2014年10月30日

面白い映画のふたつの本質

面白い映画には面白い本質が二種類あり、
本当に面白い映画は二つが上手く混じりあっている。


ひとつはガワだ。
世界観が面白い、デザインがいい、気持ちがいい、
笑える、仕掛けがすごい、見たこともない映像、
などである。

かつて娯楽が映画しかなかったときや、
とんでもなく予算がかけられていたときは、
映画にしかそれがなかった。

外国にいくこと自体が憧れだったときは、外国映画自体が娯楽になりえた。
ところが、
今やネットの動画で、ただ面白いもの、
ただセンスのよいもの、ただ仕掛けがすごいものなどは、
いくらでも見れる。
動画の飽和状態がおきている。
これはデジタルの無限コピー性や、ネットの頒布性の無限回試行の結果だ。
(今後有料化や会員制限化で課金システムが出来るかも知れないが)

いまや素人でもそれはつくれるし、
アマチュアが奇跡の一本をつくることも珍しくない。
動画カメラやキャプチャやアップローダがあればなんとでもなる。
これだけの人が動画をつくろうと思えば、
母集団が増え、その中のネタの当たりのレベルが高くなるのは当然の理だ。

しかしそのガワは、とても単発的だ。
分かりやすく、人が飛びつきやすく、口コミになりやすい(バズや炎上)が、
持続せず、使い捨てだ。


一方、ストーリーそのものの面白さは、これとは別の本質を持っている。
感情移入の面白さだったり、
焦点に夢中になったり、
展開に引き込まれていったり、
どんでん返しに驚いたり、
結末にしびれる面白さだったり、
深い感銘を受けたり、
カタルシスを感じて影響を受けたり、
テーマ性に影響を受けたりする、面白さである。

良いものは一生もので持続する。
(作品の長さとは関係がない。クリスマスエクスプレスのCM、
サントリーオールドの「恋は遠い日の花火ではない」は一生ものだ)
これは僕の言うところの、中身の面白さだ。
脚本とは、主にこれを練ることだ。
一方、中身の面白さは、世界に浸らないと味わえない、
一種の知性が必要、時間と手間を取る、ハズレのリスクがデカイ、
という欠点がある。

その欠点を、かつてはガワの面白さでカバー出来た。
90年代ぐらいまでは。(つまりネットの発達以前)
凄い世界がやってくる、
凄い刺激だ、
見たこともない映像、世界、
誰もつくらなかったオリジナル、
凄い俳優や旬の女優の共演、
などのガワは、金をかけて本気でつくった、映画にしかなかった。
だからそれを釣り餌にできた。
ガワで釣って、中身で唸らせるという、映画の本質が上手く機能した。

ところが。
ガワの消費スピードが上がったのだ。
(多分デジタルのせいだ)
裾野が広がり、単発が溢れ出す。
時間をかける中身よりも短いサイクルで、
ガワだけが進化し、消費され続ける。
CG、3D、70ミリや4Kと映画も新機軸を打ち出してはいるが、
動画の裾野の広がりの消費サイクルには追いついていない。


今どこの企画会議でも、
このガワをどうするかという話ばかりだと思う。
それは、ガワは消費され中身は消費ではない、
という本質を見失った議論だ。
ガワは時々の皮を被ればよく、
中身は今の時代性を捉えているのか、を議論すべきなのだ。
それには、今がどういう時代なのかを議論すべきなのだ。

感情移入の面白さは、誰でも感情移入できる面白さだ。
マーケティングみたいに、女の物語はターゲットの女性しか感情移入出来ない、
と思い込むのは誤りだ。(それは共感を感情移入と誤解している)
男でも思わず感情移入してしまう女の物語こそ、
感情移入が書けている物語である。

どんな感情に感情移入するか、ということが、
今の時代性はどういうことか、に直結している。
今の集合的無意識はどこへ向かっているかを、感じとる能力である。


消費はデジタルで、価値ある保存はアナログで。
そういう時代になってきたのかも知れない。
(今逆にライブイベントの価値が高まって、生の価値が高まっているのも、
デジタルコピーしか消費がないことに、うんざりしているからかも知れない。
生で消費をしたい欲求がある、と僕は踏んでいる)


さて。
あなたの話は、中身の面白さがちゃんと出来てるか。
それは今時バズるガワを被せられるか。

ガワに乗っかりたい連中は沢山いる。
ごり押ししたい事務所、インフラを持ってる組織、政治的立場のある人々。
それらをうまく利用することも考えなければならない。

しかし、それらのガワは、時代が変われば簡単に変わる。
半年先に何が流行るかなんてもう誰にも分からない。
(トリビアで知った業界ルールで、「今年の流行色は決まっている」というのがあった。
流行は一年前から計画されていることに驚いたが、
今そのサイクルは一年では長すぎるだろう)

それよりも、確実に面白い、中身の良くできている話を書けるほうが、
大事だと思う。


そして本当に面白い映画とは、
新しいガワと、本質的な中身が表裏一体となった、
もの凄い面白さだと思うのだ。
posted by おおおかとしひこ at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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