インパクトだけを求めて、
本題への関心を引き付けることを忘れていないか。
それは、本題がつまらないから、
インパクトという香辛料に頼った単なる激辛料理になっていないか。
物語とは、事件の解決である。
導入部とは、事件の発生であり、
日常とは違う、異物との出会いによってもたらされる。
勿論、この異物にインパクトがあることは重要だ。
見慣れたものだと、
特に日常が代わり映えしないからだ。
正確に言うと、つかみとは、
「この日常を変えてくれそうなもの」に出会うことだ。
この日常、とは、主人公の日常のことだが、
本当は、観客の日常だ。
観客はつまらない日常世界を変えてほしい。
映画やドラマを見ることによって。
新しい夢を見たいのである。
詰まらない日常は、
事件への関心で緊急事態に変わる。
例えば台風の接近がワクワクするのは、
詰まらない日常が異常事態に突入するからだ。
きっと動物的本能で、アドレナリンでも出るのだろう。
異常事態とは警戒である。
危険なことである。
危険だから、本当に起こるのはまっぴら(家が水没とか嫌だ)だが、
物語の中では大歓迎だ。
そういう危険や警戒の疑似体験をしたいのだ。
だから物語の中では、
必ず危機や危険の訪れによって、
平穏で詰まらない日常が、警戒状態に突入する。
主人公一人だけなのか、数人なのか、クラス全体なのか、
日本全体か地球規模か銀河系なのかは、物語のジャンルで異なる。
つかみとは、
日常の壊れに警戒警報を出させることである。
そして、
それがすぐに解決することではなく、
絶望的に終了でもなく、
不安定ながらも、解決出来る可能性があるようにすることだ。
警戒警報は、そのとき解決の方向に関心が向けられる。
絶望的であればあるほど。
物語とは、事件の解決を描くものだ。
まずその事件と解決に興味を引かれなければ、
何もつかんだことにはならないのだ。
もうひとつやり方がある。
主人公だ。
誰もしたことのないやり方で事件を解決する、
凄いやつの登場である。
その凄いやつの期待感が、日常を変える予感になるのである。
出落ちになりやすいことに注意。
結局、この人がどういう事件に巻き込まれていくか、
という最初の問題が次に起こるからだ。
既に主人公への関心があれば、
事件単発への関心よりも、ハードルは低くなる。
つまり、主人公と事件のペアが組みとして大事だ。
ここで注意したいことは、このパターンの場合、
主人公と我々観客が初めて出会うことが肝心である。
人気芸能人がこの役をやってはならない。
それは、初めて出会うことにならない。
人気芸能人がやる役は、予測のつくキャラである。
初めて出会うのだから、無名の役者がやることが理想だ。
(そしてその物語が出来がいい場合、
大抵その役者の当たり役になる)
つまり、つかみとは、
「主人公の、事件解決への期待」を、
つくることなのだ。
すぐに解決しそうな(通報で一発、親が出てくれば終わり、
警察やマスコミの介入、アメリカ軍介入)事件では、
その期待は生まれない。
だから、謎を残しておくパターンが多い。
一体これはどういう事件なのか、全貌が分からないようにすることでだ。
第一に、事件が面白いこと。警戒し、一筋縄ではいかなそうなこと。
第二に、主人公が面白いこと。
(第一がよければ第二は引き算でよい。
第一が足りないとき第二でカバー)
つかみとは、これだけをすればよい。
面白い、とは、この場合ギャグのことではなく、
「関心を引くこと」である。
(愉快な主人公が関心を引くこともあるので、
ギャグも大事だ)
それが詰まらないから、別のところに香辛料を入れて、
料理を誤魔化すのだ。
インパクトインパクト言う前に、
何にどうインパクトを与えれば正解なのか、きちんと考えるべきだ。
関心を引く事件、関心を引く主人公がいれば、
それはインパクトがあるといえるのだ。
例えば「ドラゴンタトゥーの女」のデビッドフィンチャーによるオープニング映像は、
とてもインパクトがある。しかしこれは、本編の事件にも主人公にも関係のない、
ただの香辛料だ。007シリーズのオープニングも伝統的にただの香辛料だ。
ただ、いいオープニングは、本題に絡めたアートであることが多い。
ゴールドフィンガーなら金粉ショーとかね。
ドラゴンタトゥーの場合、事件にも主人公にも関係のないオープニングだったからこそ、
僕は単なるハッタリだと非難する。
ちなみにその原作のスウェーデン版、「ミレニアム」のほうが、
よっぽど事件や主人公に関心を引いていくようなオープニングになっている。
もうひとつ、微妙な判断のもの。
世界観への関心の場合。
事件も主人公も弱く、世界観だけをウリにすると、失敗する。
ただ、事件、主人公、世界観三拍子揃えば完璧ではある。
(ナウシカとか)
第一が事件、第二が主人公、第三が世界観、
と順位付けておこう。
(実はガンダムはこれが完璧だ。サイド7、という空にも街がある、
不思議な世界観の中でトンビを飛ばし、その壁が爆発させられ、
平和が戦争へ突入する事件を真っ先に描いている。
Z以降の後発のどれもが、このワンカットを越えられていない)
2014年10月14日
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