵は味方」だったかな)
暇な人は、こういうタイトルをひたすら100個も200個も考えると、
鍛えられるかも知れない。
登場人物や世界観に関わるネーミングだけを何百も考えるのもいい練習だ。
(「いつかギラギラする日」は、そういうタイトルストックから引っ張ってきたそうだ。
残念ながら名前負けだったが)
posted by おおおかとしひこ at 13:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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